文と写真●Believe Japan
次に気になったのはトヨタが展示した次世代のタクシー「ジャパンタクシー(JPN TAXI)」だ。遡ること、2013年の東京モーターショーに「JPN TAXI Concept」として出展され、ロンドンタクシーを思わせる背の高いスタイルから大きな関心を集めていたが、ついに年内にも発売される見通しとなっている。低床化、大きく開くスライドドアによる優れた乗降性と、車いす乗車にも対応する広い室内空間、さらには街中での取りまわしのよさも兼ね備え、利用するひとに「おもてなしの心」を伝えられるタクシー車両を目指して開発されたという。
親しみの持てる個性的な内外装デザインが特徴だが、一般的なタクシーとして数多く運行される車両にユニバーサルデザインが取り入れられていることには大きな意味がある。トヨタでは、超高齢化社会やエコ社会にも対応する、「日本のタクシー」の新たなスタンダードを確立していく姿勢だ。
フロアが低く、大型のアシストグリップも付いているので、お年寄りの方でも快適に乗り降りができそうだ。
後席助手席側のシートは、座面を跳ね上げてフラットなフロアを作り出せ、その部分に車イスを載せることができる。ボディサイズは全長4400mm、全幅1695mm、全高1750mmだが、室内の広さはそれ以上に感じられる。
車いす乗車をサポートするスロープは標準装備で、車いすの方も安心して乗車することができる。また、ジャパンタクシーの足まわりは、耐久性と乗り心地を両立したフロント:ストラット、リヤ:3リンクとなっている。
リヤドアのオリンピックステッカー。2020年に開催される東京オリンピック/パラリンピックでは、海外も含め、多くの方が車イスで移動することが想定される。
パワートレーンは、高い評価を受けているシエンタに搭載されるハイブリッドシステムをベースにLPG(液化石油ガス)化。
フェンダーミラーが目を引く。タクシーでフェンダーミラーが多いのは、車線変更時の死角が少なくてすむからだ。助手席に乗客を乗せている場合、車線変更でミラーを見るたびに乗客を見てしまうということもない。
運転席側の後席ドアは、通常のヒンジドアタイプとなっている。これには理由があって、ドアを少し開けて後方の安全を確認する際に、後方の車両からも視認性が高いからだという。より高い安全性が見込まれているのだ。
ラゲッジスペースはこれまでのクラウン コンフォートなどと比べ大きくなっている。開口部も広く、大型スーツケースなど大きくて重い荷物でも比較的簡単に積み下ろしができそうだ。
エアコンなどの操作系はドライバーの右側に集約されているが、これによりセンター部分に料金メーターなどを設置しやすい。また、停車灯がステアリングに付けられているのも、使用頻度の高いタクシーには便利だ。
ジャパンタクシーは、トヨタ自動車とトヨタ自動車東日本の共同開発。「企画段階から含めると、足かけ6年でようやくここまで来ました」と笑顔でふり返るのは、製品企画の岡本恭幸(おかもと やすゆき)主査だ。タクシーならではの使用環境に対応しながら、「次世代」としての先進性や哲学も盛り込んだジャパンタクシーは、経済性と環境性能、さらには耐久性、コストパフォーマンスを高いレベルでクリアしているという。ところで、このジャパンタクシー。一般のユーザーでも購入でき、おしゃれな福祉車両としても需要がありそうだが、LPG仕様なのでLPガススタンドで燃料補給する必要がある。
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