文と写真⚫︎大音安弘
2023/12/28(木)配信
欧州最大の福祉機器展「REHACARE(リハケア) 2023」が、2023年9月13日~16日の期間、ドイツ・デュセルドルフで開催された。今年の出展社は700社を超え、来場者の総勢が3万人となる盛況ぶり。その会場で出会った福祉車両やモビリティを紹介したい。
デンマークのDAHL ENGINEERING社は、自動車向けのシートおよび関連する安全装置の開発や製造を行っているメーカーだ。2005年にデンマーク唯一の動的試験の施設を建設するなど、社内で徹底した安全試験を行える環境作りを行い、開発から製造まで取り組んでいる。実際に多くの車いすと固定装置を用いた衝突試験を行い、車いすの安全性能を含めた検証をしている。
リハケア2023では、さまざまな車いすに対応する固定装置「DAHLドッキングシステム」を展示した。同システムは、車両側に装着したドッキングステーション(固定装置)と車いす側に取り付けたロックプレートを挿入することで、自動的にロックされる仕組み。降車時は、コントローラーのボタン操作で、ロックを解除することができる。
汎用性の高さの秘密は、ドッキングステーション自体が高さ調整できること。これにより車いすの形状で変化するロックプレートの取り付け位置に対応できるのだ。高さ調整も電動式となっており、リモコンにより1mm単位で調整が可能なため、ロックプレートを装着した異なる高さの車いすにも、瞬時に対応させることもできる。またこのシステムならば、ロックプレート対応のシートベースを装着した標準シートを用意すれば、電動車いすドライバー向けの運転装置が装備されたクルマでも、運転席側に標準シートを取り付けることで、健常者も運転できるようにできる。さらにドッキングシステム対応のシートやシートベルトシステムなどの専用アイテムの提供も充実しており、すべての座席をユーザーがそのときどきのニーズに合わせて変更できるのは大きな魅力といえる。
同社のドッキングシステムをテストした車両と取付キットの情報も公表し、ユーザーに提供。だれでも安全性と最適な仕様を知ることができることも、大きな信頼に繋がっている。
担当者は、「現在は日本には未進出だが、車いすユーザーの簡単な固定やシートレイアウトの自由度が増すドッキングシステムのニーズはあると思う。取付に必要なデータなど提供できる情報は積極的に開示している。ぜひ関心があれば問い合わせを願いたい」とのことだった。
既存の自動車のキャビンレイアウトに自由度をもたらす「DAHLドッキングステーション」。メーカー側の安全第一の取り組みや充実した情報提供は、今後の高齢者社会において、人手不足となる介護業界の移動手段の改善にも繋がりそうだ。
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