文と写真●Believe Japan
まばゆいばかりのスポットライトを浴びて、ステージ上で躍動するパフォーマー。その一挙手一投足に熱い眼差しを向けて観客たちからは歓声が上がる。今回15回目となる日本最大級の手話ライブ「D’LIVE(ドライブ)」。その会場となる川崎のCLUB CITTA’(クラブチッタ)は、外の寒さを忘れてしまうほどに盛り上がり、研ぎ澄まされたパフォーマンスを披露する出演者と観客、スタッフが強い一体感を生み出すホットなイベントとなった。
自動車教習所のコヤマドライビングスクールが、「カッコイイ、スタイリッシュな、健聴者もろう者とともに楽しめるイベント」を目指して2004年に立ち上げた手話ライブは、毎年チケットが発売されて早々に完売する人気イベントだ。音楽に合わせて、行われるダイナミックな手話歌や躍動感あふれるダンスパフォーマンスは、多くの人が抱く「手話」の概念を大きく変えてきた。
今回もデフ(聴覚障害者)メンバーがいる18組によるハイレベルなステージパフォーマンスが展開され、1曲目から会場は熱気に包まれた。ソロ、デユオ、グループとさまざまなパフォーマーが、ヒップホップにダンス、ロック、バラードといった多彩なジャンルの楽曲で、圧倒的な完成度とエンターテイメント性の高さを見せつけた。D’LIVE常連組や多くのファンを持つパフォーマーも出演し、大きな声援、手話による応援を集めた。
聴覚障がいの方は、曲を覚えるのに健聴者よりもはるかに長い時間がかかり、それを手話に置き換えるのにも苦労するという。彼らのステージは、間違いなく日々のたゆまない練習による努力と情熱の賜物だろう。
D’LIVEは、耳が不自由な人、これから手話を覚えようとしている人に大きな勇気を与えるイベントであるが、それだけでなく、極めて洗練されたエンターテイメントであることにも驚きと感動を覚える。
じつに120名を超えるインストラクターが手話対応で教習を行うというコヤマドライビングスクールは、「純粋にパフォーマンスの質の高さ、素晴らしさを多くのひとに知ってもらいたい、手話に興味を持ってもらいたい」と願ってこのイベントを開催してきたという。その意志に賛同する人の輪はだんだんと大きくなり、今日では自治体や企業ばかりでなく、数多くの大学や高等学校の手話サークルなども協賛、協力するようになっている。今回のライブでも、パフォーマーはもちろん、運営スタッフたちの熱心な姿勢も印象に残った。華やかな照明やエモーショナルな音響、そしてスムーズな進行など、全般にわたってクオリティの高さが強く感じられたイベントは、彼らのおかげで、会場にいただれもがステージにすっかり魅了されていた。そして、あっという間に公演が終わってしまったという感想を、皆が抱いたはずだ。手話サークルの学生ボランティアは、駅から会場に向かう道案内をはじめ会場内での誘導、パフォーマーたちのサポートを日頃学ぶ手話を用いて笑顔で行なっていた。
会場には耳の不自由な方を上まわる数多くの健聴者が来場し、質の高い情熱的なパフォーマンスを楽しんだ。耳の不自由な方と健聴者とが互いの垣根を越えて手を取り合い、「つながった」というある種の高揚感が会場には満ちていた。
今年も奇跡のような時間を与えてくれたパフォーマーたちと主催者、運営スタッフのすべての方に拍手を贈りたい。早くも来年、第16回の開催を楽しみにしてしまうが、同時にこのようなイベントがひとつでも多く誕生することを願わずにはいられない。
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