文と写真●Believe Japan
2022/11/1(火)配信
今年で49回目を数える「国際福祉機器展H.C.R.2022」。このアジア最大規模の福祉機器イベントでひときわ注目されていたのが、トヨタが展示した、車いすユーザーが「ひとりで乗り込んで運転できる」コンセプトモデル「C+pod plus Concept(シーポッドプラス・コンセプト)」だ。
ベースとなるモデルはトヨタの超小型EV「C+pod(シーポッド)」。2020年に一部企業や自治体への提供がスタートシーポッドは、2021年12月より一般向けに販売開始。高齢者が安全安心に移動ができることを目指してつくられた小型モビリティだ。
車いすドライバーの深刻な悩みを解消
開発にあたって、トヨタでは自身でクルマを運転する車いすユーザーにヒアリングを行い、クルマ移動については以下の3点がもっとも大きな問題であるとの結論に至った。
・駐車場でのスペース
・車いすの乗せ降ろし
・運転姿勢の維持
最初の問題「駐車場でのスペース」は、車いすで乗車しようとすると、車両の横にある程度のスペースが必要となる。しかし福祉車両優先ゾーンは近年利用者が増え、埋まっていることが多いといった問題である。次の「車いすの乗せ降ろし」については、運転席に座ったユーザーが、乗り込み時に畳んだ車いすを自分の身体の前を通して座席に収納するタイプが多いが、これでは服を汚してしまったり車内を傷つけたりすることがあるという。そして最後は「運転姿勢の維持」について。既存のモデルは両手で運転するものが主流であるが、交差点や曲がり角では体制を崩してしまうことがあるという。
そうした問題に対応すべく考えられたのが、このコンセプトモデルとなる。前幅が1.29mと極めてコンパクトで、一般的な駐車場スペース(2.5m)のおよそ半分。そのためドアをフルオープンにすることができ、優先スペースを探す必要も、隣のクルマを気にすること必要もない。
また、折り畳んだ車いすはシートの横にフックで引っ掛け、シートが電動で左側から右側にスライドするのを利用して、車内に車いすを引き上げる。そのため服が汚れたり車内が傷む心配もないわけだ。
さて最後の「運転姿勢の維持」だが、ハンドルにアクセルレバーを取り付け、さらに少なめの舵角で大きく曲がるようにセッティングされているので、ハンドルを手で大きく回転させる必要がなく、常に安定した姿勢で運転することができる。動画でスムーズな乗り降りを確かめてもらいたい。
ユーザーに負担の少ない乗り降り
実際の乗り込みは、まずリモコン操作で左側のドアを開き、車いすに乗りながらアプローチする。
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ターンチルト機構のシートが車いすに近づくことでスムーズな乗り込みが可能。ちなみに、ドア開口部とシートの後ろには若干の隙間があり、そこからラゲッジスペースに手持ちの荷物などを入れることができる。
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車いすは折り畳み、シート横に付いているフックに引っ掛ける。
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電動でシートが左側から右側に移動するのを利用して、車内に車いすを引き上げる。
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車いすを固定してドアを閉め、完了。
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以上の逆の手順による降車もスムーズに行える。
このコンセプトモデルには、現在トヨタが開発している車いす連結ユニット(車いす前方に付けられる電動ユニット)を取り付けるためのキャリアも備えられている。連結ユニットによって車いすの移動範囲は格段に伸び、また疲労も大幅に軽減される。
人(骨格)の動きに合わせて座面と背もたれが可動、遠心力を使ってドライバーの身体をサポートする「キネティックシート」が搭載されている。これまでのようにホールド性を高めるという発想ではなく、シート自体が動くことでドライバーの身体的な負担を軽減する。荒れた路面や、コーナリング時の姿勢を安定させてくれる。キネティックシートは、もともと備わるシートの上に置いてカバーのような形で使用が想定されている。現在、重量が20kgほどだが、今後軽量化を課題としている。
このコンセプトモデルは現在も開発が進行中で、今回の展示で得られるさまざまな反応や意見をフィードバックしていくとのこと。今後さらに完成度を高め、ぜひ販売してほしいコンセプトモデルである。
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