文と写真●Believe Japan 2020/9/10(木)配信 「~移動の喜びを一人ひとりに~」。ホンダはこの人間尊重の基本理念のもと、長年クルマを製造・販売しているが、福祉車両(ビリーヴカー)に関しても、その歴史はじつに長い。 現在、福祉車両には大きく分けて「介護車両(介護する側が運転する)」と「自操車両(補助装置を使って自身で運転する)」の2種類が存在するが、ホンダは後者の「自操車両」を、なんと1976年に誕生させていたのだ! 初代シビックに搭載されたのは、両下肢に障がいを持った方へ対応する手動運転補助装置で、「Honda・テックマチックシステム」と呼ばれるもの。その後、ホンダは両上肢に障がいを持った方へ対応する足動運転補助装置「Honda・フランツシステム」も1982年に完成させている。とくに足動運転補助装置は技術的にもハードルが高く、当時の営業スタッフが障がいを持つ一人の女性との出会いがきっかけとなり開発されたというが、その完成までの道のりは長く、まさしくチャレンジの連続だったという。 今回は、手動運転補助装置の「Honda・テックマチックシステム」をクローズアップ。新型フィット用に開発された「Honda・テックマチックシステム」は、e:HEV(イーエイチエーブイ)とガソリン車双方に装着でき、両足が不自由な方向けの「手動運転補助装置〔Dタイプ〕」、右足が不自由な方向けの「左足用アクセルペダル〔Bタイプ〕」、片手が不自由な方向けの「ハンドル旋回ノブ〔Aタイプ〕」、「左手用ウインカーレバー〔Lタイプ〕」がラインアップされている。 ちなみにこの手動運転補助装置。日本ではあまり見かけない印象があるが、欧州ではもっともポピュラーなビリーヴカーといえ、現地の福祉関連イベントの駐車場ではかなりの台数を見かける。地理的な問題はもちろんだが、できるだけひとの手を借りず、自立した毎日を過ごしたいという彼らの生活に根ざした必需品というわけだ。 話は戻って、撮影車は「手動運転補助装置〔Dタイプ〕」に「ハンドル旋回ノブ〔Aタイプ〕」が装着された仕様。運転補助装置と聞くと、なにやら複雑な機構がインテリアの雰囲気をガラリと変えそうなイメージあるが、写真を見てわかるように、じつにすっきりとキレイにまとまっている。とくに足元スペースは広く開放感にあふれていて、コントロールグリップの質感や剛性感も、後付け感がない。この違和感のなさに、長年積み重ねられたノウハウが感じられる。 早速試乗してみると、発進、停止、そしてステアリングのしっとりとしたフィーリングなど、新型フィットの魅力がまったく損なわれていないことを確認。動画レポートを担当した竹岡圭氏も、「思っていた以上に走りが楽しい!」を連呼していた (こちらはインプレッション動画をご覧ください)。 開発メンバーに話を伺うと、「基本的な機能や操作のロジック、耐久性などは自動車メーカーの名に恥じぬものに。また、実際には使用される方の状態にあわせた、いろいろな対応を行っています」とのこと。いまホンダには、実際に福祉車両を見て、試すことができるバリアフリーのお店「オレンジディーラー」があるのをご存知だろうか? ここでは介助士資格取得スタッフが常駐し、いろいろな相談ができるという(介護車両の展示はあり。今回のような自操車両は要相談)。そして、そのような心強いお店が全国に406拠店! もあるというから驚きだ。 車いす生活での移動の重要性は、あらためて語るまでもないだろう。モータースポーツでの活躍や航空業界への進出など、さまざまな分野で実績を積み続けるホンダだが、福祉車両(ビリーヴカー)も諦めないところに、そのチャレンジングスピリットを感じる取材となった。 新型FIT「Honda・テックマチックシステム」Dタイプ。外観は通常モデルとまったく同じだ。 開放感ある運転席まわり。フィットは2本スポークステアリングで、視覚的にもゆとりが感じられる。 このコントロールグリップで、アクセルとブレーキの操作を行う。とても剛性感が高くしっかりしたつくりで、ほかにもハザードスイッチ、ウインカースイッチ、ライトスイッチ(HI/LO)、ホーンスイッチが集約されている。また、〔Dタイプ〕は障がいのない方も運転できるように、コントロールグリップ固定する(機能を停止する)ねじ穴も装着されている。 ハンドル旋回ノブは、「ホーンなし」と「ホーン付き」が選べる。 撮影車には未装着だが、サポートアイテムとして、運転中にアクセルペダルやブレーキペダルを誤って踏むのを防止する「ペダル誤操作防止プレート(Dタイプ用)や、左足のみでアクセルとブレーキの操作が行える「左足用アクセルペダル〔Bタイプ〕」も用意されている。 シートは標準モデルとまったく同じだ。... ...
On 2020年9月10日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 今年で44回目を迎えた国際福祉機器展。ここでは会場で目にして、気になった福祉車両などを紹介していきたい。 まずは、ホンダの「テックマチックシステム」と「フランツシステム」。「名前は聞いたことがある」、「福祉機器展のホンダブースで見かけたことがある」という方も少なくないと思うが、これは、足が不自由な方、半身が不自由な方、両手が不自由な方が、「自分でクルマを運転できる」ようにする運転補助装置だ。現在ではコンパクトモデルの「フィット(FIT)」に搭載が可能となっている。システムは発注時に販売店のスタッフと相談し、細かにカスタマイズしながら自分の身体の状態に適したパーツを選んで組み込むことができる。 「テックマチックシステム」は、足が不自由な方、または半身が不自由な方が運転できる補助装置。 「フランツシステム」は両手が不自由な方に、足のみの運転を可能にする補助装置である。 テックマチックシステム まずは、「テックマチックシステム」。ホンダによる独自開発となるが、ならではの美点は、車両への最適化がされているところだろう。たとえば、ステアリング左下の部品の取りまわしが、ワイヤーをうまく使っていて運転席スペースへの張り出しが最小化されている。通常、補助装置は左足横のスペースにコントロール用のバー等があって、どうしても左足に部品が触ってしまうことが多いのだが、テックマチックではその部分の張り出しがほかのものと比べて非常に少なく、違和感が少ない。 アクセルとブレーキを操作するコントロールグリップ(レバー)は、全体が前後するタイプではなく手首でレバー部分だけを前後させるタイプで、軽くスムーズな操作感覚を実現している。前方へ押すとブレーキが、手前に引くとアクセルが作動する。ウインカーも付く。 「ハンドル旋回ノブ」と呼ばれるステアリング補助用のノブは、ノブにホーンボタンがついているタイプとついてないタイプから選べる。取り付ける位置は自分で選ぶことができる。好みにもよるが、普通よく見かけるステアリングの上方に装着するより、足に近い下方の位置に取り付けた方が腕の疲れは少ないというユーザーからの意見が多い。たしかに運転中はステアリングに手を添えるため、腕を上げっぱなしでいるよりも、足の上に腕を置いて運転するスタイルのほうが腕の疲れは軽減されるはずだ。旋回ノブのある位置がステアリング操作を回転させる起点になるので、ノブはどこの位置についていても操作ができることには変わりがない。操作系の部品の自分の快適な位置は、発注時に相談して最適なセッティングをみつけることができる。 また、半身が麻痺している方には、右手右足または左手左足だけで動かすシステムを組み込むことも可能だ。ウインカーの操作が片手で行えるようレバーが付いている。また、ウインカーのオートキャンセル機構もそのまま機能する。 アクセルとブレーキ操作は片方の足で行う。この写真ではいちばん左のペダルが、アクセルペダルとなる。このようにカスタマイズできる範囲の広さが、テックマチックシステムの柔軟さである。 フィット、フィット ハイブリッドで、「テックマチックシステム」と「フランツシステム」を選ぶことができる。 ... ...
On 2017年10月14日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan この特別なロードスターには手動運転装置が付いている。 マツダから正式に2017年9月21日に発売になったばかりのロードスター(ソフトトップ)、ロードスター RF(電動ハードトップ)の手動運転装置付車は、「人が自分の力で自分の操作で運転ができること」を実現させている。足が不自由な方が両手を使って走る歓びを感じることができるクルマである。 マツダの福祉車両の歴史は長い。90年代にはすでに他の国内メーカーに先んじて、キャロルの小さなボディの後部ハッチからスロープを出して車いすを格納できる福祉車両を発売していた。そのマツダが満を持して発売したのが、この「自操型」福祉車両ロードスター。 スポーツカーの福祉車両が誕生した マツダは2年ほど前からコンセプトモデルとしてロードスターを福祉機器イベントなどに参考出品してきたが、そこで多くの来場者から、「嬉しい」「乗りたい」などの反響があったという。また、「シフトダウンスイッチが右側にほしい」などの声も積極的に取り入れてこのロードスターを開発してきた経緯がある。 今回触れたのはロードスター RFの手動運転装置付車。乗り込んでみると、ドアが大型のために、開口部が広い。大きいドアは開くのに駐車した横のスペースが余分に必要になるデメリットがある反面、車いすから移乗する際に足元がラクである。移乗するときには足を前に投げ出して、場合によっては手で足を引き上げる必要が生じるが、開口部が狭いと膝を余分に曲げなければいけなくなる。これは苦しい姿勢だ。開口部の広い車は、足が前に出しやすく乗り込みがラクである。また、スポーツカーならではの座面の低さがあるため車いすとの座面高さとの違和感が少ない。 オプションの「乗降用補助シート」を手前に倒すと、補助シート(上面)とシートの段差が少なくなる。横移動の時に一度ここに腰掛けることができるため、非常に実用的なオプションだ。ドアを閉めるときにはこれを手動で手前に立てる。すると、動かすときにしっかりとした剛性を感じる。このような動きにもしっかりとした作りを感じられるのは、メーカーオプションならではである。 乗降用補助シートは折り畳みタイプで、運転の邪魔にならないよう工夫されている。 作り手のこだわり ロードスター/RF手動運転装置付車の開発を担当したマツダの田中主査にお話をうかがった。 「価格が高くてはいけない、そもそも壊れてしまっては意味がない。リーズナブルな価格で提供できて、信頼性の高いものというところを目指しました。車体に穴を空けて装着をするものですので、自動車としての強度が確保できるかなどの視点が必要になります。また、振動で簡単にボルトが緩まないよう、架装品として装着した際のクオリティも実現させる必要がありました。余分なスペースが少ないロードスターのタイトな室内の中に部品を装着していくのは簡単な作業ではありませんでしたが、結果的にはうまくはめ込むことができました。操作性もよく仕上がって、ロードスターのダイレクトな感覚を残せたと思っています」と田中主査。 マツダ商品本部の田中賢二主査。「手動運転装置付車の開発をロードスターで行いたい」と社内で提案したところ、多くの役員が「それはいい、行こう!」と賛同してくれたのが非常にうれしかったとふり返る。 ロードスターの魅力をそのまま伝える... ...
On 2017年10月6日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.