文と写真●Believe Japan
2020/2/28(金)配信
近年は公共交通機関のバリアフリー化が進んでいるが、近くに駅やバス停がない地域では「好きなときに好きな場所に自分で行ける」クルマがもたらすモビリティの自由度は絶大なものがある。同時に、クルマが持つ利便性の高さは理解しつつも、手足が不自由だから、耳が不自由だから、そのほかさまざまな障がいを理由に「クルマの運転」を諦めているひとが少なくないのも事実だろう。そんな方たちにお伝えしたいのが、障がいがあっても「運転免許を取得して、自由に運転ができる」可能性が大いにあるということ。
東京・神奈川に5校ある自動車教習所コヤマドライビングスクールは、専用のカリキュラムである『ジョイフルコース』を設定し、障がいを持ったひとたちの教習を続けてきた。その実績は18年におよび、卒業人数でも国内トップクラスを誇る。
今回注目するのは、そこに新たに加わった発達障がい(ASD、ADHD、LD)のための『スマイルコース』。まずはこのコースを実施することになった背景を、コヤマドライビングスクール総務人事部 主任の三瓶章后さんにうかがった。
「当初は、2002年にスタートした『ジョイフルコース』ですべての障がい者教習に対応していました(現在は肢体障がい者教習、聴覚障がい者教習)。しかし、発達障がいには限局性学習症、注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症などさまざまな症状があり、日々障がい者教習を続けるなか、将来的によりきめ細やかな教習を実施するうえでも、発達障がいに関しては特化する必要があるという結論に至りました。そして、まずは『発達障がい研究委員会』を長年ジョイフル教習に携わってきたインストラクターが中心に設立。さらにより実効性の高いプランにするべく、発達障がい者教習に実績のある鹿沼自動車教習所の「運転免許 つばさプラン」全国研究会にも加入し、ノウハウをお借りしながら進んできました。現在発達障がいの可能性のある方は、統計では小中学校の通常学級、たとえば40人の学級だと2、3人ぐらいの割合だといわれています。そうなると合計で推定60万人というかなりの数にのぼります(出典:文部科学省)」。
発達障がいの症状は、まさにケースバイケース。よりハードルの高い教習が求められるわけで、『スマイルコース』の設定は『バリアフリーカーライフ』を標榜するコヤマドライビングスクールとしては、ぜひとも実現したい教習メニューだったといえる。では、教習の現場はどうだろうか。続いて秋津校で指導次長を務める三村謙信さんに現場での話をうかがった。
「私どもコヤマドライビングスクールは1957年のスタートと、日本でもっとも古い自動車教習所のひとつです。長年にわたり運転免許取得のお手伝いをさせていただいておりますが、なかでも大切にしているのが社会貢献とマナーです。自由に移動することを実現する自動車は、人生を豊かにしてくれるもの。教習課程でも、気持ちよく学べる環境を日々模索しております」。
(写真:入校前に、今後教習を進める上でどのようなサポートが必要なのかを見つけるための検査を行う)
では、スマイルコースの受講者の印象はどうだろうか。
「スタートして間もないコースのためまだ受講生は少数ですが、現在は20歳前後の方が多く、みなさん親御さんの意向で当校に来られます。しかし、問い合わせは年齢問わず多数いただいております。よく発達障がいの方は人と接するのが苦手な方が多いため、教習に通えないのではないかと心配されるのですが、実際はそんなことはありません。その方にあった方法でじっくり教習を受けていただけます。スマイルコースでは、専門コーディネーターが相談係として卒業まで徹底的にサポートし、信頼関係の構築も大切にしています。また、学科教習はマンツーマンの個別対応制で、一人一人の進度に合わせて学科の補講なども行なっています。技能教習では専門チームで卒業まで責任を持って指導しています。気負わず、まずはお問い合わせをいただければと思っています」。
『スマイルコース』では、TPA検査などの専門教育を受けたコーディネーター15名が中心となって教習をサポート。グループ5校合わせると、約60名の担当インストラクターの研修にも当たっているという。高齢者講習、外国人教習なども含め、多くの卒業生を見送ってきたコヤマドライビングスクール。今後もその動向を取材していきたい。
コヤマドライビングスクール公式サイト:https://www.koyama.co.jp
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