文と写真●Believe Japan
ドイツ中西部ヘッセン州に本社がある「EDAG(エダック)」は、自動車エンジニアリングの世界的企業である。その福祉車両架装部門の展示ブースで見かけた車いすの格納システムは、今日ヨーロッパのスタンダードともいえるタイプだ。折り畳み式の車いすを運転席側の後部座席に格納するというもので、展示されているフォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアントは、通常のヒンジドアがスライドドアに交換されている。
シンプル極まる車いすの格納
電動スライドドアが開くと同時に車いす用のフックがせり出してくる。そこに折り畳み式の車いすを取り付ける。
運転席にあるボタンを押すと、車いすは車内に向かって電動で格納されていく。かかる時間はおよそ「12秒」といわれるが、実際に目にすると驚くほど早く、またスムーズな印象だ。
車いすが車内に格納されるとスライドドアが閉じて完了となる。
後付けとはいえ、スムーズに作動するスライドドア。
EDAGのエンジニアは、車いすが安全に格納されることはもちろん、クルマの外観が変わらないようにコンパクトな設計を心がけて開発したという。車いすを格納することにより左側後席の乗車はできなくなるが、ラゲッジスペースへのはみ出しも最小限で、機能性も高く保たれている。
ヨーロッパではよく見かけるスタイル
日本ではほとんど見かけないこのタイプは、市販されたクルマに後から取り付けることができるのが魅力。車いすを素早く格納することができるため、ドイツをはじめヨーロッパではポピュラーなスタイルとなっている。
EDAGでは、ゴルフやポロ、トゥーラン、パサートといったフォルクスワーゲンを中心に、アウディ、シュコダ(チェコ)、BMW、オペル、フィアット、ルノーフォードなど多岐にわたるブランドの車両に対応している。
対象車種かどうかは電話やメールで問い合わせ、適合している場合、それぞれのディーラーで取り付けが行われる。システムの構造はとてもシンプルで、取り付け作業自体は約15時間で終了するという。価格は1台あたりおよそ7000〜1万ユーロ(93万〜133万円、2017年11月現在)。
EDAGの車いすの格納システムは、1989年に市販されてから改良を重ねている。現在、左ハンドルで左側後席から格納するタイプのみを扱っているが、これは左ハンドルの輸入車も走る日本の道路にも適合し、左側からの車いす格納も都合がよい。
「EDAGは大きな企業ですが、この福祉車両架装部門はとても小規模です(笑)」と語るマーケティング担当のヴェレナ ヴィーガンドさん。今後は日本の自動車メーカーも含め、さらに大きく展開していきたいとしている。
クルマに着いてから、トータルおよそ35秒で発車できるというEDAGの格納システム。電動でリフトアップしてラゲッジルームやルーフボックスに格納するタイプは日本の福祉車両でも見かけるが、こちらはヨーロッパらしくシンプルで合理的なシステムといった印象だ。
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