文と写真●Believe Japan
2021/2/9(火)配信
先日デビューした「マツダMX-30 EV MODEL」は、マツダの新しい歴史を刻む1台。フリースタイルドア(観音開きドア)を採用した独創的なスタイリングとEVならではのスムーズな走りのコンビネーションは、「クルマってまだまだ楽しいな」と素直に思わせてくれる。そして、驚いたことにこのクルマには、新しい福祉車両がスタンバイしている。
正式なデビューはこの秋ということで、触れることができたのは試作段階の車両だが、その印象をお伝えできればと思う。
じつはマツダの福祉車両の歴史は古く、59年前に市販された「R360クーペ」の手動運転装置付車が最初の1台となる。以降、スロープ式車いす移動車などを手がけ、現行モデルでは手動運転装置付車「ロードスター/ロードスターRF」、助手席回転シート車「マツダ2」、リフトアップシート車「CX-5」、車いす移動車「フレアワゴン」がラインアップされている。
今回の「マツダMX-30 EV MODEL」の福祉車両は、福祉車両という枠組みではないモデルとして成長させたいとの思いから、「Self-empowerment Driving Vehicle」との名称が与えられた。大きな特徴と言えるのは、アクセルにリング式を採用していること。日本では、これまで自操式車両というとAPレバー式(左手でアクセル/ブレーキ、右手でステアリング)が定番だったが、リング式(左手でブレーキ、両手でアクセル)だと両手でハンドルを握ることができ、自然な姿勢で運転できることはもちろん、運転中にドリンクを飲むこともできる。
欧米ではわりとスタンダードなリング式。これまで日本でもパーツを海外から取り寄せ、専門的なショップで自車に取り付けるといったことは行われていたが、自動車メーカーのラインアップとして登場するのは初めてのこと。ちなみに、このモデルはすべてマツダ内製とのことだから、いかに力を入れて開発しているのかがわかる。
また、見逃せないのが世界初という運転切替機能。たとえば家族とのドライブで、行きは身体の不自由な方、帰りは健常者の家族といったように、簡単に切り替えることができるのだ。
敷地内を少しだけ走らせてもらうと、アクセル/ブレーキ操作に関しては、すぐに慣れてしまうほど運転しやすいことがわかった。この馴染みやすさは、あきらかに両手でステアリングを握ることができるから。ブレーキが必要なタイミングでは、スッと左手をレバーに添えればいい。車庫入れのシーンなどで車両をバックさせる際は、レバーでブレーキを固定させ、シフトチェンジしてからブレーキを解除するという手順のため、少しだけ慣れが必要かもしれないが、難易度は高くない。
マツダでは、今回EVモデルにこの「Self-empowerment Driving Vehicle」を設定した理由を、「スムーズな走り」と「自宅で充電できる手軽さ」を強調する。たしかに、セルフがメインとなったガソリンスタンドで、車いすでの給油作業はかなり面倒だ。気になる価格も企業努力の真っ最中とのことだから、楽しみに秋の正式発表を待ちたい。
●後付け感がまったくない運転席まわり。アクセルリング(ステアリングの内側にあるリングを奥に押すとアクセルオン)、ブレーキレバー(奥に押すとブレーキ)の剛性感も高く、質感も含めてメーカー純正らしい。また、車いすを後席に積み込む際、ドアに手が届きにくいことから、インパネとドアに自動開閉スイッチが設けられている。
●ブレーキ用レバーには、シフトアップ/ダウンスイッチ(回生ブレーキの減速度調整)、ハザードスイッチを装備。また、細かなブレーキ操作がしやすいように、肘当てが支点となるように工夫されている。
●移乗用のステップはワンアクションで収納でき、側突サイドエアバッグを阻害しない位置。フリースタイルドアを活かして、車いすは後席に収納する。
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