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「国際福祉機器展 H.C.R.2016」を訪れて

文と写真●Believe Japan

 43回目を迎えた国際福祉機器展を訪れた。毎回大きな盛り上がりを見せる国内最大級の福祉イベントは、今回はとくにモビリティ分野に大きな注目が集まっていた。とりわけ福祉車両への期待と関心は高く、各自動車メーカーのブースには、連日多くの来場者が集まり、熱心に展示車両の機能、使い勝手などを確認していた。ここでは各メーカーのブースをリポートする。

 日本は福祉車両先進国といわれるが、近年はリリースされる多くのニューモデルで、発売時から多様な福祉車両が設定されるなど、さらなる充実ぶりを見せている。

 標準モデルが、開発段階の初期から福祉仕様を想定しているなど、ハイレベルな使い勝手やスペース効率を誇るモデルが増えている。また、低燃費をはじめとするエコ性能や自動ブレーキに代表されるセーフティ機能といった進化は、福祉車両にも大きな恩恵をもたらしている。「特別なクルマ」ということを過度に意識をさせない、「普通に乗れて、福祉機能があるクルマ」というイメージを抱かせるモデルも増えているように感じた。

トヨタ:

 トヨタブースでは、車いすでの乗り込みがスムーズなシエンタや座り込みが容易なスペイドが、使い勝手のよさをアピールし、プリウスは車いす収納機能がついたフレンドマチック(運転アシスト)仕様を展示。さらに車いすの大型化や多人数乗車にも対応するハイエースやレジアスエースの車いす仕様車、純正のフレンドリー用品、オリジナル車いす「ウェルチェア」など、充実の展示内容が印象的だった。

 ドライバー自身がひとりで車内へ乗り込み、車いすを電動でルーフ上に収納することができる「ウェルキャリー」は大きな注目を集めていた。

 

 後輪エアサスペンションの車高降下機能が、9.5度というなだらかなスロープ角度を実現。サイズを超えた機能性が、実際に来場者から好評を博した。

ホンダ:

 発売されたばかりの新型「FREED(フリード)」、「FREED+(フリード プラス)」が主役。車いす仕様とサイドリフトアップシート仕様などを展示して大きな注目を集めていた。また、自ら運転する喜びをについてもこだわるホンダらしく、「Honda・テックマチックシステム (手動運転補助装置)」と「Honda・フランツシステム(足動運転補助装置)」が装着されたフィット ハイブリッドで、作動をたしかめる来場者の姿が多く見られ、軽自動車の福祉車両として人気の高いN-BOX +も注目を集めていた。

 

「Honda歩行アシスト」の体験展示も行われた。ヒューマノイドロボットASIMOで培われた歩行理論を活用したこの歩行訓練機器は、注目度抜群で、多くの人が体験歩行を行い、驚きと喜びの表情を顔に浮かべていた。

Honda関連会社の八千代工業株式会社に所属し、リオデジャネイロ・パラリンピックに出場。同大会の車いすマラソンで、「1秒差で4位」という激しいレースを戦った土田和歌子選手とモータージャーナリストのまるも亜希子さんによるトークショーも行われた。

日産:

 日産ブースの主役は完全に「新型セレナ」だった。 チェアキャブ スロープタイプを含む4台が大きな存在感を放っていた。搭載された同一車線自動運転技術「プロパイロット」に対する注目も大きく、スタッフに説明を求める来場者の姿も多く見られた。そのほかは軽ワゴン車をベースとした車いす仕様車「NV100クリッパー リオ チェアキャブ 」、「NV200バネット ユニバーサルタクシー」など展示された。

ダイハツ:

 ダイハツブースでは、軽自動車でありながら電動ウインチ付きで、負担がなくラクに車いすを乗車させることができる「タント スローパー カスタム」を中心に、ムーヴやアトレーの福祉車両が展示された。タントは、両側スライドドアとBピラーレスのミラクルオープンドアが、抜群のアクセスぶりを披露していた。搭載車両の累計販売台数が100万台を突破した、ダイハツの衝突回避支援システム「スマートアシスト」に関する注目も高かった。

スズキ:

 スズキは、衝突被害軽減ブレーキを標準装備した「ワゴンR 昇降シート車」や「スペーシア 車いす移動車」、「エブリイワゴン 車いす移動車」など多彩に出展。モーターチェアやセニアカーなどの電動車いすも展示した。また、ブース内には「セニアカー体験コーナー」が設置され、多くの来場者で盛り上がりを見せていた。

マツダ:

 デミオやアクセラ、フレアワゴンなどの福祉車両を展示したマツダだが、飛び抜けて大きな注目を集めたのは手動運転装置の付いた「ロードスター」だった。「より多くのお客さまに運転する楽しさを体験いただける機会を提供する」というブランドのメッセージをストレートに表現したモデルは多くの来場者に囲まれる人気だった。

 自動車メーカー各ブースでは、ブランドごとの独自色も表現されていて、なかなか見ごたえのある展示となっていた。それはまた、福祉車両の今後に大いなる期待を抱かせてくれるものだった。

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