前からではなく、後ろから乗り込むことで、ユーザーは身体の向きを変えることなく、ベッドやいす、トイレなどへの移乗がスムーズにできる。そんな画期的なアイデアで作られた「乗れるロボット」が、このほど登場した。
これまで車いすへの乗り移りは、前から「後ろ向きになりながら」座席に腰をおろすタイプが一般的だが、ロボットメーカーのテムザック(福岡県)が開発・製造した「RODEM(ロデム)」は、後ろから「前向きのままで」乗り込むタイプ。急増する車いすの転倒事故の防止にもなり、またユーザーが前傾姿勢となることで、気持ちも前向きになるという注目のモビリティだ。
これまでの車いすの概念を覆す「後ろから」乗り込むモビリティ。
スムーズな乗り降りと自然な姿勢でユーザーの生活に溶け込むように設計されたRODEM。
高さが変わることで出会える世界
さらに、使う家具や家電に合わせてシートの高さを素早く自在に調節(400~785mm)できる。
そのため、ユーザーは洗面や食事、家事などを身体に負担が少ない姿勢で行える。本体は生活防水仕様にもなっている。
また、立っている人と目線を合わせての自然な会話もできるようになる。「乗るだけで明るく楽しい気分になれるように」と考えられており、ユーザーの精神面にポジティブな影響を与えてくれることも期待される。
日常生活をサポートする高い機能性
「ロボット、乗り物、車いす」の3つの役割を1台で可能にするRODEMの操作は、ジョイスティックで手軽に行える。乗っていないときには、Bluetoothを介してスマートフォンで遠隔操作し、呼び寄せたり収納することもできる。最高速度は6km/h。4輪駆動で狭い場所での旋回性にも優れ、屋外、屋内を問わない使い勝手が魅力だ。
スマートフォンで操作できる機能は、自宅はもちろん、飲食店などでの収納や呼び寄せにも便利だ。
充電は家庭用100Vにプラグイン方式に対応し、充電時間は8時間となっている。
実証実験はデンマークで行われる
実用化に際しては2014年、開発テストに積極的なデンマークで実証実験が行われた。RODEMは機能性やユーザビリティの向上を目指して開発を行い、厳しい安全性基準をクリアしてEU規格(CEマーク)を取得した(取得したのは当時のモデルで、現行型は2018年春ごろに取得予定)。さらに2017年には、経済産業省による「新市場創造型標準化制度」で、「馬乗り型電動車いす」
として新たなJIS規格化が進められるなどの後押しもあり、同年11月世界に先駆け
て日本での製品化、発売開始に至った。
メーカーのテムザックでは、将来的にはRODEMが、利用後には自動運転で充電ステーションに戻ったり、ユーザーの心拍数など体調面での情報を取得できる仕組みも取り入れるようにする意向だ。さらに多くのひとがもっと手軽に利用できるよう、シェアリングサービスなども実現させたいとしている。
後ろからシートをまたいだ状態で乗り込むスタイルだ。
メーカー希望小売価格98万円(非課税、送料・調整費別)で販売されるRODEM。法人向けのレンタルサービス(月額5万円)も用意されているが、介護保険を適用すれば、レンタルサービスの価格が月額5000円から1万円ほどに抑えられるという。デリバリーは2018年5月頃になる見通しで、販売目標は、18年度は1000台、19年度は2000台、20年度には5000台を目指している。
名称:RODEM(ロデム)
型番:M651
サイズ
全幅:690mm
全長:1000(~1203※)mm ※シートが一番低い状態
全高:920(~1254※)mm ※シートが一番高い状態
座面高:400(~785※)mm ※シートが一番高い状態
重量:約110kg
最高速度:6km/h
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