文⚫︎Believe Japan 写真●トヨタ、コンソーシアム
2026/5/13(水)配信
「もっと簡単に、安全に車いすを固定できないか」というユーザーや介護現場の要望を出発点として、車両メーカーや車いすメーカー、関連機器メーカーが分野を超えて集まり、車いす固定の仕組みを共通ルールとして形にしていくことを目的に設立されたのが、「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」である。ビリーヴでは、これまでもコンソーシアムによる取り組みについて報告してきたが、今回は、車椅子簡易固定標準化コンソーシアムの第8回総会が開催されたことを受け、その概要を報告したい。総会報告で明らかにされたのは、本取り組みがすでに検証段階を終え、いよいよ社会実装のステージに入りつつあるという点であった。
JISを見据えて
以下、コンソーシアム事務局の太田吉彦氏からの説明をまとめた。
「まず、JIS(日本産業規格)の開発については、およそ3年間にわたるJIS開発委員会の活動を経て、その委員会で原案を作成しJISへ申請。現在は審査の段階に入り、順調に進めば2026年度内の規格化が見込まれているという状況です。規格の内容は、既存の国際規格(ISO)をベースとしながらも、日本の実情に合わせた調整が加えられているのも特徴。具体的には簡易固定方式の追加、評価手法としての静的試験法の導入があげられます。ISOで規定されていてJISでも採用される車椅子スレッド試験(衝突模擬試験)に対し、静的試験法は大規模な施設を必要とせず、スレッド試験時の車椅子への負荷を再現できることが確認されています。これによって、簡易固定対応車椅子開発時に、簡便に車椅子の強度確認が可能になります」

実証実験でわかった効果と課題
「次に、今回の報告のなかでも重要な位置を占めるのが実証実験で、これは2年間にわたり、6施設において実施してきました。ハイエースのリフトタイプ、スペーシアとエブリイ、そしてクリッパーリオのスロープタイプを日常の送迎で使用し、簡易固定システムの効果や使い勝手を検証。リフト車は853回、スロープ車は663回乗車した結果、車いす固定に関するヒヤリハット(事故になりそうだった状況)はなんと0件! この点は、安全性の観点から非常に重要な成果だと思っています。さらに、現場の評価においても明確な傾向が示されました。簡易固定方式について「良い」または「やや良い」と評価した割合は約60%に達し、反対に従来方式を明確に支持する回答はゼロ(少し良いは3%)であった。評価の内容としては、ほとんどすべての人が作業時間の短縮や身体的負担の軽減といった直接的な効果を感じていると思われ、余裕をもって乗降対応ができるといった、介助する側からの心理面でのポジティブな感想も確認されています。結果として、施設への導入に反対する声もありませんでした」



「このように、安全性と有効性の両面で一定の成果が得られている一方で、普及に向けた課題も明らかになっています。指摘されているのは、実際の運用におけるコストや設備更新に関する懸念。とくに、利用者が現在使用している車いすとの適合性や、必要に応じた買い替えへの不安。利用者の車いすが対応していない場合には、施設側で対応車いすを用意する必要が生じるほか、乗車前にその車いすへ乗り換える(移乗する)必要がある、などの点も課題となっています。これらが実際に導入を進めるうえでのハードルとなっていることが確認されました」
難しい一般への普及活動
「普及活動についても一定の課題が確認されています。展示会などでは来場者からの評価は高いものの、絶対的な数が少なく、認知の拡大も非常に限定的な状況です。また対応製品の種類が十分でないこと、市場におけるニーズが明確に表れていないことなども、関係機関との協議における課題としてあげられます。さらに、現在の介護施設への公的支援が、DXやロボット分野を中心としているため、この取り組みが支援制度の対象となりにくいことも問題点として指摘されています」
バス業界内でバスへの展開も進められている
「一方で、技術の応用は福祉車両にとどまらず、ノンステップバスに向けた簡易固定装置の製品化も検討され、2026年秋には簡易固定装置システム標準仕様がバス車体規格集に掲載予定です。またトヨタのe-Paletteなど、既存の車両に装備されている固定装置をベースとした製品化に向けた調整も進められています」
コンソーシアムの今後の取り組みとしては、主題であるJIS規格の正式な成立。そして、実証結果を踏まえた普及戦略の見直しや、製品開発の促進も重要となる。すでに技術的な検証段階を終え、安全性と有効性について一定の裏付けが得られている状況なので、今後の焦点は制度化やコスト、普及のための市場理解といった領域へと移っていく。主な課題は技術そのものだけではなく、いかに社会に定着させていくかということになるのだろう。これからの活動にもぜひ期待したい。













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