文と写真●Believe Japan
2020/2/7(金)配信
普通のクルマに回転シートが装着できる。「らくらく快転シート」は、後付け可能な助手席回転シートで、現在乗っているクルマに装着することができ、必要がなくなったときには簡単に元に戻すこともできる。手軽さ、そして圧倒的な低コストから注目を集めている商品で、その適合車種のリストには、写真の日産デイズルークスを初めとして人気の軽自動車がずらりと並ぶ。価格は16万円(税抜)からで、別途取り付け工賃が必要となる。
この「らくらく快転シート」は、愛知県小牧市で自動車シートや機能的ないすを独自に企画、製造している丸菱工業株式会社が開発したもの。自動車を構成する数万点の部品、その多くを開発、生産するのがサプライヤーと呼ばれる企業で、現代の自動車はこのようなスペシャリストたちの協力なしに作ることはできないと言われている。丸菱工業も昭和39年の創業以来、これまで50年以上にわたって大手自動車メーカーのサプライヤーのひとつとして協力してきた。
開発のきっかけとなったのは、自動車づくりのプロとして実感していた福祉車両の現状だったと、開発を主導した代表取締役社長の河村嘉希氏は語った。
「福祉車両は、計画的に購入するものというよりも、あるとき突然必要となるものです。しかし、だれもが福祉車両に買い替えられるわけではありません。そのようにお困りの方々に我々がどのような手助けができるのかを考え、後付けで装着できる回転シートを発案しました。最初の商品は、レカロ社とのコラボレーションプロジェクトとして、シートをレカロシート、台座を丸菱が担当してスタートしました。しかし軽自動車ユーザーが多いなか、レカロシート搭載が困難な車両が多くなり、ひとまわりコンパクトな丸菱オリジナルシートを搭載する『らくらく快転シート』を新たに開発したのです。大きな特徴のひとつは『らくらく快転シート』の座面を、純正シートの高さと同等にしたこと。これにより、シートを載せ替えても違和感なく、これまでどおりに使うことができます。また、乗降性や使い勝手に関わる回転の角度やスライド量にもこだわっています。我々はシートの専門家として、つねに安全性と快適性を最優先に考え、健康工学に基づいた製品づくりを行ってきましたので、そのノウハウが活かされています」。
後付けであっても純正シートと同様の安全性を担保し、車検でも載せ替えによる手続きを必要としない。さらに、クルマを乗り換えても、適合車種であれば一部の部品変更のみで引き続き使うことができるという。
実際に試してみたが、操作も簡単だった。回転レバーを引き、シートがロックするまで回転。スライドレバーを引き上げ、シートを車外へスライドさせる。大きな力も必要としないし、時間もかからないだろう。これらは、ユーザーの負担をできるだけ軽減したいという基本コンセプトによるもの。とくに女性ユーザーを意識し、できるかぎり使いやすさを追求している。適合車種は介護の現場をリサーチし、ユーザーの多い車種を優先して開発。
「市場規模から考えればニッチな商品かもしれませんが、社会に対する企業の責任として、ひとつひとつ、心を込めて作っていく。医療機器として申請しないのかというご意見を頂戴することもありますが、我々としては、あえて一般販売で使い勝手を高めるものとして提案していきたい。そして、これからも改良を重ね、ユーザーの負担をもっともっと減らしていきたいと考えています」。
「らくらく快転シート」の開発に携わったみなさん。プロフェッショナルでありながらも、ユーザーの視点を持ってものづくりを行っている。
操作は介助者が行うことを想定。シート脇の回転レバーを引くことでシートが回転し、所定の位置でロックする。
シート下のスライドレバーを上げればシートは前にスライドする。スライド量は100~140mmで、車種により異なる。
丸菱工業は昭和39年の創業以来、自動車メーカーの協力会社として数多くの自動車用シートを開発、生産してきた。
丸菱工業株式会社公式サイト:http://www.marubishi-industry.co.jp
No Comments