文と写真⚫︎大音安弘
2024/1/8(月)配信
欧州最大の福祉機器展「REHACARE(リハケア) 2023」が、2023年9月13日~16日の期間、ドイツ・デュセルドルフで開催された。今年の出展社は700社を超え、来場者の総勢が3万人となる盛況ぶり。その会場で出会った福祉車両やモビリティを紹介したい。
ベルギーに本社を置く「Q Care」は、福祉車両へのコンバージョンや販売を行う会社だ。自操式福祉車両も手がけるが、今回の出展では、身障者を車いすのまま乗車させる介護式車両を中心に展示を行っていた。
介護式福祉車両の場合、主にワゴンタイプの車両が使われる。その場合、バックドアにスロープを設けて乗降を行うため、車いす利用者の乗車位置は、ラゲッジスペース付近となるのが一般的だ。同社の手頃なサイズのデモカーは、ルーマニアの自動車メーカー「ダチア」のMPV「ジョガー」ベースのリヤスロープ付きでラゲッジスペース付近に乗車するタイプと、「欧州フォード」のMPV「トルネオコネクト」のサイドスロープ仕様の2タイプを展示していた。
リヤスロープ仕様のメリットは、1列目と2列目のシートまでエリアをベース車のまま使えることにある。ただ車いすの乗員との間に距離が生じてしまう。とくに2人で乗車した場合、運転席と最後部の車いすの乗員とは、様子を伺いにくいだけでなく、会話もしづらい状況でもある。Q Careのサイドスロープ車は、なんとアクセス位置をサイドに変更することで、車いす利用者を助手席位置に乗車させることを実現している。これにより、2列目の2座が失われてしまうが、ドライバーは車いすの乗員とコミュニケーションを図れるなど移動中のフォローも容易となるのが大きな価値となる。
同社の担当者は、「大切な家族や仲間の車いす利用者に疎外感を与えることなく、楽しい移動時間を提供できるのも、サイドスロープ仕様の魅力」とのこと。またカップルや若い夫婦にも人気があるそう。ただファミリーカーの場合、福祉車両でも手頃なサイズのクルマで家族全員が乗車できるものが求められることもあるため、2つの仕様を提案しているとした。
一方で、「フォードトルネオカスタム」のような大型ワゴンでは、バックドアのスロープからの乗車でも、2列目中央に車いす利用者を乗車させることが可能な仕様を提案している。この仕様だと、4名乗車+車いす利用者の5名の乗車が可能。乗降時には、荷物を下ろす必要はあるものの、ラゲッジスペースも活用することができるので、こちらもファミリー向けと言える。
福祉車両の場合、ダチアやシュゴダなどの東欧メーカーのクルマでのデモカーが多く見受けられた。この点を担当者に尋ねると、最大の理由は、ベース車の価格を抑えることができることだという。ダチアがルノー傘下、シュゴダがVW傘下といずれも巨大メーカー系列であり、プラットフォームや技術の共用化も図られているため、クルマの完成度も高いと聞く。高額な改造費が必要な福祉車両で、東欧車が注目されるのも納得の結果であった。
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