ミルクが残り少なくなった時に自動で注文してくれる冷蔵庫、アーノルドシュワルツネッガーの映画「6th Day」のような世界が現実になりつつある。
このプラスチック製の小さなボタンは「アマゾン ダッシュ ボタン」。アマゾンプライム会員限定のサービスだが、自宅のWi-Fiに接続して設定を行うと、この丸いボタンを押すだけで設定された商品が送られてくる。つまり、パソコンを開く必要もスマホを使う必要もなく、ボタンを「ポチッ」と押すだけ。いわゆるIoT (Internet of Things)のデバイスだ。これからは、パソコンやスマホだけでなく、いろいろなモノがネットワークに繋がれていく。
このボタンの凄いのは、設定さえ行っておけば文字どおり指一本で注文が完結することだ。多くの場合、商品は翌日には配送される。しかも送料は無料。
ボタンには1つだけ商品が設定できる。言ってみたらその商品を発注することしかできない単機能なボタンだ。
しかし、1つしか頼めないのなら、欲しいモノの分だけいくつもボタンを設置してしまえば良いのだ。しかも、なくなった時にそれが欲しいと思う場所に。これは楽しい。
上の写真の「エリエール」ボタンには、他にティッシュペーパーやウェットティッシュなどを設定することができる。
つまり、ティッシュを置いてある場所にはティッシュ注文専用のボタンを、トイレットペーパーの近くにはトイレットペーパー注文専用のボタンを配置すれば良い。ボタン裏側の紙を剥がせば、粘着テープが現れるのでそのまま貼り付けることができる。(粘着力が若干弱めなので、写真のようなザラザラした面の壁などに貼り付ける場合は、粘着テープを剥がして市販の両面テープをつけると良い。)なくなったらその場で「ポチッ」とやれば商品が翌日に送られてくる。
まずは、自分が注文したい商品のブランドのボタンをアマゾンから500円で購入する。ただ、1回目の商品の発注で商品代金からこのボタン代金の500円が割り引かれるので、実質無料。(設定された商品が500円に満たない場合は、1回目の商品発注分が無料になる。例えば、エリエールのティッシュは、2017年2月2日現在337円だが、これを1回目に頼む時に商品代金がかからないことになる。ちなみに差額は2回目には繰り越されない。)
ボタンが届いたら、アマゾンのスマートフォンアプリを使い、そのブランドの中から一つ商品を設定する。Androidでも iPhoneでも利用可能。設定はカンタン。
Wi-Fiに接続されたスマートフォンからアプリを立ち上げて、アマゾンダッシュボタンを長押し。するとアプリからボタンが認識されWi-Fiのパスワードを求められる。そのあと、商品を選択して設定。これで設定は完了で、あとは注文したい時にボタンを押すだけ。
ボタンを押すとインジケーターが白色(発注処理中)から緑色に5秒点灯(発注完了)に変わり、これで商品が送られてくる。商品や地域によるが、多くの場合翌日には届くことになる。間違えて押してしまった場合には、後でアプリやPCから発注をキャンセルが可能。間違えて二度押ししてしまった時のために、初期設定では、先に注文した商品が配達完了するまでは二度目の発注ができない仕様になっている。小さな子供のいる家庭にも安心の仕様だ。
実際に購入して試してみたかったのは、 3点。
1点目は、上のエリエールティシューのように安い商品は、通常PCやスマホショッピングアプリからは「まとめ買い」対象になっている。他の商品と合わせて2,000円以上等発注をしないと発注が完了しない。これを本当にアマゾンダッシュボタンに設定できるのか、またできたとしたら、ボタンを押しただけで(他の商品を合わせ買いしないで)発注ができるのかどうかということ。またその場合、送料はどうなるのか。
試してみると、設定可能。実際に押してみると、発注もできた。スマホアプリに発注内容がすぐに送られてくるが、確認をしてみると送料も無料になっている。つまり、アマゾンダッシュボタンを使うとティッシュ1箱だけでも、送料無料で発注ができるのだ。(2017年2月現在)
ひょっとして、送料無料になるのは1回目だけかもしれないなと思い、1つ目が届いた後にすぐにもう1回注文をしてみると、やはり2回目以降も1つだけで発注可能、送料は無料になっていた。つまり、ボタン1つで337円(2017年2月現在)でティッシュ(5箱入り)が発注できて、送料無しで翌日には手元に届くことになる。
2点目は、同じブランドのボタンを2つ配置してもそれぞれが機能するのかどうかということ。つまり、例えばこのエリエールだと同じボタンを2個購入して、1つをティッシュに、1つをトイレットペーパーに設定して同じWi-Fiの環境の中に置いたら、それぞれの商品の発注ボタンとして機能するのか(混線や誤動作が起こらないかどうか)という点である。これも、難なく設定完了。外観が同じ2つのボタンをそれぞれティッシュとトイレットペーパーに設定し発注することができた。
3点目は、もし複数個の商品を1度に発注したいときはどうすれば良いのかということ。消耗品をまとめ買いしたい方もいるだろう。これはアプリから複数発注を許可する設定をすれば良い。そうすると2回ボタンを押せば、2回分発注ができるようになる。
正直、337円のティッシュだけを宅配便の方にわざわざ運んでもらうのはなんだか悪い気もする。しかも運送費は無料である。また、そもそもアメリカを大きく抜いて世界一のティッシュ消費大国日本(年間13億箱の消費)で暮らしていて、さらにアマゾンの大きな段ボールに入れられたものを送ってもらうのであれば、もちろん段ボールはリサイクルするとしても、パルプや燃料が余分にどれだけ消費されてしまうことになるのか、環境的な視点から気にはなる。
しかし、病室で体を動かしづらい呼吸器を患う患者が、闘病にティッシュを大量に消費せざるを得ないこともある。また、足が思うように動かない方や車いすで移動を余儀なくされる方がかさばる商品を家まで運ぶのは、大変な作業になることだってある。また目の不自由な方には、タッチスクリーンで商品を注文することは至難の技だ。
そんな時に「ポチッ」とこのアマゾンダッシュのハードウエアボタンを指一本で押して自分で発注することが出来るのならば、IoTが人を助けていると見ることもできる。
さらにアマゾンは、Amazon Dash Replenishmentというサービス構想を発表している。(リプレニッシュメント Replenishmentは「補充」の意味。米国ではすでに2016年よりスタート)。これは、まさにシュワルツェネッガーの映画により近くなる IoT技術だ。ボタンすら押さずに、自動で補充品が購入され送られてくる。
プリンターのインク等、消耗品ががなくなったら、それをインターネットに繋がった機器自体が認識して補充品の発注をしてくれる。
アイリスオーヤマ、エレコム、シャープ、船井電機、三菱レイヨン・クリンスイなどの機器メーカーがすでに各社の機器を対応させることを発表している。米がなくなったら自動で発注する炊飯器等も構想されているらしい。いよいよSF映画の世界が現実化しようとしている。
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