文⚫︎Believe Japan 写真⚫︎トヨタ
2026/5/14(木)配信
車いすで車両に乗り込むとき、「もっと簡単に、そして確実に固定できたら」と感じたことがある車いすユーザーと介助者は少なくないだろう。そして、その課題に正面から向き合い、分野を超えて集まった企業・団体によって構成されているのが、「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」である。先に開催された第8回総会では、車いす固定の規格化と実証が着実に進んでいることが報告された。
では、その規格化が実現し一般に広がっていくまでの間、各メーカーは一体どのような基準をもとに製品開発を行なっていけばよいのか。その共通の指針となるのが、コンソーシアムによって2023年4月に公開された「車椅子簡易固定システムガイドライン」である。これはワンタッチ固定機器とそれに対応する車いすに関するもので、車両メーカーや車いすメーカー、福祉関連機器メーカーなどが連携し、車いすを車両内で安全かつ手軽に固定できる仕組みを共通のルールとして確立することを目指している。

そしてこのほど、そのガイドラインが、JIS(日本産業規格)の実現を見据えて改訂された。もともと公的規格の成立を待たずに製品開発を進められるよう、規格内容を先行して示すことを目的として制定されたものである。今回の改訂は、ISO原案および新たに完成したJIS原案の内容に合わせて見直されたものとなる。
その結果、開発や評価の基準がより具体的に示される内容となっており、各メーカーが同じ方向性のもとで製品開発を進めるための重要なステップと位置づけられる。ここでは、改訂されたガイドラインのポイントを明確にしたい。
新たなガイドラインは、端的にいうと以下の3点に集約される。
・アンカーバーに関する仕様や対象となる車いすの範囲を明確化。
・クリヤゾーンの考え方が整理され、設計上の基準が示される。
・静的試験法が追加され、開発時の性能確認に活用できるようになった。
アンカーバー
アンカーバーの対象となる車いすは、体重23kg以上の大人用で、車いす自体の重量が35kg以下の手動車いす(簡易電動式を含む)となる。一方で、アンカーバーの材質や車いすへの取り付け方法、折り畳み構造への対応については規定されておらず、各メーカーそれぞれの設計に委ねられている。また、車いすで乗車するユーザーが体重100kgまでの場合においても、規定の範囲内とすることが求められている。

クリヤゾーン
車両側の固定装置および車いすのアンカーバー接続、車いすの折り畳み機構が正しく動作するために、クリヤゾーンの考え方が提示されている。側面・背面・上面から図解された範囲内には、フレームや部品などが出っ張って可動部分に干渉することがないよう示されている。

静的試験法
性能要件については、ISO 7176-19に基づく車載車いすの規格、特に時速48kmでの正面衝突を模擬した試験への適合を考慮することが求められている。これに加え、コンソーシアムでは、衝突時の車いすへの負荷を再現する静的試験法が開発されており、ガイドライン対応製品の開発段階における事前確認として活用することが可能となっている。
この静的試験では、座面に対して鉛直方向に12kNの負荷を与える座面負荷試験と、背もたれに対して2.5kNの負荷を与える背面負荷試験が行われる。いずれも、主要部材に分離や破断が生じないことを確認することで、スレッド試験に相当する負荷に耐え得るかを判断するものである。

また、ガイドラインに準拠した製品については、カタログや取扱説明書等にその旨を明示することが求められており、「車椅子簡易固定システム対応」といった表記を用いることが例示されている。
ビリーヴではこれまでコンソーシアムの活動を紹介してきたが、今回のガイドライン改訂は、これまで進められてきた検討内容を整理し、実際の開発現場で使える形へと具体的に落とし込んだものといえる。実質的な共通基盤として機能していくことが期待されるものである。JIS規格の成立を待つ段階において、各メーカーが共通の前提のもとで開発を進められる環境が整った意義は大きい。













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