近年、交通機関や施設、建物でのバリアフリー化が進んでいるが、まだまだ歩行が困難な方は日常生活の中で移動が「制限されている」と感じることがあるだろう。福祉機器も多様化しているが、ユーザーそれぞれの身体状況や使用環境をさらに深く理解して開発するなど、まだ大いにレベルアップする余地はあるに違いない。しかし、福祉関連では商品化するために必要な許認可の取得も容易ではなく、さらにマーケット規模が十分ではないこともあり、小規模事業者の参入には困難が伴うとされている。
そのような現状を少しでも改善するべく、トヨタはこのほど下肢麻痺の方が使用する補装具の開発を支援する基金「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」を発足した。これは「資金はないがグッドアイデアはある」というひとを支援して、補装具の開発における革新的なイノベーションを目指すというもの。また、多様なアイディアを持つイノベーターと、ユーザーである下肢麻痺の方とのコラボレーションを推進し、これまでにない形状や高い機能性を持つ補装具の開発に結びつけていく考えだ。人工知能による学習機能を搭載したり、クラウドコンピューティングを活用したり、さらには革新的なバッテリーの搭載も視野に入れている。
このモビリティ・アンリミテッド・チャレンジは、一般財団法人 「トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation)」と英国国立科学技術芸術基金(National Endowment for Science, Technology and the Arts)のチャレンジ推進機関がパートナーシップを組み、コンテスト形式で開発支援資金が提供されるもので、支援総額は400万ドル(およそ4億5000万円、2017年11月現在)とされる。専門家からなる審査員によって選出された「5名のファイナリスト」には、アイディアを具現化するプロトタイプを制作するために「50万ドル(およそ5600万円)」、そして2020年に東京で発表される「最終優勝者」には補装具の完成へ向けて「100万ドル(およそ1億1200万円)」の支援が提供される。また、資金的な制約からプロジェクトへの参加が困難なイノベーターを支援するために、有望なアイディアを持つ10チームを対象に、当面の活動資金として「5万ドル(およそ560万円)」を支援していく。参加の応募は、公式サイトから行われる。
すべてのひとに公平なモビリティを提供するというユニバーサルデザインの原則から、プロジェクトで重視されるのはユーザーである下肢麻痺の方の「視点」や「ニーズ」とされている。モビリティ・アンリミテッド・チャレンジをとおして、トヨタは革新的なアイディアや技術を創造するチーム、個人を支援していくことで、下肢麻痺の方の自立した生活と移動の自由の実現に貢献していく考えだ。
トヨタ・モビリティ基金では「技術、デザイン、エンジニアリングなどすべての英知を活用し、下肢麻痺の方にとってアクセシビリティが高く、だれもが暮らしやすい社会の実現に向け、2020年夏までの約3年間の我々の挑戦がはじまりました。その解決策の実現のために、さまざまな人々と協力していきます」との声明を発表している。
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