文と写真⚫︎Believe Japan
2026/10/30(金)配信
2026年秋、ドイツのハノーファーで開催された商用車の国際見本市「IAA TRANSPORTATION 2026」。世界各国の自動車メーカーや商用車関連の企業が次世代のモビリティを展示して盛り上がりを見せた。ここでは会場で関心を集めていたビリーヴカー(福祉車両)を紹介したい。
欧州のクルマブランド、架装メーカーとの協業で誕生したトヨタの車いす仕様車
今回紹介するのは、トヨタの「プロエース シティ ヴァーソ L2 チームプレイヤーモービル」。コンパクトバンをベースに、車いすで乗り降りできるように改造した車両だ。注目したいのは、欧州の自動車メーカーとの協業で成り立ったトヨタブランドの車両であり、現地の専門メーカーによる架装技術が組み合わされている点である。
欧州で展開される商用車「プロエース」シリーズ

「プロエース」は、トヨタが欧州で展開する商用車シリーズである。コンパクトな「プロエース シティ」、ひとまわり大きな「プロエース」、さらに大きな「プロエース マックス」などがあり、用途や必要な積載量に応じて選べる。今回のベース車である「プロエース シティ ヴァーソ」は、人を乗せることを重視した乗用仕様で、商用車として培われた実用性を生かしながら、乗員を運ぶための車両としても使われている。
車名にある「L2」は、長いボディを示す仕様名である。標準のL1に対するロングボディ仕様で、車内空間を活用した乗員輸送や、車いす対応車への架装にも関係する要素となる。プロエース シティには、トヨタと欧州メーカーとの協業という背景もある。トヨタは、当時のPSAグループ(プジョー、シトロエン)と小型商用車分野で協力し、欧州向けの車両を供給する体制を築いてきた。こうした仕組みは、他社が開発・生産する車両を自社ブランドで販売する「OEM」と呼ばれるものだ。
PSAは、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)との統合を経て、現在のステランティスへとつながっている。ステランティスは、プジョー、シトロエン、フィアット、オペル、ジープなど多彩なブランドを傘下に持つ自動車グループで、2025年の世界出荷台数はおよそ548万台。自動車メーカーグループでのランキングでは世界5位。欧州市場で2位の規模を誇る。つまり、「プロエース シティ」はトヨタのブランドで販売される一方、その成り立ちは欧州メーカーとの協業による。こうした生産・供給体制を活用することで、トヨタは欧州の商用車市場に幅広い選択肢を提供しているのである。写真を見れば明らかだが、兄弟車としては、シトロエンベルランゴ、フィアットドブロ、プジョーリフターとなり、プロエース シティはこれらのOEMモデルとなる。
スロープと床面加工で車いすの乗降をサポート

今回の展示車は、後部から車いすで乗り込めるように架装されている。車両後部にスロープを設け、車いすが通過する床面などを加工することで乗り降りしやすい構造としている。車いす対応車では、スロープを取り付けるだけでは十分ではない。車いすが通る開口部の広さや床面の高さ、車内で車いすを固定する方法、乗員の身体を支えるベルトなども考慮する必要がある。
トヨタによると、後部スロープに加え、車いす用の4点式固定装置と、乗員の身体を保持する3点式シートベルトを採用しているとのこと。また、床面を低くする加工によって、車いすで乗り込んだ際の頭上空間を確保している。こうした架装を手がけるのが、フランスの車両改造メーカーGRUAUである。同社は1889年に創業し、商用車などを用途に合わせて改造する事業を展開、欧州を中心に世界15箇所に生産拠点を持つ。トヨタは、GRUAUとの協業による車いすへ対応した仕様を公式に紹介している。

車両メーカーがベース車を提供し、架装メーカーが車いすでの乗降に必要な加工や装備を加える。このように、それぞれの専門性を組み合わせることで、一般的な乗用バンを福祉用途に対応させているのである。この「プロエース シティ ヴァーソ L2 チームプレイヤーモービル」は、車いす利用者本人だけでなく、介助者や送迎に携わる事業者などの利用も想定した車両だ。個人での移動から送迎まで、車いすでの柔軟な移動を支えるための選択肢となっている。
ベース車と架装技術が広げる福祉車両の選択肢

福祉車両に求められるのは、車いすで乗り降りできることだけではない。乗員の安全を確保することや同乗者の座席をどう配置するか、また日常の移動に使いやすいかなど、さまざまな条件を考える必要がある。今回の「プロエース シティ ヴァーソ L2 チームプレイヤーモービル」は、既存のコンパクトバンをベースに、専門メーカーの技術で車いす対応車に仕立てるケースといえる。車両全体を専用設計する方法とは異なり、ベース車の基本設計を生かしながら、必要な機能を追加している点が特徴だ。

欧州では、トヨタが「Toyota Professional」ブランドで商用車を展開し、架装メーカーとの協業によって用途に応じた車両を提供している。GRUAUによる車いす対応仕様も、こうした取り組みのひとつとなる。
一方、今回紹介したGRUAUによる車いす対応仕様は日本国内で正規販売されていない。日本で同様の車両を導入する場合には、ベース車の入手に加え、架装の仕様、登録手続き、整備・修理体制などを個別に確認する必要がある。
福祉車両の選択肢を広げるためには、ベース車そのものだけでなく、それを目的に合わせて改造する技術にも注目したい。今回の展示車は、欧州における商用車と福祉車両のつながりを知るうえで、興味深いモデルといえよう。
展示車両データ

プロエース シティ ヴァーソ L2 チームプレイヤー モービル 1.5L 96kW (130PS)
エンジン:1.5L 直列4気筒ディーゼル
トランスミッション:8速オートマチックトランスミッション
エンジン最高出力:96kW(130PS)/3750 rpm
最大トルク:300Nm
最高速度:183km/h
排気ガス規制:EURO 6 EB
全長:4753mm
全幅:1848mm
全高:1880mm
ホイールベース:2975mm
車両重量:1575kg
スロープ内幅:771mmスロープ長さ:1580mm
最大ストローク(有効長):1410mm
室内高(車いす部):1415mm奥行き:1225mm
燃費・CO2排出量(WLTP)
・燃料消費量(複合):5.8L/100km (約17.2km/L)
・市街地(低速):6.6L/100km
・市街地(中速):5.5L/100km
・郊外(高速):4.9L/100km
・高速道路(最高速):6.3L/100km
主な装備
ホイール&タイヤ16インチ
軽量アルミホイールタイヤ応急修理セット
コネクティビティ&インフォテインメントナビゲーションシステム「Toyota ProTouch & Go」
10インチ HDマルチメディアディスプレイ
音声制御機能
インテリア&コンフォートセンターコンソール、ドアロック、レザーハンドル
2列目シート:3独立シート(フラットフロア対応)
3列目シート:個別折り畳み式シート
オートエアコン(2ゾーン)
スマートキーシステム
フロントシートヒーター
セキュリティ&アシストシステムリアパーキングセンサー、バックカメラ
エアバッグ(6個)
ライト&視界バイLEDヘッドライト(Bi-LED)
プライバシーガラス(リアシート部濃色ガラス)
フロントフォグランプ
レインセンサー(自動ワイパー)
特別装備(福祉・コンバージョンオプション)
・ヘッドレスト&バックレストサポート
・電動乗降補助装置(電動ウインチ/引き込み装置)

価格
車両基本価格:4万3268€オプション
価格:5273€(ヘッドレスト、バックレスト、電動乗降補助装置など)
特別塗装:655€(シルバーメタリック塗装)
工場出荷時特別装備付き車両価格:4万9197.40€
付加価値税(19% VAT):9347.51€
装備車両の合計価格:5万8545€
















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