文と写真⚫︎大音安弘
2024/1/11(木)配信
欧州最大の福祉機器展「REHACARE(リハケア) 2023」が、2023年9月13日~16日の期間、ドイツ・デュセルドルフで開催された。今年の出展社は700社を超え、来場者の総勢が3万人となる盛況ぶり。その会場で出会った福祉車両やモビリティを紹介したい。
ドイツ・ヴァンセルベルクに本社を置く「Automobile Sodermanns」は、1996年に創業した身障者向けの車両改造に特化した企業で、あらゆる身体的疾患を持つ同乗者にも最適となるモビリティを提供している。改造の対象となるのは、乗用車にもちろん商用車や作業用機械などのビジネスニーズに加え、オートバイやキャンピングカーといった趣味性の高いものまで対応している。同社のスタッフは、医学的および技術的な訓練を受けているため、個々の車両の改造が、どのような要件を満たす必要があるかを正確に理解することができるという。
展示車のFIAT500Xは、身障者ドライバー向けの仕様のもの。運転席には、いずれもドイツVEIGEL社のハンドコントロール「eクラシック」とマルチファンクションノブ「マイコマンド」が装着されている。
eクラシックは、電子制御式のハンドコントロールで、ハンドルをひねることでアクセルを、ハンドルをプッシュすることでブレーキを操作する仕組み。人間工学に基づいた設計で、ハンドル角度の調整も可能だ。ステアリングに装備された「マイコマンド」は、ステアリングのグリップ操作に加え、ウインカーやライト、ワイパーの操作など最大14個の機能を手元のボタンで操作できるため、ステアリングから手を放さずに運転操作を行える。
ドライバーが車いすをスムーズかつ簡単に収納できるように、収納機能は運転席側の後席部に設置されている。この車いす積載システムは、ドイツTECHNIK RAUSCH社の「Ladeboy S2」で、市場でもっとも実績のあるシステムのひとつとのこと。運転席側の後部ドアを電動スライド式ドアに改造し、リモコンまたはスイッチを使用したワンプッシュ操作で、スライドドアを含む積み込み作業を行ってくれる。対応する車いすの重量は、最大38kgまで。車種にもよるが、基本的には後席1座分のスペースがあれば、搭載可能であり、ラゲッジスペースもしっかりと活用できるのも強みとなっている。
同社ではMINIのようなコンパクトカーからメルセデス・ベンツGクラスとった大型SUVまで幅広い車種に対応。すでにEVでの実績もある。そのなかにポルシェ911やBMWアルピナといった趣味性の高い車種が含まれるのは、さすが自動車大国ドイツを感じさせるところ。また同社ではメンテンナンスはもちろんのこと。身障者向けの運転免許の取得のサポートなどのサービスも提供している。
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