近年ロボット技術の進化はめざましく、福祉分野でも積極的に活用されている。ロボットは人工知能などの発達で、より高度で複雑な制御を行うことも可能となっているが、一方「動き」の面でも、大きな進歩を遂げている。そして、その流れは今後さらに大きく加速しそうな勢いだ。
大きな力が出せ、かつ作業に応じて柔らかく動くことが可能な人間の筋肉。ロボットを人間のように動かすために、東京工業大学の鈴森康一(すずもりこういち)教授と株式会社ブリヂストンの櫻井良(さくらいりょう)フェローらの研究チームは、この人間の筋肉に着目し、今までにない「強さ」と「しなやかさ」を備えた「人工筋肉」の開発に成功した。
新開発の人工筋肉は、ゴムチューブと高張力繊維から構成され、油圧で動作する。耐久性、耐油性が高いゴムは、耐衝撃性と耐振動性に優れ、なめらかな動きを実現する。また、油圧で動作し、従来の電気モーターや油圧シリンダーと比べて、およそ5~10倍の「パワー/自重比」を誇る力持ちでもある。コンパクトで高出力、そして省エネで耐久性も高いロボットを作ることが可能になり、多彩で繊細な制御もできるこの人工筋肉は産業分野だけでなく、家庭、福祉面などの幅広い活躍が期待される。
動画では、この人工筋肉の耐久性としなやかさ、そして力強さを実験によって証明しているが、「使えそう」なことは一目瞭然。見ているだけでも、いろいろなイメージが湧いてくる。
この研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の「タフ・ロボティクス・チャレンジ」の一環として進められ、東日本大震災や阪神淡路大震災など、災害時の極限環境においても人命救助や安全確保に効果を発揮できる「タフロボット」の実現を目指している。災害環境で作業を行うロボットには、軽量、高出力、そして高精度に大きな力を制御できることや十分な耐衝撃性が求められ、従来の電気モーターと減速機を用いる方式には限界があった。今回の油圧アクチュエーターを使用した人工筋肉によって、ハイレベルなロボットの実用化が飛躍的に進むと期待されている。
参照元:株式会社ブリヂストン
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