文と写真●Believe Japan
2025/10/22(水)配信
欧州最大の福祉機器展「REHACARE(リハケア)」に今年も行ってきました! ここでは「ジョイスティックでクルマを自在に操る」未来的な運転システムの「Space Drive」をレポートします。
ジョイスティックで操る「走る自由」

ジョイスティックでクルマを自在に操る。その革新的な操作性に、多くの来場者が足を止めていたのがPARAVAN(パラバン)のブースだった。ここで展示されていたのは、手もとの小型ジョイスティックで走行・停止・旋回を制御できる車両。PARAVANが誇るドライブ・バイ・ワイヤ技術を用いたシステム、「Space Drive II」だ。ドライブ・バイ・ワイヤとは、従来のようにステアリングやペダルをワイヤーや油圧で直接つなぐのではなく、電子信号によって制御する方式。ジョイスティックや音声、アプリ操作によって車両のすべての動きを電気的に操ることができる。

電気信号で「走る・止まる・曲がる」
通常のクルマは、ステアリングやブレーキが機械的に接続されているが、Space Driveではそれらをすべて電子信号で制御。ドライバーのわずかな操作が瞬時に信号へ変換され、モーターがブレーキやステアリングを正確に動かす。操作のインターフェースはジョイスティックだけでなく、小型のタッチパッドや回転ノブ、音声入力装置などにも対応する。小さな力しか出せない人でも運転操作をスムーズに行えるように設計されており、「すべての人に移動の自由を」という理念を体現している。PARAVANの車両にはステアリングも備わっているが、ジョイスティックのみで操作することも可能。ドライバーの身体の状態に応じて、従来のハンドル操作とジョイスティック操作を選べる柔軟性もSpace Driveの大きな魅力だ。


安全性を支える制御システム

Space Driveは、ブレーキ及びステアリングを常時監視し、異常を検知した場合には自動的に安全モードへ切り替わるシステムである。担当者は「3重の制御ユニットで構成されており、ひとつが故障しても残り2つが即座に補完する」と説明する。これこそが本システムにおける安全性の中核となっている。PARAVAN社のSpace Driveは、2000年代初頭に登場したドライブ・バイ・ワイヤ技術の先駆者である。初期モデルは試作段階であったが、改良を重ね、第2世代の「Space Drive II」において電子制御の精度は飛躍的に向上した。ブレーキ、ステアリング、アクセルのすべてを電気信号で制御し、万一の故障時には自動で補正・切替が行われる安全回路を備えている。この回路を有したことにより、Space Driveは世界で初めて公道走行が認可されたドライブ・バイ・ワイヤシステムとなった。

現在、次世代モデル「Space Drive III」の開発も進行中とのこと。より小型・軽量化が図られ、応答速度の向上及び自動運転技術との統合が視野に入れられているという。20年以上にわたる改良を経て、Space Driveは単なる運転補助装置から次世代モビリティの基盤技術へと進化を遂げたといえる。
「運転の喜び」を取り戻す体験
ブースではSpace Drive IIを搭載した車両が展示されていた。まるで手とクルマが一体化したような感覚でスムーズに走るというから、機会があれば試してみたい! 担当者は「体験された方が“これでまた運転できる”と笑顔になる瞬間が、私たちの喜びです」と語った。
利用者ごとに設計される自由

同社は装置単体を販売するだけでなく、ユーザーの身体状況や生活スタイルに合わせて車両を一から設計する。車いす固定、乗降補助シートやリフト設置、室内レイアウトの変更、リハビリ視点でのアドバイスまでを総合的に提供。利用者が本当に必要とする「移動の自由」を、現実的かつ包括的にサポートしている。
創業者ローランド・アルノルト氏は、事故で父親を亡くしたことをきっかけに「あらゆる人に移動の自由を取り戻す」活動を始め、2003年にSpace Driveの開発を開始。2005年にはPARAVANを設立した。ドイツ南部の小さな町アイヒェラウに本社を構えるが、いまや障害のある人々のためのカスタマイズ車両を手がける世界的リーダー企業となっている。













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