文と写真●大音安弘
2022/9/21(水)配信
近距離モビリティを提供するWHILLは、2022年9月13日、歩道を走れる電動スクーター「WHILLモデルS」の先行受注を開始したことを発表した。価格は、21万8000円から(非課税)となる。
「モデルS」は、バータイプのグリップハンドルを備えた4輪電動スクーターだ。最高速度6km/h(後退時2km/h)で走行し、7.5cmの段差乗り越え能力と10度の登坂能力を備え、歩道走行が可能。航続距離も実用性の高い33kmとしている。取り外し可能な鉛電池を装備し、充電時間は標準充電器の場合9時間40分、急速充電器で6時間40分となっている。モデルの魅力としては、高齢者向け車両のイメージを払しょくするシンプルかつお洒落なデザインと、自動車の操作感覚を意識したインターフェイスなどがあげられる。また専用車載通信機「WHILL Premium Chip」の搭載による通信アプリ「WHILL Familiy App」による新サービスにも対応し、「位置情報の確認、外出履歴の記録、家族への情報通知」などを行えるようにした。「WHILL Premium Chip」の搭載には別途2万5000円(非課税)が必要となり、サービス利用には「WHILL Premium Care」の契約が必要となる。年間サービス料は2万6400円(税込)となり、これには専用アプリに加え、ほかのWHILLでも提供する保険、ロードサービス、メディカルアシストのパッケージ「WHILL Smart Care」が含まれる。
ターゲットユーザーは、日常生活に支障はないが買い物などの移動手段に困る人たちだ。これまでWHILLは、建物内の移動も想定した電動車イス型の短距離モビリティを提供してきたが、それよりもライトな存在なのがこの「モデルS」だ。自転車の運転がふらついてしまう体力的に不安があるユーザーに、自転車以上自動車未満の存在として提供する。現在、65歳以上の高齢者は3600万人にものぼり、そのうち1000万人が歩行に対する不安や制約を抱えているという。その一方、WHILLがアンケートを実施した免許返納した70~80代のシニア世代の男女100人のうち、三人に一人がクルマの変わりになる移動手段が少ないと回答しており、彼らをサポートする新たな移動手段の必要性を強調する。事実、昨今の免許返納者は年間60万人前後で推移しており、彼らは移動手段をクルマやバイクなどから切り替えていることになる。さらに2022年5月13日より一定の違反歴のある高齢ドライバーを対象とした運転技能検査が義務化され、運転免許の更新ができない人たちが増えてくる可能性も高まっていることもあり、今後「モデルS」のような電動スクーターのニーズは高まっていくと予測される。
電動車いすタイプの「モデルCS」など派生仕様も検討中
WHILL事業開発戦略室の赤間 礼氏によれば、「ある程度の歩行が可能な人たちは、電動車イスには抵抗があり、自分に合った乗り物だとは感じてもらえない。そこで電動スクーターという形状とし、自動車からの乗り換えを意識した自動車に近い操作性を与えている」とし、価格面でもリーズナブルに提供できるように、設計や調達からも工夫を凝らすことで、既存のセニアカーと比べても競争力のある価格を実現させたとしている。新たな取り組みである車載通信機「WHILL Premium Chip」は、スマートフォンを持たないユーザーを意識したものだそう。アプリで情報共有を家族と図ることで、ユーザーが「モデルS」を使うことの安心を提供したいという願いも込められている。今後の展望としては、まずはエントリーとして「モデルS」を活用してもらい、その後のライフステージに合わせ、電動車イスタイプの「モデルCS」や「モデルF」といった最適なモビリティを選んでもらい、長くWHILLを愛用してもらえるようになればと期待を込めた。
納車開始については、2022年11月頃を予定。ただし、通信アプリ「WHILL Familiy App」に対応可能なモデルは、2022年1月頃を予定しているという。現時点では、通信モジュールの選択は、「モデルS」購入時に選択してもらうことになるが、ニーズがあれば、後付け対応も検討していきたいとしている。実車に振れたシニア世代からは、安定した走りと自転車のように気軽に使えること、シニアカーのような高齢者向け車両というイメージの薄さが好調だというから、街中で活躍する「モデルS」を見かける機会も、そう遠くはないだろう。
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