文●Believe Japan 写真●Believe Japan、コヤマドライビングスクール
ステージで躍動する若者たち。音楽とシンクロしたダンスパフォーマンス、手話パフォーマンスがステージの上で弾ける!
今回で14回目となる日本最大級の手話ライブ「D’LIVE(ドライブ)」が、川崎のCLUB CITTA’(クラブチッタ)で開催された。毎回発売後にチケットが即完売する人気イベントで、今回も音楽にあわせて、ダイナミックで華麗な手話歌やエネルギッシュなダンスパフォーマンスが披露される白熱のステージとなった。
「カッコイイ、スタイリッシュな、健聴者もろう者とともに楽しめるイベント」を目指して2004年にD’LIVEを立ち上げた自動車教習所のコヤマドライビングスクールは、純粋に「パフォーマンスの質の高さ、素晴らしさを多くのひとに知ってもらいたい、手話に興味を持ってもらいたい」という想いでこのイベントを開催しているという。この日、会場には多くの健聴者も訪れ、およそ20組のパフォーマンスを堪能した。
コヤマドライビングスクールのインストラクターによるユニット「SWISH」は、流れるようなダンスに溶け込んだ手話パフォーマンスを披露。息のあったダンスが、長い練習を積んできたことをうかがわせた。
「10代の気持ちでがんばります!」というアラサーグループのFLAT LOCKERS × T-rumble(DEAF MEMBER 2名)。遊び心あふれる振り付けで、ステージを縦横無尽に駆けまわった。
圧倒的な表現力で情熱的な手話歌を見せたKAZUKI(DEAF)は、手話が伝えられる感情の豊かさを存分に披露した。D’LIVEのステージには歌詞も映し出されるが、手話を知らないひとも彼から目を離せないほどの存在感だった。
パフォーマーは、それぞれ個性あふれる魅力的な歌やダンスを披露。完全に聴覚を失った方にとっては、音楽パフォーマンスを行うことは非常に難しいとされるが、D’LIVEでは、高音は聴き取れないが低音は聞こえる、かすかに聞こえる、打楽器を振動としてカラダで感じられるなど、さまざまな度合いの聴覚障がいを持たれる方がパフォーマンスを行った。聴覚障がいの方が曲を覚えるのは難しく、健聴者よりもはるかに長い時間を要すると言われ、さらに覚えた曲を手話に置き換える作業にも大きな努力が求められるという。
聴覚がい害の方のためのスポーツの祭典「デフリンピック」の公式応援テーマソングを手がけ、さまざまなメディアで注目を集める男性ボーカル&パフォーマンスグループの「HANDSIGN(ハンドサイン)」がスペシャルゲストとして登場。会場では、再生回数(YouTube)が3週間で100万回を超えた代表曲「僕が君の耳になる」のミュージックビデオが放映された。男子大学生が聴覚障がいを持つ女子生徒のために授業のノートを取りはじめ、手話を覚えて絆を深めていくという実話に基づいた作品だが、この日、結婚したふたりが客席に訪れるというサプライズもあった。
パフォーマーのほかにも多くのスタッフがイベントのサポートを行っていた。曲のタイミングとステージ上のパフォーマーの様子を見てカウントサインを出す「カウントマン」は、テンポと息の合った質の高いパフォーマンスをサポート。また、印象深かったのが、場内の案内やバックステージ、手話通訳のスタッフとしてコヤマドライビングスクールのインストラクターや手話サークルに在籍する大学生、高校生の生き生きとした姿だった。コヤマドライビングスクールでは、全校合わせて120名を超えるインストラクターが手話対応を行うなど、聴覚障がいのある方のための運転教習も熱心に行っている。
近年、数多くのイベントやライブで手話通訳が行われているが、D’LIVEは、聴覚障がいを持たれる方を「観客」としてのみ捉えるのではなく、「演者」としてステージに引き上げていることに意義がある。彼らはまた、集まった観衆をパフォーマンスで魅了するのであって、福祉イベントではなく、このイベントが純粋なエンターテイメントとして成立しているのはまさに快挙といえるだろう。
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