文●石井昌道 写真●Believe Japan
2022/1/13(木)配信
視覚障がい者の単独歩行を支援するナビゲーションシステムの「あしらせ」。靴に装着する振動デバイスと独自のスマートフォン用アプリで構成され、目的地を設定して歩行を開始すると、足の甲やかかと側面などが振動して、曲がり角が近づいたこと、左右どちらに曲がるのか、などを知らせてくれる。2022年度中の販売開始を目指して開発・実証中だが、今回はそのプロトタイプを体験した。

振動デバイスは普通のスニーカーなどに簡単に装着できて、そのまま脱いだり履いたりも可能。履き心地にも違和感はない。
スマートフォンのアプリで目的地を設定して歩き出すと直進時には両足のつまさきに近い甲が一定間隔で振動して、ルート上を正常に歩いていることが伝わってくる。曲がり角に近づくと甲、かかと、側面のすべてが振動し、一旦立ち止まるように促してくる。停止すると、右に曲がるならば右側の側面が振動してルートを知らせてくれる。振動はかなりわかりやすく、これなら気付かないなんてことはないだろう。音声で知らせるナビゲーションシステムはあるが、聴覚は歩行時の安全確保にとって重要であり、注意を削がれる可能性もある。足に振動で伝えることはそういった心配がなく、また、直進、停止、左右に曲がるなどの情報が直感的にわかり、有効なシステムだとわかった。
スマートフォンの地図アプリを歩行時に使う人は多いだろうが、GPSの誤差があったり、目的地設定したらとりあえずどちらに進めばいいのかわかりにくいという経験をしていることだろう。そういった悩みを解消すべく、独自のアルゴリズムを開発しているのも「あしらせ」の特徴だ。振動デバイスにはモーションセンサー電子コンバスが付属しており、歩いて移動するとその情報をアプリにフィードバック。誤差などを修正して誘導情報生成が行われている。自動車用カーナビが、クルマのタイヤ回転センサーなどを利用して自車位置を推定してGPS情報の誤差を修正しているのと同じ考え方だ。もともと「あしらせ」はホンダの新事業創出プログラムから生まれただけあって、自動車メーカーのノウハウが生かされているのだ。

自動車ジャーナリスト 石井昌道
内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転にも参加する自動車ジャーナリスト。幅広い視野と知見で的確な評論を行う。
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