文と写真●Believe Japan 2021/11/15(月)配信 11月10日~12日にお台場で開催された国際福祉機器展。N-VANに続いてご紹介したいのは、同じくフジオートが展示していたトヨタ ヤリスの福祉車両だ。 フジオートでは、運転補助装置開発の長年の経験と実績から、運転でハンディになる部分を補うさまざまなパーツを製作している。そのなかでも自操式車両の場合、ドライバーが車いすから運転席に移乗する際のパーツ開発はハードルが高いという。現在一般的に使われているのはトランスファーボードと呼ばれる専用のパーツだが、そもそも運転席が回転シート仕様なら、そのボードを設置する必要がないというわけだ。 そこでにわかに脚光を浴びるのがトヨタ ヤリス。このクルマは「運転席回転シート」がカタログオプションとして設定されているため、福祉車両への改造ベース車に非常に適しているのだ。撮影車両はこちらをベースに、主に操作系のパーツを組み込んだ仕様となっている。 多くの自操式車両のユーザーが「乗降時がいちばん面倒だしストレスを感じる」と言うだけあって、このヤリスをベースとした福祉車両の魅力は大きい。 フジオートでは、使用するユーザーの状態にあわせてさまざまな仕様を提案してくれる。今回は、左アクセルペダルの種類をクローズアップしてみたい。 右半身が不自由なひとのための「左アクセルペダル」も、このようにさまざまなタイプがある。写真左から簡単に説明すると、 【LA-4/左アクセル・ブレーキ】 ステアリングシャフトがブレーキペダルの真横にあるような車種(ワンボックスや軽トラック)に使用。左側にアクセルペダルだけ増設しても、ブレーキペダルへの踏み替えが困難になるため、ブレーキペダルも左側に増設されている。 【LA-1/吊り下げ式】 左アクセルペダルのなかで最初に開発された、オーソドックスなタイプ。使用する際、右のアクセルペダルを誤って操作しないように遮へい板が設置されている。こちらは、遮へい板を取り外し左アクセルペダル本体を上に収納することで、通常の右アクセル車として使用することもできる。 【LA-2/オルガン式】 日本国内にかぎらず、海外でも利用されている汎用性の高い左アクセルペダル(カーペットと車体の床に穴あけ加工が必要)。 【LA-3/左右跳ね上げ式】 右のアクセルペダルを加工し、左右両方のアクセルペダルを簡単に跳ね上げられるようにした装置。 フジコン公式サイトhttps://www.fujicon.co.jp ...
On 2021年11月15日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●内藤敬仁 ご存知のように、日本は世界一の高齢化国で、現時点での65歳以上の人口割合は28%に及んでいる。この状況は2050年になると約40%になると予想され、すでに年金問題も含め日本に立ちはだかる大きな課題となっている。つまり、約30年後には6人の現役側が4人の高齢者を支えるというイメージだ。そんな状況のなか、自動車メーカーの開発者として、日々奮闘する人がいる。トヨタ自動車で15年間ウェルキャブ(福祉車両)事業をとりまとめる、中川茂氏だ。 そんな中川氏がいま取り組んでいるのが、「福祉車両ではない福祉車両」。それは、新型ヤリスをベースにした「運転席回転シート車」(プロトタイプ)で、運転席が回転することで、乗り降りを手助けしてくれるというもの。我々も福祉車両の取材を続けてきて、常々疑問に思うことがあった。それは、助手席回転シート仕様が「福祉車両」であり続けていること。いちど試すとわかるのだが、この回転シートは非常に便利で、障がいをもった方だけでなく、単純にクルマの乗り降りがおっくうに感じるようになったひとにも、とても助かる装備なのだ。 新型ヤリスは来年2月の発売予定。今回の運転席回転シートはウェルキャブ(福祉車両)ではなく、通常のカタログオプションとなるという。 「できるかぎりドライバーの自立を支える、これがこのシートのコンセプトです。歳をとると筋力が落ちるので、普通のシートだと片足に全体重をかけて降りなければなりません。そして、この右足が着地できる位置は運転席から遠く、上半身も45度ほど傾ける必要があります。とくに腰の痛い方はこれが辛い。運転席回転シート車の場合、まず両足で立ち上がれるので、足の筋力は半分ほどですみますし、足が着地したところと身体の位置関係が近く、上半身も20度くらい傾ければ大丈夫。乗り降りの負担が半減します(中川氏)」。 このシート、我々も試させてもらったが、とても楽に乗り降りができることに、ちょっとした感動を覚えた。また、興味深い話だったのが、筑波大学の市川教授が発表した(日本疫学会誌)データ。高齢者の運転と要介護になるリスクを比較したデータで、運転を継続した高齢者が要介護になる数値を「1」とすると、運転をやめた高齢者が要介護になる数値が「2.2」となるという。自動車で外出することが、健康寿命を延ばすということを証明しているというのだ。いうまでもなく、健康寿命が延びることは介護期間を減らすことにもつながってくる。 「約4割が高齢者の時代になって、それぞれの高齢者がみんな介護を受けるとすると、現役側(支える側)の負担はものすごく大きなものになる。そのときにあまり介護を受けずにいたほうが、ご本人も幸せだし、その親御さんを介護する子供たちも助かるし、国も助かる。自動車がそういうところでお役に立てる可能性を、これからも模索していきたいですね(中川氏)」。 回転シートを装着することを前提に、ドア下部の角を落とす設計がなされ、ドアが半開でも足が当たらず乗り降りできるよう考慮されている。 「4リンク」という新たな機構を使用することで、シート高は標準モデルと同等となっている。 車いすを寝かして搭載する電動収納装置も新たに登場。こちらはウェルキャブとなる。 話を伺ったのは トヨタ自動車株式会社 CV Company、CV 製品企画、ZU 主査、トータルソリューション事業室... ...
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