今日、さまざまな場所でバリアフリー化が進められている。新しくできる店舗の多くは、車いすでのアクセスが容易になっているが、もっとも多くのひとに利便性をもたらすのが、公共交通におけるバリアフリーだろう。
このほど国土交通省が、「バリアフリー化の推進に貢献した団体」の表彰を行い、国内線の乗客数で日本最大となる「全日本空輸」と小型機の運航を担当している「ANAウイングス」の2社が選ばれた。評価されたのは、「搭乗手続きから、機内への移動までをスムーズに行える」樹脂製車いすの開発、「空港、機内でのコミュニケーションを円滑にする」タブレットの開発、そして「車いすに乗ったまま搭乗できる」屋根付きのはしごの開発、という、両社が共同で進める3つの取り組み。
◎搭乗手続きや機内への移動を快適にする車いす
空港の保安検査場で金属探知機に反応することなく、飛行機の座席まで、座ったまま移動できる車いす。この車いすは樹脂製で、空港では全国で初めての採用となる。また、金属の車いすの「冷たい」印象に対して、樹脂の車いすは、温かみのある丸みを帯びたデザインや配色が実現でき、利用者からも好評を得ている。
◎空港や機内でのコミュニケーションをスムーズにするタブレット
空港内や機内のアナウンスなどが聞き取れず、イレギュラーな事態となったときに不安に感じる、耳や言葉に障害のある方、外国の方などに、理解しやすいピクトグラム(絵文字)を使い、多言語対応タブレット「電子版コミュニケーション支援ボード」を開発した。空港、機内において係員とのコミュニケーションをサポートするツールとして、すでにおよそ9000台が導入されている。
◎車いすに乗ったまま搭乗できるアダプター
これまでは、プロペラ機では利用できなかったボーディングブリッジ(搭乗橋)を使えるようにする取り組み。新しく開発したアダプター(屋根付きのはしご)を活用すると、ターミナルの搭乗橋を接続することで、車椅子利用者はストレスなく、また、雨や風、雪にさらされることなく搭乗できる。アダプターに昇降式のエレベーター機能を設置しており、フルフラットの状態で車椅子ごと搭乗ができ、障害のない人同様にスムーズな搭乗・降機が可能となった。
以上、どれもが、空の旅をより身近にしてくれる取り組みといえる。ANAグループは全体で、2020年に開催される「東京オリンピック・パラリンピック」、また将来的な高齢化社会に向けて、ソフトとハード両面からのバリアフリー化を推し進め、すべての利用者が不安やストレスなく、快適に飛行機を利用できる環境づくりを目指していくとしているが、今回の取り組みが評価されたことを受け、その勢いはさらに加速しそうだ。空の移動が今まで以上に快適になることの取り組みに、今後も大いに期待したい。
参照元:全日本空輸株式会社
参照元:ANA ウイングス株式会社
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