文●Believe Japan 写真●Believe Japan、マツダ
2022/11/11(金)配信
「国際福祉機器展H.C.R.2022」で訪れたマツダのブースでは、車いすユーザーが自らドライビングを楽しみ、アクティブライフを満喫できるクルマの展示が行われていた。
ブランド全体で「クルマを運転する喜び」を追い求めるマツダにとっては、福祉車両も例外ではない。アクティブなカーライフをサポートするSUV「MX-30」とマツダイズムを体現するオープンスポーツの「ロードスター」をベースにした展示車2台も、そうした強いメッセージを発していた。
MAZDA MX-30 Self-empowerment Driving Vehicle(SeDV)
福祉車両としては見慣れないSUV、さらにはルーフ上に大きなオートボックスを装備するというアクティブなルックスで存在感を際立たせていた。運転席に座ったままでルーフ上に車いすを電動収納できるオートボックスと、運転席に座ったままでリアドアを閉められるストラップ式リアドアクローズアシストが装備され、車いすユーザーが自分ひとりで乗り降りすることができる。オートボックスは車いす、福祉車両架装メーカーのミクニ ライフ&オート(旧ニッシン自動車工業)が手がけたものでスムーズな動きを見せる。
一方、車いすユーザーが自ら運転することを可能にする装置としては、リング式アクセル&レバーブレーキ、ブレーキサポートボード、移乗ボードが装備される。
■リング式アクセル
押し込むと加速するリング式のアクセルは、反力によって速度維持できるアクセルリングで、押し込み具合が瞬時に把握できるようになっている。これにより、ハンドルの持ち替えと、アクセルリングの押し直しが同時に必要な「交差点の右左折」や「立体駐車場スロープの登り」などの際でも、ギクシャク感のないスムーズな運転が可能になる。
■レバーブレーキ
手のひらになじみ押しやすい形状、目視しなくてもステアリングから持ち替えやすい位置に取り付けられるレバーブレーキは、しっかりとブレーキがかけられるように、肩を起点に力を発揮しやすい軌道に設定される。ハザードスイッチ、ブレーキロックボタンも使いやすくレイアウトされている。
■ブレーキサポートボード
肘をサポートできるボードで、肘を支点に細かな操作のしやすさと安定したブレーキングを可能にする。カップホルダーに差し込んで固定する方式のため、不要なときは簡単に取り外すことができる。
リング式アクセル&レバーブレーキ、ブレーキサポートボード、移乗ボードはSelf-empowerment Driving Vehicle(SeDV)装置として、新車のみに架装することが可能で、セット価格は取り付け費込みで52万8000円(非課税)。
なお、福祉車両の購入は、自動車購入資金の貸付や改造費用の補助を受けられる場合がある。条件等は各都道府県によって異なるため、住んでいる地域の障がい福祉課もしくは、福祉事務所へ確認してほしい。
簡単切り替えで家族や友人と運転を交代できる
SUVで室内高が高く、ドアが観音開きするMX-30は、車いす仕様車としてアクセスに優れるが、加えて非常に便利なのが、手動運転機能と通常運転機能の切り替えを簡単に行えること。レバーブレーキを押し込み、ブレーキロックをかけた状態でイグニッションをONにすると、アクセルペダルが作動しなくなり手動運転となる。フットブレーキを踏んでイグニッションをONにすると、アクセルリングが作動しなくなり、アクセルペダルでの操作ができる通常運転となるのである。家族や友人と運転を気軽に交代しながらロングドライブを楽しむことだってできる。シェアできることでコストやスペースの節約につながる優れた機能だ。
ちなみに今回展示されている車両は、オートボックスとストラップ式リアドアクローズアシストは参考出品装備となっているが、今後ぜひオプション設定などを期待したい。
「MAZDA ロードスター Self-empowerment Driving Vehicle(SeDV)」
もう1台展示されていたのが、マツダが理想に掲げる「人馬一体」のダイレクトなドライビングフィーリングを体現するオープンスポーツ、ロードスターである。こちらにはコントロールグリップやステアリングノブ、乗降用補助シートが装備され、車いすユーザー自らが運転することが可能となっている。コックピットの機能的でスポーティな雰囲気を楽しめる各装置のデザインも大変好感が持てる。
ロードスターが誇るダイレクトな走る歓びを左右の手による操作で味わうことができる福祉車両。センターコンソール横にあるコントロールグリップは、引くと加速、押すと減速する。ステアリング右側のスポークにステアリングシフトスイッチを設定したことで、マニュアルモードを右手のみで操作することができる。また片手でのハンドル操作をサポートする「旋回ノブ」もオプションで設定されている。さらに、運転席への乗り移りをよりスムーズにする「乗降用補助シート」や、車いすを助手席に収納するための「車いすカバー」もオプションで用意されている。
自分で運転することを、そしてオープンスポーツカーをドライブすることも諦めたくない車いすユーザにとっては、まさに一択、素晴らしい選択となるだろう。
会場では新たに採用された運転システム「Self-empowerment Driving Vehicle(SeDV)」の操作感を体験できるドライビング シミュレーターが設置されていた。MX-30のコックピットに座り、「両手でハンドルを握って加速する」という新しい爽快感を感じられ、来場者から好評を博していた。リアルで美しい4K映像の体験コースをシミュレート走行することで、進化するセルフドライブシステムを実感することができた。
今日、じつにさまざまな福祉車両が存在する。多くは助手席や後席に乗員として乗り込むもので、だれかに運転してもらうタイプだ。しかし、家族や友人に頼むことなく、出かけたいときにいつでも自分だけで移動できることがもたらす精神的な自由は、計り知れないほど大きいということを改めて認識させてくれたマツダブースであった。
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