文●Believe Japan 写真●Believe Japan、トヨタ自動車
4月20日(木)~22日(土)の日程で、インテックス大阪で開催された総合福祉展「バリアフリー2017」。9万人以上の来場者を集め、盛況のうちに幕を閉じたイベントの主役はまさに福祉車両だった。そのなかでもとくに印象に残ったのが、トヨタブースで展示されていたエスティマハイブリッドの福祉車両「サイドリフトアップシート車」だった。
このサイドリフトアップシートは、回転して、クルマの外へスライドダウンした後に、脱着でき、車いすとして使用できるのが特徴で、介護用の車いすとして使える「手動式」と、自走が可能な「電動式」の2タイプが用意されている。以前からすでに販売されていたが、改良を重ね続け、イベントで展示されるのは今回が初めてだという。ここでは、その優れた機能性を紹介する。
サイドリフトアップシート(脱着タイプ)の魅力
◎車いすから降りて、シートに移り座る必要がないので、本人も介助の方もラク。
◎シートの高さや前後スライド位置、リクライニングの角度などが自動メモリーできる。
◎車いすに座っての乗車よりも座り心地がよく、長時間の移動による負担が大幅に軽減される。
◎シートはブレーキ付きで、安心して介護用車いすとして利用できる(手動式)。
◎コントロールパネルやジョイスティックによって、介助なしで自在に操作が行える(電動式)。
車内はもちろん車いすとしても、ゆったりとした座り心地が味わえる脱着タイプのサイドリフトアップシート。電動式の場合、家庭用100V電源でも手軽に充電でき、さらにシート背もたれの裏側にはバッテリー2個(1個使用、1個予備)を積むことができるので、バッテリー切れの心配も少ない。バッテリーの残量が少なくなると、赤ランプが点滅して、ブザーでも警告してくれる。また、状況に応じて手動/電動の切替もできるので便利だ。
最高速度は3.5km/hで、可能走行距離は8km(バッテリー2個)となるので、駐車場所から近くでの用事などには十分だろう。バッテリーの充電時間は1個およそ3時間。ちなみに、じゃり道での走行はできないが、25mmまでの段差を乗り越えられ、ゆるい坂道(8°まで)を登ることもできる。利用者からは概ね好評だというが、大いに納得できる実用性の高さだ。
操作手順(電動式)
①サイドドアを全開にして、操作スイッチを押し続ける。シートが回転を開始する位置まで後ろにスライドして、背もたれの角度が自動的に調整される。
②さらにスイッチを押し続けると、シートは回転した後に背もたれが倒れながら下降する。続いて、背もたれが起き上がりながら自動的に車輪が出る。
③シートの車輪が接地すると、フットレストが下降して、シートが脱着可能になる。
④利用者は、座っているシートを車いすとして、そのまま利用できる。
ひとつ注意しておきたいのが、電動式の場合、車いすとして公道で利用する際には、必ずヘッドレストを取りはずすということ。これは、脱着タイプのサイドリフトアップシートが、現在の道路交通法が規定する電動車いすの高さを超えているためだ。ただし、やむをえない場合は、所轄の警察署から確認を受ければそのまま利用することができる。
現時点での対象車種は、エスティマ、エスティマハイブリッド、エスクァイア、ノア、ヴォクシー、アルファード、ヴェルファイアなどのミニバンとなっている。ところでウェルキャブ(福祉車両)には、サイドリフトアップシート装着車が型式指定自動車として設定されているので、持ち込み登録の手間が省け、納車までの時間が短縮されるという利点もある。
エスティマハイブリッド
エスクァイア
アルファード
脱着タイプのサイドリフトアップシートは、自然で快適な乗車感覚が味わえるウェルキャブ専用車いす「ウェルチェア」を開発したトヨタらしい、乗車時の快適性にこだわった魅力的な製品だ。
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