文●Believe Japan 写真●Believe Japan、マツダ E&T 2022/6/21(火)配信 先日お伝えした「マツダ E&T」の「スロープ式車いす移動車累計生産台数6万台記念式典」に華を添えた「キャロルi」。「世の中にないものは作る」という熱い思いから、当時のスタッフが試行錯誤して生み出したこの福祉車両は、一般ユーザーにも手が届く価格と取りまわしに優れた軽自動車の利点をあわせた画期的な1台だった。それゆえ、この記念式典には「マツダ E&T」の創造力が身を結んだ象徴として、なんとしても実車を展示したい!という思いだったという。今回は、いかにして「キャロルi」が復活したのかという過程を、製造技術部の川本健司さんと吉川陽三さん、業務革新部の登根孝志さんに伺った。 そもそも車両がない! 初代「キャロルi」の生産台数は200台強。実用で使われるクルマの性格上、程度のいい中古車を見つけるのは難しいと予想していたというが、それは想像を超えていた。そう、中古車市場には物件が1台もなかったのである。某オークションで過去に1台だけ出品されていた履歴こそ見つけたが、それ以降、物件情報は皆無。「痺れをきらして社会福祉協議会や関係団体への問い合わせ、はたまた社員の目撃情報をもとに、施設や役所に片っ端から電話し、場合によっては福祉車両のセールスと勘違いされたこともありました(登根さん)」。そうこうして、ようやくネット上で1台を発見。間髪入れずに掲載店に連絡をいれ、車両を確保したのだが……。 さてどのように仕上げるか やっとの思いで探し当てた1台。ネット上の写真ではほどほどの状態に見えたが、納車された車両の程度は想像以上にヤレていた。「当初は予算の関係もあり、外観と車いすスペースを修復し構内を走行できる状態を目指していましたが、作業を進めていくうちに徹底的に仕上げたい!という思いがレストアメンバーに湧き上がりました。そこで、追加予算の申請、承認を得て、「キャロルi」は徹底的に仕上げられることになったのです(川本さん)」。 ここからがプロの仕事 「マツダ E&T」は「初代ロードスター(NA)」のレストアサービスや、モーターショーの展示車両なども手がけるスペシャリスト。「キャロルi」も、まずはついている部品をすべて取り外すことから始まり、レストア作業は以下の項目を軸に行われていった。 ・ボディーパネルの凹み部分の修正、板金、塗装・足まわり、下まわりの塗装、修理・エンジン部分の磨き、塗装、修理・シート、フロアマットの洗浄 文字にすると簡単に見えるが、やはり27年間の劣化はかなりのものだったという。「まずはゴム、ホース類の固着、プラスチック部分の硬化。このあたりの部品は組み直す際に新品を使うのですが、古いクルマの場合は多くの部品が生産中止になっています。そのため汎用性があり購入できない部品は代替品の加工や新規に製作が必要でした。また、続いて手を焼いたのが板金。元の状態はフロントフェンダーが一部変形しており、エクボも複数。テールゲートのダメージも大きく、凹んだ箇所はデントリペアやプーリングキットによって引き出し、当て盤などを使用しハンマーリングで修繕しています。さらに、プラスチック部分の一部は3次元測定器で計測のうえ製作。車いす固定装置の金属部分も板金加工して製作しました(吉川さん)」。我々が思わず感動したのが当時のサプライヤーの協力。「キャロルi」オリジナルのエンブレムは山陽マーク株式会社が、専用の車いすは株式会社松永製作所が、車いすスペースのマットは株式会社すぎはらが「キャロルi」のレストアにかける思いに賛同し、復刻してくれたのだという。 まさに関係者が一丸となって実現した「キャロルi」のフルレストア。今後、福祉イベントなどでの展示も検討されているというから楽しみにしたい。 キャロルi について 1995年に誕生した「キャロルi」は、当時のキャロルをベースに開発されたが、車いすを収納するためにさまざまな架装が行われている。外観上のポイントは、スロープを組み込んだテールゲートとルーフ後部のハイルーフ化を実施。また、無理なく車いすを載せるために、燃料タンクの移設に加え、サスペンションの取り付け位置なども変更されている。いまでこそ、軽自動車の車いす移動車はさらにユーティリティに優れたトールタイプやワンボックスタイプとなるが、車いすに乗った状態で「キャロルi」に乗り込んでみると、非常に快適な空間が確保されているのに驚いた。ハイルーフのおかげで圧迫感がないどころか、身長180㎝以上の筆者が収まっても、明るい視界が広がっているのだ。また、床面地上高170㎜という超低床フロアもこのクルマの利便性の高さを後押ししている。いわゆるスロープ角が小さくなるので、車いすを載せる際の負担が少ないのだ。専用の車いすが必要だが、ワンタッチで固定できる装置もかなり画期的だといえる。... ...
On 2022年6月21日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●Believe Japan 、マツダ E&T 2022/5/25(水)配信 4月29日、広島に本社のある「マツダE&T」にて、「スロープ式車いす移動車累計生産台数6万台記念式典」が開催された。「マツダE&T」は、マツダグループでエンジニアリング事業(量産車開発、派生車開発)やカスタマイズ事業(福祉車両、教習車等の特装車両)などを手がける総合エンジニアリング会社で、先般ビリーヴ・チャンネルでもご紹介した「MX-30 SeDV(セルフエンパワーメント・ドライビング・ビークル)」の開発も担当している。 式典は、代表取締役社長の野間幸治さんの挨拶から始まり、製造技術部の岸本勇次さん、ボデー・シャシー設計部 主幹の大塚孝江さん、PT性能・制御システム開発部の大上真弘さん、取締役常務執行役員の萩原國昭さんと続き、同時に全スタッフへ配信されるという形態だったが、記念すべきスロープ式車いす移動車の第1号車である「キャロルi」も展示され、会場に華を添えていた。 この日のためにフルレストアされたという「キャロルi」。その誕生は、なんと1995年というから驚くばかり。いまから27年も前に、いかにしてこのクルマが誕生したのか。また、6万台ものスロープ式車いす移動車を生産し続けている背景とはいかに? 今回特別に、特装車開発リーダーの経験をお持ちの「マツダ E&T」企画管理本部の方々に話を伺った。 マツダE&Tが福祉車両を手がけることになった背景を教えてください。 村田さん 「キャロルi」が登場した1995年というのは、いわゆるバブル崩壊後。そのころ多くの会社がそうであったように、我々もより会社を強くするための新規事業を模索していました。そこで、社内公募を行い、当時の役員が満場一致でOKを出したのが、この「キャロルi」でした。 米田さん この提案は介護ヘルパーをする母親を持つ社員からでした。ご存知のように、車いすでの移動はさまざまな制約があります。「少しでも母の負担を軽くできれば」との思いがこの提案に結びつきました。 軽自動車である「キャロルi」が選ばれた理由とは? 小泉さん 当時車いすを載せることができるのは、大きな病院や企業が所有するバンやバス的なものが主だったものでした。それらを個人が所有するのはハードルが高い。それに家庭内で介護される方に女性が多かったこともあり、日本の道路事情から取りまわし性に優れ、価格も安く抑えられる軽自動車に着目したというわけです。 「キャロルi」制作にあたり、苦労されたところはありますか? 米田さん 前例がないチャレンジだったので、苦労といえばすべて苦労でした(笑)。まずは車いす乗員スペースの創出。乗車位置を決め込んでから、フロア、ルーフの改造、燃料タンクの新設・移設、リヤサスの改造など多岐にわたります。とくにルーフ部分はFRPで仕上がっているのですが、当時この大きさのものを型取りして仕上げることが難しく、本当に苦労しました。 レストアされた車両をじっくりチェックさせてもらったが、その完成度の高さにちょっと驚いてしまった。車いすは専用のものが使用されているが、まずリヤゲート展開時の角度が浅いため、車いすを載せる際の介助側の負担が少ない。そして、車いすはストレスなく車両にワンタッチで固定できるではないか! さらに、車いすに乗ったまま乗車してみると、乗車後の頭上スペースや視界、そして手すりの位置など、居心地のいい空間が実現されているのだ。これを企画立案から販売まで。わずか1年で実現したというのだから凄い。 「キャロルi」以降に手がけた福祉車両、また開発時に注力している点を教えてください。 村田さん 車いす移動車は、「キャロル」、「フレアワゴン」、「デミオ」、「プレマシー」等。回転シート車は、「デミオ」、「プレマシー」等。リフトアップシート車は、「MPV」、「ビアンテ」、「CX-5」等。運転補助装置搭載車は、「ロードスター」、「アクセラ」、「MX-30」をそれぞれ手掛けてまいりました。... ...
On 2022年5月25日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/11/13(土)配信 11月10日~12日にお台場で開催された国際福祉機器展で、おもしろい1台を発見したのでご紹介したい。それは、ホンダN-VANをベースにした「車いす移動車」のコンセプトモデル。制作したのは、身体障がい者用の自動車運転装置(フジコン)を長年開発し続けているフジオート。これまでも運転でハンディになる部分を補う各種装置(手動装置/左アクセル/ステアリンググリップ/左ウインカー/右ワイパー/シフトレバー/アシストグリップ/延長ペダル/足動装置など)を市場に送り出している、福祉車両装置開発の老舗だ。 今回のN-VANコンセプトのポイントは以下の3つ。 【車いすのひとが一人で運転できる自操式車両であること】 車いすに乗ったまま運転席の近くまで移動。車内で運転席に移乗して、自身で運転できる仕様となっている。バックドアに備わる電動リフトから、リモコンを使って乗り込むという設計だ。そして、助手席の位置まで車いすで移動し、運転席に移乗。展示車両は移乗のしやすさを重視して。コラムタイプの手動運転装置が取り付けられていた。 【軽自動車のリフト付き車いす移動車であること】 プラットフォーム長1000mmの専用小型リフト(耐荷重150kg)を開発。定員は4名(運転席、助手席、右セカンドシート、車いす)、実際に車いすのひとが運転する場合は3名となることを想定。 【避難時仕様であること】 昨今の非常時に備え、車いすのひとが一時的に避難したいときに少しの間生活できるような装備を設置。テントや簡易トイレ、机、ドリンクホルダー、小型シンクなどが備わっている。 「キャンピングカーブームや優れたユーティリティを誇るN-VANからヒントを得ました。今回この福祉機器展でみなさんにさまざまな意見や感想を伺い、将来的に販売を実現していきたいです」と話を伺った。 まだコンセプトモデルのため具体的な車両価格は出ていないが、リフトの搭載費用として改造費80万円~となるとのこと。いづれにしても、見ているだけで、話を聞いているだけでワクワクさせてくれる1台だった。 フジコン公式サイトhttps://www.fujicon.co.jp ...
On 2021年11月13日 / By wpmaster介助する側、介助される側、双方の立場になってビリーヴカー(福祉車両)をインプレッション! レポートするのは、介護経験があり、自身も福祉車輌取扱士スペシャリスト資格を持つ、タレント・モータージャーナリスト 竹岡 圭。今回は、ダイハツ タントで福祉車両を開発しているエンジニアの太田吉彦さんをゲストにお迎えし、新型がどのように進化したのか、その工夫について紹介します。 ...
On 2020年1月15日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.