文と写真●Believe Japan
2025/11/21(金)配信
高齢化社会が進み、以前にも増して車いす移動の機会が増えている。安全かつ安心の車いす社会を構築するのは、社会全体の急務といえよう。私たちビリーヴジャパン編集部も「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」の動向を追い、過去にその動向をレポートしてきた。そして2025年10月8日、同コンソーシアムの第7回総会が行われたので、今回はその内容をお届けしたい。

ところで、多くのひと(特に当事者以外)は「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」ってなんだろう?と疑問を抱くはず。これは簡単にいうと「ワンタッチで簡単に車いすを固定できるシステムを作り社会に普及させよう!」という試みで、現在多くの企業が協力してこれを実現しようしている。車いすを福祉車両に乗せたり公共交通機関(バスやタクシー)に乗り込む際に車いすを固定する必要があるが、これまで統一された規格がなかったため、車いすと車両の固定に時間がかかったり、そもそも固定するのが難しいケースも少なくなかった。今後、統一された規格の車いすの固定化装置が標準化されたら、より安心して外出できるようになり、介助する方、交通機関で働く方の負担が軽減される。
「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」に参入する企業は、2025年10月現在でトヨタ、ダイハツ、スズキ、日産モータースポーツ&カスタマイズ、ホンダ、マツダ、マツダE&T、いすゞ、日野、ジェイ・バスなどの大手自動車メーカーをはじめ、カワムラサイクル、日進医療器、松永製作所、株式会社ミキなど車いすメーカーで、まさに一大プロジェクトとなっているのだ。
第7回総会で報告されたのは、前回に引き続きJIS開発、介護施設で行われている実証実験についてが主題となった。実証実験は、2025年6月から9月にかけて、『ニックスデイサービス(広島市)』、『全労災在宅介護サービスセンターほほえみ(松江市)』、『エルケアデイケアセンター堺(堺市)』の3カ所の介護施設で行われた。これらの施設に車いす簡易固定システム対応の車両(ハイエース+軽スロープ車)と車いすを貸与、その効果測定を行った。

各施設でのコメントをいくつか紹介しよう。『ニックスデイサービス』は「作業負荷の低減が大きい。特に新入りスタッフの作業習得がスムーズ」、『全労災在宅介護サービスセンター』は「車いす固定のやり直しがなく固定性能向上が峠越えのある送迎時に嬉しい」、『エルケアデイケアセンター堺』は「送迎業務は時間勝負なので時短になるのはありがたい」と概ね好評な意見を得られた。一方、「対応車いすへの移乗が前提になると時短効果はなく、仕組みの普及には時間がかかる」という声もあり、今後の課題となっている。なお、運用に関するヒヤリハットはゼロとなり、高い安全性も実証されたかたちだ。
なお、同コンソーシアムの広報・普及活動についても報告があった。前回の総会以降、兵庫県(2025年7月23日〜24日)、静岡県(2025年9月3日)のイベントで車両などを展示。今後の活動としては、2025年11月27日〜28日に伊勢で開催される日本介護福祉士会全国大会に出展予定。これまでのイベントと同じくトヨタの固定装置治具と対応車いすを展示する予定となっている。
同コンソーシアムは簡易固定対応製品のデータベースを作り、ユーザーが確認できる仕組みを作っている。2025年10月から日本福祉車輌協会のウェブサイトにて確認できるようになった(リンクは下記を参照)。
ガイドライン準拠商品一覧の直接リンクはこちら
ここ最近では松永製作所、株式会社ミキの2社の対応車いすを発売している。今後も多くの企業が参入すれば、このデータベースに登録される商品が増えていくだろう。
以上、車いす簡易固定の普及が着々と進んでいるのは間違いない。今後も大きな動きがあればいち早くレポートをお届けしていこう。
※写真はH.C.R. 2025 国際福祉機器展で撮影したものを使用しています。












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