文 ●Believe Japan 写真●川崎泰輝、日本財団パラリンピックサポートセンター
3月12日、快晴のもと「パラ駅伝 in TOKYO 2017」が1万1200名の来場者を記録し、盛大に開催された。
競技は、世界にも類を見ない、健常者と障害者が同じチームのメンバーとして、一本のタスキをつないでいく駅伝スタイルで行われた。それぞれが自身の持てる力を精一杯に発揮して、共に高みを目指していくランナーたちの姿は、スタンドだけでなく、コース沿道に詰めかけた多くの人をも勇気づけ、競技全体が熱烈な応援に包まれた。
パラ駅伝は、さまざまな障がいのあるランナーと健常者のランナー9人(伴走者含む)がひとつのチームをつくり、ゴールを目指して1本のタスキをつないでいく駅伝競技で、駒沢オリンピック公園(東京)の1周約2.5kmのコースを8区間で8周、合計約20.5kmを走るもの。今回は、東日本エリアから14都県17チーム、10代から60代までのパラリンピアンから市民ランナーといった、幅広い選手153名が参加した。
日本体育大学ブラスバンド&チアリーダー&応援団によるパフォーマンスの後、アテネパラリンピックのNHKテーマソングを作曲した盲目のアーティスト木下航志(きしたこうし)さんと、わたなべちひろさんのオープニングライブが行われた。早くも盛り上がる会場に選手団が入場すると、スタンドからは大きな歓声と拍手が送られる。
大会を主催した日本財団パラリンピックサポートセンター会長の山脇康氏は、サポートセンターが掲げるスローガン「i enjoy ! ~ 楽しむ人は強い!」を紹介し、スポーツを通じて、一人一人がいきいきと輝け、活躍できる社会の実現につなげていきたい、との抱負を述べ、開会を宣言した。
来賓の小池百合子東京都知事は、「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功はない」と語り、目下、懸命に準備を進めていることを明らかにし、また大会をきっかけに都内のあらゆる場所で「段差」を無くして「だれにとっても優しいまちづくり」を進めていく考えも示した。さらにパラリンピックのサポーター登録が、現在すでに48万人に上っていることを明らかにした小池都知事は、「みなさんの力が東京大会を成功させる」として、さらなるサポートを要請した。
続いて、松野博一文部科学大臣、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣による挨拶が行われ、木下航志さんが国歌を斉唱した。スーパーパフォーマンスグループ「AAA(トリプルエー)」と人気タレント15名により特別編成された「チームよしもと」、そして全国のご当地キャラクター16体も応援に駆けつけ、会場の熱気がさらに高まる中、小池都知事がスターターを務めて、いよいよ競技がスタートした。
岩手、宮城県、福島、茨城、栃木、群馬、東京都(3チーム)、神奈川県(2チーム)、千葉、埼玉、山梨、新潟、長野、静岡が参加。
「チームよしもと」も競技に参加して元気に走った(写真はJ☆Dee‘Z:アミさん)。
レースは、順位もめまぐるしく変動する肉薄した展開に。
どの走者もエールをこめて、たすきを次の走者につないでいく。
◎全8区間の走者は区間ごとに決められ、障害の有無や性別、年齢を超えた編成となる。
第1区:視覚障がいランナーおよび伴走者
第2区:聴覚障がいランナー
第3区:車いすランナー(男性)
第4区:健常ランナー(女性)
第5区:知的障がいランナー
第6区:肢体不自由ランナー
第7区:健常ランナー(男性)
第8区:車いすランナー(女性)
となっている。
※ 第1区、第2区、第5区、第6区で、ランナーの性別は問わない。
レースに参加する走者は皆真剣そのもので、前走者は、たすきを次の走者に渡す際、残る力を振り絞るように激励していた。タイムも肉薄したものとなり、車いす走者によるトラック内での追走シーンなど、後半まで勝負が縺れ込む内容で大いに見ごたえのある展開だった。
熱戦を見事制して優勝したのは「ベリーグッドとちぎ(栃木)」、 2 位は「東京わくわくエンジョイ(東京)」、3位は 「新潟コメット(新潟)」となっている。会場には終始大声援の応援が響きわたり、全チーム、全員が無事にゴールを迎えることができた。
閉会の挨拶を行った日本財団会長/日本財団パラリンピックサポートセンター特別顧問の笹川陽平氏は、「選手の皆さんは、もちろん勝ちたかったと思いますが、今日はすべての人が敢闘賞であります!」といって、選手のみならず、運営スタッフやボランティアの労をねぎらい、来年もパラ駅伝大会を開催したい意向を強く表明した。また、「もっとも印象に残ったチーム」に贈られる「日本財団会長賞」は、一生懸命応援している姿が印象的だったということで、「TEAMMIYAGI(宮城)」が選ばれた。
競技中、スタジアムから出て沿道でも観戦した笹川会長は、「なにより選手諸君の懸命な走りが美しく感動的でした」と感銘を受けた様子。
大会の最後に登場してライブパフォーマンスを披露した人気グループのAAAは、「NEW」と「Yell」の2曲を披露した。競技中も熱心に応援し、競技終盤には会場の客席全体をウェーブで応援するなど全力で盛り上げた。
松野博一文部科学大臣は、「パラ駅伝は、障がいの有無に関わらず、だれもがスポーツを楽しみお互いの理解を深める意義深いイベント」と高く評価。
丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣は、「障害あるなしを超えて、チームでひとつのたすきを繋ぐという駅伝は、まさに私たちがこれから、パラリンピックあるいはその先にかけて引き継いでい行きたい社会の姿そのものです」と語った。
山里亮太さん(南海キャンディーズ)や遠藤章造さん(ココリコ)などの人気タレントも、「チームよしもと」として競技や応援に参加して、イベントを大きく盛り上げた。
大成功のうちに終えたパラ駅伝だが、インクルーシブな社会(共生社会)の到来に大いに期待を抱かせる印象的なスポーツイベントとなった。来年もさらにスケールアップして開催されることをいまから願わずにはいられない。
今大会を主催した日本財団パラリンピックサポートセンターは、2015年春に日本財団の支援によって設立され、パラリンピック競技28団体が入所する共同オフィスを開設し、団体間のコミュニケーションを促進し、各競技団体、関連団体、スタッフ、パラアスリートが協力して、障害者スポーツの発展ならびに2020年の東京パラリンピック成功に向けて、強力なリーダーシップを発揮している。
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