ブリヂストンは高齢者に向けた画期的な「歩行トレーニング装置」を東京医科歯科大学と共同で開発し、2018年から実用化に向けた実証試験を開始すると発表した。 この装置は、体に装着した「空気圧式ゴム人工筋肉」が歩行動作をアシストするというもので、高齢者の健康増進、体力向上を目的としたトレーニングに有効とされている。 アシスト量が大きく、状況に応じて柔らかく動かすこともできる「人工筋肉」は、東京工業大学とブリヂストンが共同で開発したもので、それに東京医科歯科大学生体材料工学研究所の川嶋健嗣教授が開発した「システム制御技術」が組み合わされる。積極的な産学協同の研究が成果を出したものとしても注目に値する。 この歩行トレーニング装置に使われるのは、空気圧式ゴムによる人工筋肉で「マッキベン型」と呼ばれ、ゴムチューブとその周囲の繊維を筒状に組み上げた補強層から構成される。ゴムチューブの中の空気を加減圧することによって伸縮し、ヒトの筋肉のような動きを可能にするもので、ブリヂストンが長年タイヤやホースの開発で培ってきたゴムや補強繊維の技術が応用されている。人工筋肉は油圧で動作し、従来の電気モーターなどと比べて、5~10倍の「パワー/自重比」を誇る。 また、耐久性が高いゴムは耐衝撃性と耐振動性にも優れ、なめらかな動きを実現する。コンパクトで省エネという長所も持ち合わせ、ユーザーの体への負担も小さく、快適性の高いトレーニング装置をつくることができるという。 人工筋肉は人間の筋肉のように、大きな力が出せ、かつ作業に応じて柔軟に動くことができる。 ...
On 2017年12月29日 / By wpmaster脳にはそのひとの人生が詰まっています Believerとは? 福祉分野を中心に活動する「明日を信じて今日を前向きに生きる」ひとたち「Believer」を紹介するコーナー。 文と写真●Believe Japan 東京慈恵会医科大学附属第三病院リハビリテーション科の渡邉 修先生は、脳に障害を受けてしまった方が運転を再開することを助ける「自動車運転外来」を行なっている。外傷や腫瘍等が原因で脳の機能を一部失った方が、再度運転できるかどうかの判断をしたり、リハビリテーションをとおしての機能回復に取り組んでいる。渡邉先生に、活動に対する思いを聞いた。 リハビリテーションの研究に携わることになったきっかけを教えていただけますか? 最初、私は脳失血や脳出血、脳外傷などの患者さんを診る脳神経外科医でした。交通事故などで意識を失った状態で病院に運ばれてきた患者さんの場合は、手術をしたり、急性期(損傷が起きたばかり)の低体温療法などで治療をすると、たしかに命は助かり、身体的にも回復していきます。しかし、脳は非常にデリケートな組織なので、脳挫傷や脳出血が生じると、どうしても傷が残ります。うずらの卵ほどの小さな傷ですと、回復の後、支障なく日常生活が送れるのですが、にわとりの卵ほどの損傷となりますと、ほとんどの場合、後遺症が出てしまいます。すると、その方は、「命は助かったけれど、社会に戻っていけるのか……」ということが問題となってきます。なんとか「救命」されても、「救脳」はされないということです。そうなると、患者さんだけでなく、家族の方も社会的に孤立していってしまいます。「ウチの息子を置いて先には死ねない」という親御さんにもたくさん出会ってきました。それは、もはや脳外科医に対応できることではありませんでした。 私が脳神経外科医だったころは、「高次脳機能」いわゆる認知能力のダメージについては、「それでおしまい、するべきことは無い」という風潮でした。医師も、患者さんや家族の方に「これで諦めてください」と伝えるしかありませんでした。それは、「命が助かっただけよかったじゃないですか」とも聞こえました。それでは患者さんとご家族は、社会から疎外されたままなのです。わたしはその現実に疑問を感じました。そして、患者さんが社会復帰、社会参加していけるようにするためのリハビリテーションに関心が向いていきました。ありがたいことに、そんな私を支援してくださる先生方がおりました。当時、私は浜松の病院にいたのですが、東京の慈恵医科大や研究会によく連れて行っていただきました。それが、リハビリ研究のスタートでした。 スウェーデンの病院で研究されておりましたが、北欧と日本とで、リハビリテーションに関する考え方の違いはあるのでしょうか? リハビリテーションを学ぶため、ストックホルムのカロリンスカ病院というところに勤務していたのですが、そこで印象的だったのは、いわゆる「患者さんファースト」という考え方ですね。日本でも最近は一般的になってきましたが、「患者の権利」と書かれたパンフレットが院内で最初に渡されるなど、とても新鮮な驚きでした。治療の意思決定なども、すべて患者さん中心で行われていました。また、当時のカロリンスカ病院では、患者さんが30分以上待たされると診察費が無料になるというルールがありまして、待合室で長く待たされるということはほとんどありませんでした。スウェーデンは人口が少ないこともありますが、病気や身体の不具合を抱えていらっしゃる方を待たせるということは、考えられない文化だったのですね。 また、私が参加していた脳疾患患者の家族会があるのですが、ご家族の方たちも、さまざまな意思決定は「患者本人を中心にすすめていきたい」という意見がほとんどでした。さらに、国が支援している大企業では、それぞれの状態に合わせた仕事が用意されていました。「計算は苦手だが絵を描くことはできる」など、自分の障害に合わせた仕事によって収入を得るという考えが国全体で共有されているのです。自立や社会復帰などが重要視されているのですが、これは患者さん個人やご家族の幸福にもつながると思います。それこそが本当の意味での「患者中心の医療」なのだと深く思わされました。 また、当時、私の息子が日曜日に小児の感染症である猩紅熱(しょうこうねつ)にかかってしまい、病院に連れて行ったのですが、医師が診察室を出て、廊下で待つわれわれのところまで歩いてきて、握手をしながら「わたしがお子さんを拝見させてもらいます」と挨拶をしたのでした。そこである種、患者さんと医師の間に「契約」が成立して「治療」がはじまるという流れでした。それは本当は当たり前のことなのかもしれませんが、当時の私は大きな衝撃を受けました。以来、日本に戻ってきてからも、自分で立ち上がって患者さんにご挨拶に行き、診察室に招き迎えるということを行わせていただいています。おかげで、とてもよいことがあります。招きいれるということで、そのときの患者さんの歩行状況をつぶさに見ることができるのです。カルテに目をやりながら「どうぞ」というのとは違って、私の診察はすでにはじまっているのです。... ...
On 2017年10月25日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan さまざまな理由で脳に障害を受けた後、自動車の運転ができなくなることがある。 「前頭前野皮質(前頭葉)、この部分がしっかりしていないと残念ながら運転は難しいのです」。東京慈恵会医科大学附属第三病院 リハビリテーション科の渡邉修先生は言う。 渡邉先生は、脳に障害を受けてしまった方が運転を再開することを助ける「自動車運転外来」を行なっている。外傷や腫瘍等が原因で、脳の機能を一部失った方が再度運転ができるかどうかの判断をしたり、リハビリをして機能を回復させる。 運転を行うのは「脳」 「自動車の運転には、<高次な脳機能>が必要です」と渡邉先生。たとえば、小雨が降っている日に、買い物をするために自動車で出掛ける。どの道を通っていけば近いだろうか。高速道路に乗ったほうが早いだろうか、それとも一般道の方がかえって渋滞を避けられるだろうか。着いたら近くに駐車場があっただろうか、それとも地下駐車場がついているのだろうか。ルート案内はカーナビを使うとしても、全体の運転の計画を立てるのは人間の脳だ。そして、アタマのおでこの部分、前頭葉が「計画性」「遂行機能」を司る。 駐車場でエンジンをかける、ギヤを入れてステアリングを切る。車幅の感覚を感じて、駐車場の障害物にぶつからないように車道にクルマを進める。歩道の前で一時停止。その瞬間、左側20メートルくらい先から自転車が高いスピードで走ってくる。一方、右側には傘をさして立ち止まった歩行者が見える。このひとはただここで立ち止まっているのか、それとも進みたいのか。自転車はあとどのくらいの時間で目の前を横切るのだろうか。 ふだん何気なく運転しているドライバーの脳内では、このような認識や判断が絶え間なく行われているのだ。「空間の認識」、また「地理的な認識」は脳の右側の頭頂葉が支配する。「注意力」は前頭葉だ。街に出て、クルマを進める。時速40キロ制限の狭い道を走行する。一時停止のサインを見てアクセルペダルから足を離し、ブレーキを踏む。「40」と書かれた標識や一時停止の「止まれ」などの「文字の理解」を担うのは脳の左側、側頭葉と頭頂葉の働きだ。 前頭葉は大脳のもっとも前部となる脳領域で、人間の脳全体の約30%程度を占める大きな部分、いわば司令塔的な部分である。そして、この部分は自動車の運転においても大切な部分を司っている。「注意力」「遂行能力」だけではなく、たとえば、自転車にも歩行者にもそれぞれ優先順位をつけて気をつけるような「配分力」や「判断力」もこの部分が機能して体を動かしている。そして、側頭葉部分やその他の部分も高度に統合的に機能して初めて自動車をぶつけずに運転して行くことができる。事故を起こさないということは、社会で他の人や物に危害を与えないということ。つまり脳が自動車を運転する「高次な脳機能」を発揮して初めて、個人の自動車運転が社会的に受け入れられることになる。 脳構造の模型を手に説明する渡邉先生。安全な自動車の運転を行うには、左右大脳半球の広範な高次脳機能が必要となる。 「脳自体は豆腐のように柔らかい器官。強い衝撃を与えると、外傷がないように見えても頭蓋骨の内側と衝突して細胞自体が損傷を受けてしまうことがあります。たとえば自動車の事故などでアタマの前面を強く前に打ち付けると、大切な前頭葉が損傷を受けてしまうことがあります」と説明する渡邉先生。自動車自体を動かすことができても、前頭葉が損傷を受けると十分な注意力や判断力を持つことができなくなることがあるのだ。すると、自動車を障害物にぶつけてしまったり、他の交通と事故を起こしてしまうことがある。また、右側側頭葉が障害を受けると、空間把握が難しくなり、障害物の位置関係を正確に把握することができなくなる。左側側頭葉が損傷すると、制限速度やスピードメーターを見ても数字を正しく認識できなくなることもある。 写真左:こちらは左脳。左側手前が前頭葉。溝で別れて右側が側頭葉となる。右下に伸びるのは脳幹。左脳は、道具などの操作をはじめ、数字や言語も司っている。 写真右:左右側頭葉の内側にあって、記憶を司る海馬(かいば)は、非常にデリケート。そのため、脳に強い衝撃を受けると記憶障害の発生頻度は高い。 自動車運転外来... ...
On 2017年9月29日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●Believe Japan、トヨタ自動車 福祉車両でも多くのラインアップを誇るトヨタ自動車が、先日、歩行のリハビリテーション支援を行うロボット「ウェルウォーク WW-1000」のレンタルを開始すると発表した。 最近、ロボットが身近な存在になってきているが、このほどトヨタ自動車が発表したパートナーロボット「ウェルウォーク WW-1000」は、脳卒中などの病気やケガによって、歩行することや身体のバランスを保つことが困難となった方のリハビリテーション支援を行うロボットだ。 ロボットというと、人間や動物のカタチをしたもの、あるいは似せたものをつい想像してしまう。しかし、このウェルウォークは高さ2380mm、長さ2710mm、重量もおよそ800kgというサイズの大きな歩行練習機だ。我々が思い描く「ロボット」のイメージからはほど遠いわけだが、「歩行練習アシスト」と「バランス練習アシスト」におけるその仕事ぶりは圧巻で、医療現場における臨床実験ではすでに、利用者をはじめリハビリ現場に大きな効果と利便性をもたらすなど好評を博しているという。 ウェルウォーク本体は、トレッドミル(ウォーキングマシン)と、患者さん用と介助師用それぞれのモニター、患者さんの身体を支えるハーネスで構成され、利用する患者さんは、膝の曲げ伸ばしをサポートする「ロボット脚」を装着してリハビリテーションを行う。 【ウェルウォーク WW-1000の特徴】 ◎歩行速度やハーネスのサポートレベル、モーター内蔵のロボット脚が行う曲げ伸ばしは、臨床実験などで得られた膨大なデータをもとに自動制御される。 ◎車いすのままウォーキング部分に乗り込め、患者さんの前方から、療法士1名が、簡単にロボット脚を装着できる。慣れると、所要時間はおよそ2分から3分程度となる。 ◎足元、前面、側面に設置された合計3台のカメラにより、歩行状態の様子が詳細にわかる。映像はリアルタイムで患者さんも確認でき、録画も可能。 ◎ハーネスが患者さんの体幹を支え、転倒を防止するので安全なリハビリが可能となる。ロボット脚のハーネスは、麻痺した脚の振り出しもアシストする。 ◎大きくて見やすいタッチパネルタイプのモニターで、ロボットの起動・停止をはじめ歩行速度やハーネスのサポートレベル(免荷量)の調整などを一括操作できる。... ...
On 2017年5月8日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 高齢者や障がいのある方の快適な生活を提案する総合福祉展「バリアフリー2017」が、今年もインテックス大阪で開催された。23回目を迎えるバリアフリー展は、もはや春の風物詩としてすっかり定着し、今年は4月20日(木)~22日(土)の3日間で、のべ9万1356人という多くのひとが来場した。 医療、福祉にまつわるさまざまなデモンストレーションや展示、講演会などが行われたが、やはり福祉車両に対する注目度は高く、自動車メーカーのブースには、連日多くの来場者が訪れて、スタッフに対して熱心に、展示車両の機能や使い勝手などを確認している姿が見られた。各メーカーも注目のニューモデルを大々的に展示し、新しい機能などを積極にアピールした。 最近では、福祉車両を展示して、乗り降りなど実際の使い勝手を試すことができるショールームが増えている。それらは、バリアフリーはもちろん、それぞれの車両のまわりには大きなスペースがあるため、車いすでも自由に移動できるのでとても快適だ。しかし、福祉車両が数多く一堂に会して展示されるという機会は稀で、メーカーの垣根を越えて、気になるモデルを自由に比較できるということは、多くのユーザーにとってもありがたい。 ここでは、とくに関心の高かったモデルをメーカーごとにピックアップして紹介したい。 【トヨタ】 福祉車両をリードするトヨタのブースでは、コンパクトからミニバンまで、多様なラインアップで、終日賑わいを見せていた。そのなかで目立っていたのが、ハイブリッドモデルの人気の高さだった。会場では、福祉車両の燃費の目安について質問する来場者の姿も多く、その熱気の中心にあったのがプリウスPHEVの助手席回転チルトシート車。標準車の注目度の高さは福祉車両でも変わらず、実際に乗り降りを体験するための列ができるほどの人気ぶりだった。 プリウスPHEV 助手席回転チルトシート車 チルトシートは乗り降りされる方の腰の位置が高いことから、立ち上がりやすく、着座時も膝の角度がゆるやかで負担が少ないのが特徴。また、手動式のためスピーディーな操作が可能という手軽さもアピールしていた。 アーティスト大峰直幸氏によるデザインラッピングが施されたシエンタ。トヨタではおよそ30年前から、障害のあるひとの芸術活動を支援している。 【ホンダ】 8台の福祉車両が展示されたホンダのブースでは、「いつでも、どこでも、だれでも用途に応じて思いどおりに使える」というキャッチフレーズの新型コンパクトミニバン「FREED(フリード)」とホンダの福祉車両として高い人気を誇る「N-BOX」が主役だった。コンパクトながらも広大な室内空間を活かし、車いす利用者も含めて最大6名の乗車を可能とした「FREED+(フリード... ...
On 2017年5月5日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.