文●大音安弘
2023/5/16(火)配信
国内の車椅子、車いす移動車、路線バス製造関係メーカー13社により設立された「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」は、2023年4月21日、車いす簡易固定システムの概要を定めた「車椅子簡易固定システムガイドライン」を制定し、その内容を公表した。
「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」は、一般社団法人 日本福祉用具・生活支援用具協会の「車椅子の自動車等へのワンタッチ固定機器に関する規格化」の支援を行いながら、規格化で得られる安全性の担保などの早期実現に向け、規格化の前段階として車いす簡易固定システムに関するガイドラインの構築を行った。
策定された「車椅子簡易固定システムガイドライン」は、車椅子を簡単かつ安全に固定することができる車両機能「車椅子簡易固定システム」のJIS等の公的規格化までの期間にも、開発に関わる各社に活用してもらうことで、簡易固定機能の早期普及を目指すものだ。ガイドラインでは、車椅子の固定に必要なアンカーバーを設置するための「アンカーバー規定」と、アンカーバー装着の車椅子と車両側の固定装置に使う空間「クリアゾーン」が定められている。
2022年4月に設立された「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」では、さらなる車いす移動車の普及と使い勝手の向上のために、同規格を世界基準となるISO(国際標準化機構)への登録を目指す一般社団法人 日本福祉用具・生活支援用具協会の「車椅子の自動車等へのワンタッチ固定機器に関する規格化」活動と並走してきた。しかし、欧米では、自操の電動車椅子を念頭に、車いす移動車や車載システムの開発製造が、自動車メーカーではなく、専業メーカーが中心となり、基準をつくり普及を図ってきた現状がある。一方、日本では、介護用途を念頭に自動車メーカーが主体となって車椅子の車載を普及させてきたこともあり、各々想定する対象範囲に差異があることが判明した。そこで第3回となる「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」の総会では、これまで世界基準化を目指していた取組みの成果を早急にガイドラインとして策定することが、日本国内の実態に沿った車椅子固定機構の普及促進に繋がると考え、公表を行うと同時に、今後改めて国内規格であるJIS規格化への支援を行うことが決定された。
乗用車及びバスメーカーと、車椅子メーカーが規格に準拠した製品作りを進めていけば、車椅子や車両の種類、メーカー違いを気にすることもなく、乗降時の手順の簡易化やスピードアップに繋がるため、利用者だけでなく、公共的なメリットも大きい。高齢者の増加と共に、車椅子利用者も増加傾向にあり、福祉車両が必要となる移動にも大きな注目が集まっている。よりよい福祉社会の実現に向けて、「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」は、今後もガイドラインによる開発促進、周知をはかりつつ、規格化への支援にも取り組んでいく方針だ。
車両内で車椅子を固定するために必要なアンカーバーの取付位置を規定した「アンカーバー規定」。固定方法そのものは規定せず、さまざまな仕様の車両が適合できる内容だ。またアンカーバーの材質や車椅子への取付方法などは規定せず、フレキシブルな対応できるようにも配慮される。
すべてのアンカーバー装着の車椅子に「車椅子簡易固定システム」が対応できるように、車椅子と装置の干渉させないクリアランス値もしっかりと規定されている。利用者の安全な移動のために、ISOの車載車椅子規格7176-19(主に48km/h正面衝突模擬テスト)への適合を考慮することも記されている。
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