Believerとは? 福祉分野を中心に活動する「明日を信じて今日を前向きに生きる」ひとたち「Believer」を紹介するコーナー。 文●Believe Japan トヨタ ポルテ/スペイド トヨタ 中川 氏の取材で、「チルト式回転シート」の例として紹介されたトヨタ「ポルテ」だが、ここでは兄弟車の「スペイド」とともに、その福祉車両としての魅力、リリースされている福祉車両のタイプを紹介する。 「ポルテ」 「スペイド」 全長およそ4mに収まるコンパクトなボディに、大きな助手席スライドドアを採用したのがポルテとスペイド。両者は内外装が異なる兄弟モデルで、ファミリー層に向けた優しいデザインのポルテに対し、スペイドはクールなスタイルが特徴となっている。どちらのモデルも室内は広々していて、とくに低いフロア高と前後に70cmスライドする助手席シートを採用するなど、幅広いユーザーが「これは乗りやすい!」と実感できる設計がなされている。エンジンは経済性に優れた1.3Lと1.5Lの2タイプを設定。アイドリングストップを設定するなど、標準車で最高22.2km/Lを誇る燃費性能も自慢だ。 福祉車両としては、助手席回転チルトシート」や助手席リフトアップシート車、サイドアクセス車の3タイプがあり、それぞれ標準の「Aタイプ」に加え、車いす収納装置を備えた「Bタイプ」の2仕様が用意されている。 「助手席回転チルトシート車」は、座面と背もたれがチルトアップするタイプの福祉車両。手動式のためスピーディな操作ができるうえ、車外へのシート振り出し量が少ないのがポイントで、狭い場所での乗り降りがしやすくなっている。 「助手席リフトアップシート車」は、電動で助手席が回転し、車外へスライドダウンするタイプの福祉車両。リモコンでシートの上昇、下降操作が可能で、背もたれ角度の調整からシートの下降まで全自動で行ってくれる。 「サイドアクセス車」は、ポルテ/スペイドの広い室内を存分に活かした福祉車両のひとつで、クルマの乗降の際、専用の車いすに座ったまま車内に乗り込めるのが特徴。脱着式の助手席型車いす(手動式と電動式を選択可能)が備えられたタイプのほか、専用車いすを固定して乗り込むタイプ、助手席型と専用車いすを共に装備したタイプを設定する。 【価格帯】 「助手席回転チルトシート車」 助手席回転チルトシート車 Aタイプ:195万480円~211万320円... ...
On 2016年12月21日 / By wpmasterBelieverとは? 福祉分野を中心に活動する「明日を信じて今日を前向きに生きる」ひとたち「Believer」を紹介するコーナー。 文●Believe Japan 福祉車両のための車いす 「これはウェルキャブ専用に開発した車いす、ウェルチェアです」。 次に中川 氏が説明してくれたのは、トヨタが自動車乗車専用に開発した車いす、ウェルチェア。 一般的に車いすに乗ったまま福祉車両に乗車すると、次のような点に悩まされることがある。 目線が上がってしまい、外が見えづらくなる。車内から近くの景色しか見られなくなる。同乗者とのコミュニケーションも取りづらい。 座面が地面と水平なため、ブレーキがかかると前にずれて出てしまう。それを筋力で抑えるため、体に負担がかかる。 左右のサポートが弱いため、左右の揺れに弱い。 衝突時の強度に対する不安がある。 もともと車いすは、自動車に載せてその上に乗客が座って移動することを想定して作られていない。だからクルマに乗せればこのような問題が起こっても当然といえば当然のこと。でも、それならば一から自動車メーカーが作ってしまえというのがウェルチェアの考え方だ。 まず、車いすに座り駐車ブレーキをかけた状態で、介助する人が背部にあるチルトレバーを押し下げる。するとお尻の部分がぐっと下がり、リクライニングさせた状態になる。通常の背面だけのリクライニングと違うのは、膝部分はそのまま残るので、腰とお尻だけが下がった状態になることだ。結果、体重が背中と腰に分散される。チルトダウンされるのは、約10cm。シート全体は約15度傾く。 10cm頭上スペースに余裕ができるので、車いすに乗ったままの状態でのクルマへの乗降が楽になる。シートベルトの装着も考えられた作りになっているので、横からスポークやフレームを通してシートベルトを取り回す必要がなく、装着が短時間でできる。スポークの間にシートベルトを通すのは、急いでいるときには案外苦労するものだ。シートベルトのねじれ等も生じないため、しっかりとしたシートベルトの固定が可能。 こちらの動画にも紹介されているように、このチルトダウンを行うと、目線を車内のほかの乗客とほぼ同じ高さまで下げることができる。同時に、前後の動きに対して背面と座面の摩擦力がかかるため、筋力をそれほど使わなくても運転者のブレーキ操作に自然に対応ができる。 乗ってチルトダウンさせてみると、車内が広く感じて、たしかに遠くの景色まで見えるようになった。走行中の上半身の揺れが軽減され、座り心地も上々。これなら長距離のドライブにも対応できるように思えた。 「ブレーキをかけた状態で左右に曲がる動きをすると、一番安定度の違いがわかるのですよ。実際の交通の中で、交差点で右左折するような状況ですね」。中川 氏がステアリングを自分で握り、けっこう強めなデモンストレーションをしてくれた。たしかに揺れが少ない。座面が水平な通常の車いすでは、大きく左右に揺られるはずの場面だ。チルトされている状態だと重心が下がり、上半身の揺れが少なくなっているのが実感できる。何より無理な筋力で体を支える必要がないため、体への負担が少ない。これは快適だ。... ...
On 2016年12月10日 / By wpmaster文●中村孝則(コラムニスト) 写真●Innovation Norway コラムニストとして、ライフスタイルをテーマに、20年近く海外に出向き取材を続けています。なかでも、ノルウェーという国は取材対象のひとつとして、幾度も取材を重ね数多くのメディアで発信してきました。親しい知人たちがノルウェー関連の仕事に携わっていた幸運も重なり、そうしたご縁がつながって、2010年10月にノルウェー王国大使館通商技術部より、「Hr.StyleNorway(ヘル・スタイルノルウェー)」の称号を与えられました。これは、ノルウェーの魅力を伝える親善大使のような役割で、2015年の9月までの5年の任期中には、より深く同国を取材する機会を得ました。ちなみに、この称号及び任務は、私が最初で最後ということで、特別な経験となっています。 さて、ノルウェーは北欧ということもあり、日本ではいまひとつ馴染みの薄い国でもあります。しかし、両国には共通点も多く、未来に向けた国家戦略において日本がノルウェーに見習うところは随所にあると、折にふれて訴え続けてきました。とくにその福祉政策はユニークで示唆に富んでいます。 ノルウェーの社会福祉は、教育や医療、障害者や子育てなどにおいて手厚いことは知られていますが、その本質やそのほかの独創的で実験的な福祉については、日本ではまだ報道や研究が少ないのが実情です。たとえば、ノルウェーで推進しているダイバーシティ政策について。1988年に女性の社会参画を促すべく男女平等法が改定され、世界に先駆けて「クオータ制」が法的に定められました。これは、「公的委員会・審議会は4名以上で構成される場合、一方の性が全体の40%を下ってはならない」というもので、2004年から政府系企業の取締役会、2008年からは一般企業の取締役会でも罰則規定が設けられるという徹底ぶりです。 ノルウェーでは同時に、男性の育児休暇の義務化と、保育園の完全入園の実現にも積極的に取り組んでいます。女性の社会参画は、女性だけの問題ではありません。少子化対策や児童福祉、あるいは男性の労働環境と意識改革の問題と密接につながっています。 ノルウェーでは、1990年代の初頭から、こうした諸問題に対して組織の垣根を越えて、包括的に取り組んでいます。この例をひとつ取ってもわかりやすいのですが、ノルウェーのイノベーションの特徴は、ひとつの課題に対して「横軸」で連携できることです。これは「縦割り」の行政システムを持つ日本が、ノルウェーから学ぶべき最も大きな課題でしょう。たとえば、クオータ制については、日本では議論がはじまったばかりですが、これを単体で論じても、最終的な問題解決にはならないのは自明です。むしろ男性の働き方や家族との過ごし方が鍵になってきます。「女性の社会参画問題は、裏を返せば男性の家庭参画問題」でもあるわけです。その意味で、日本でこの課題を研究するならば、ノルウェーの男性の意識調査をするべきだ、というのが私の持論でもあります。過去に多くのノルウェー男性に、この問題を投げかけてきましたが、彼らの本音は、けっこう正直で面白いものです。まあ、その話は次の機会に譲るとして、今回はノルウェーが取り組む高齢化社会に対する新たな取り組みについてお伝えしたいと思います。 ノルウェーも、先進国の御多分に漏れず、高齢化が社会問題になりつつあります。そしてこの国は、高齢化対策の分野でも世界をリードしているのです。「グローバル エイジ ウオッチ指数」というのをご存知でしょうか?「グローバル エイジ ウォッチ指数」は、高齢者のための人権擁護団体「ヘルプ・エイジ・インターナショナル」が毎年発表する高齢者のランキングです。高齢者の収入や健康、雇用や教育など、高齢者の「生活の質」を独自の指数を用いて、国別で比較するというものです。言ってみれば「高齢者の住みやすい国」ランキングです。毎年、国連総会において世界高齢者デーに定められた10月1日に発表されるのですが、その2016年の最新ランキングで、ノルウェーが第1位になりました。今年度は、調査対象となった96カ国のうちノルウェーがランキング第1位で、2位がスウェーデン、スイス、カナダ、ドイツと続きます。ちなみにオフィシャルサイトはまだ更新されていませんが、日本は昨年の2015年のランキングでは8位でした。 参照元:Global AgeWatch Index 2015 公式(外部サイト) ノルウェーでは、この分野でも以前から社会的な取り組みがなされ、その努力がランキングに結びついたと言ってもいいでしょう。そして先ごろ、ノルウェー政府は、世界に先駆けて高齢化社会に向けた新たな戦略を発表し、それが話題になっています。この政策のねらいについて、ノルウェーのホイエ保健・ケアサービス大臣は「年齢を重ねることに関するネガティブな側面にとらわれることなく、何よりもポジティブな可能性に注目する。必要となるのは高齢者のアクティブな生活を促進し支える施策です」と、発言しています。またハイバルグ前副大臣は「シニア層の多くは職場や社会、政治の世界に疎外感を感じていますが、その偏見を取り払い、高齢者にやさしい社会をつくります」と語っています。ちなみに、ハイバルグ前副大臣は2015年の夏に来日し、日本における高齢化社会の現状と取り組みを視察しています。その戦略の詳細がweb上で発表されていますので、注目すべき点を補足いたします。 「More Years – More... ...
On 2016年12月9日 / By wpmaster福祉車両を「普通のクルマ化」させること Believerとは? 福祉分野を中心に活動する「明日を信じて今日を前向きに生きる」ひとたち「Believer」を紹介するコーナー。 文と写真●Believe Japan 「現実的な話をすると、福祉車両は限られた短い期間しか使われないこともあります。福祉車両の役割を終えた後にも、クルマとしての機能を果たし、普通に使ってもらえるクルマ作りをする。私はこれを(福祉車両の)普通のクルマ化と呼んでいます。」 愛知県清須市にあるトヨタハートフルプラザ名古屋にて満面の笑みで迎えてくれたのは、トヨタの福祉車両製品企画主査、中川 茂氏。ショールームにはトヨタの福祉車両がずらりと一同に並ぶ。 椅子が取り外され、大型の装置が室内に取り付けられている福祉車両。ただでさえスペースが限られているクルマの空間から、乗車人数が減り、荷物スペースが減る。装置が増えれば車重は増し、乗り降りを補助するモーターはバッテリーを大量に消費し、飛び出した取り付けフックのため使い勝手は落ちる。さらに何より、全体のコストが跳ね上がる。 目的地まで素早く経済的に移動するという自動車の役割を、福祉車両は何重にも難しくする。これに正面から挑み、数限りない改良を加え、補助が必要な乗客にとって負担が最小になる状態に仕上げ、できるだけ多くの人が買える価格に抑える。最終的にはそのクルマの先の役割まで考え「普通のクルマ化」されることを目指して出来上がっているのが、このショールームに誇らしげに並べられたウェルキャブたちだ。 ポルテ/スペイドのチルト式 回転シート 例えば、このポルテ/スペイドに搭載されたチルト式の回転シートには、あえて電動の回転式ではなく、手動で回るシートを採用した。電動で回れば乗客は楽ではあるが、逆に時間がかかる。当然機械は大型化し、バッテリーも消費し、重量も増す。それならば、回しやすいシートを手でくるっと回した方がむしろ合理的で使いやすいのではないか、という逆転の発想があった。 乗降する位置でチルトボタンを押してもらうと、座面がひょいと持ち上がり、丁度いい角度に前傾姿勢をとることができる。足が弱った人が最初の一歩を踏み出すのに、これほど楽な姿勢はない。自然な前傾姿勢のまま自重で足を前に出せるからだ。また、両足を同時に地面につけるのも安心だ。座るときにも膝の角度が緩やかなので、膝への負担も少ない。 この機能を取り入れることによって、さらに乗降に必要な車の左側スペースを大幅に短くすることができた。電動式の回転シートには、駐車場に停まる横のクルマとのスペースが約1.1m程度必要であるものが、このチルト式回転シートではなんとたった約45センチ程度のスペースで乗降が可能になった。これなら通常の駐車場で隣に別のクルマが駐車されている状況でも十分に乗り降りができる。もともと広い開口部のスライドドアも乗降利便性に大きな役割を果たす。さらに、この回転シートは車外に出る部分が少ないため、雨の日もシートの濡れを最小に抑えることができる。急に雨が降り出してきた日に回転シートがびしょびしょになるのを嫌って外に出るのをためらうこともなくなる。介助者が一人で左手に傘をさし、右手でくるっとシートを回し、さらに二人でそのまま傘に入ってドアを閉めることができる。これは考えられた作りだ。 ポルテ/スペイドには、この手動の「助手席回転チルトシート車」のほかに、電動の「助手席リフトアップシート車」もある。それには100キロまでの重量に耐える力持ちな電動回転シートが装着され、リモコン操作で本人でも介助者でも簡単に操作ができる。 手動の「助手席回転チルトシート車」は助手席が回転して、シートはほぼ室内に収まったまま座面と背もたれがチルトするのに比べて、この電動の「助手席リフトアップシート車」は、助手席シートが電動で回転し、スライドダウンして、ほぼ完全に車外に出る。シートは地面に近い位置まで低く下がっていく。 強い雨の日に確かにシートは濡れてしまうが、車いすが必須な方はこちらの方が乗降には楽だと思う人が多いだろう。真横に車いすを置いて上下の移動が少なく座り変えられるからだ。ただ、雨の日でも、介助の人が大きめの傘をさして手伝えば、シートの濡れも最小に収められるだろう。(専用シートカバーには防水タイプも用意されている。) 「助手席回転チルトシート車」は、歩行器具を使っても自分で歩ける程度までの状態の方に向いているように思われた。比べて「助手席リフトアップシート車」は、独歩が難しい、または車いすの方に向いていると言えるだろう。 一つ気をつけなければいけないのは、電動の「助手席リフトアップシート車」は、回転するときに足をフットレストに載せる必要があるが、前面足元のスペースの関係で手前にグッと両足を寄せる必要がある。足のサイズにもよるが、体の状態によっては、そこまで足を引き寄せて回るのに無理がないかどうか試してみた方がよいだろう。ちなみに28センチの大きな靴を履いた状態でも回転させることには問題がないので、通常ならスペースが小さすぎて回せないということはほとんどない。... ...
On 2016年12月8日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.