文●Believe Japan 写真●Believe Japan、Avant Tecno、AUTOLIFT、Di Blasi
40年の節目の年を迎えた欧州最大の福祉機器展「REHACARE(リハケア)」。そのメインスローガンは「自立した生活」で、そのメインテーマはやはり「モビリティ」であった。今回は、フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツなど自動車メーカーの出展はなかったが、架装メーカーや電動小型モビリティ、車いすメーカーのブースが大いに賑わいを見せていた。その中から斬新な製品を主に紹介してきたが、ここではそれ以外に気になった展示をまとめて紹介する。
車いすユーザーのための農機「AVANT(アバント)」
日々の移動を快適にするモビリティが多いなか、異色ともいえたのがこの「AVANT(アバント)」。車いすの方でも「農作業ができる!」という農機の福祉車両である。フィンランド南部のユロヤルヴィ(Ylöjärvi)に本拠を構える小型農機メーカー「アバント テクノ(Avant Tecno)」は小型のフォークリフトを主に生産し、ドイツ、イギリスをはじめ40カ国以上で販売する大手である。今回展示されていたのは、車いすユーザーを対象とした回転シート仕様で、座席は電動で昇降する。比較的シンプルな作りだが、スムーズに農機に乗り込み、操縦できてしまうのだ!
手のみで操作できるように作られていて、車両後部には折り畳み式の車いすをかけることができる。
運転席の後ろにバッテリーを搭載するEVの設定もある。このモデルは充電器が装備され、エコかつ騒音の出ない農機として人気があるという。多目的ローダーは農業や造園、除雪、建設作業など幅広く対応している。
リフト、スロープを後付け!「AUTOLIFT(アウトリフト)」
車いす乗車にとって、なくてはならないスロープやリフトを専門に扱うのが、北イタリアのマントヴァにある「AUTOLIFT(アウトリフト)」だ。ヨーロッパ全土で乗用車はもちろん、市バスやスクールバス、救急車、警察車両などにリフトを供給する大手メーカーは、今回のREHACAREでリヤとサイドに取り付ける電動リフトを展示していた。後席向けの車いす用サイドリフトは床下に収納されるが、燃料タンクや排ガスシステムに干渉しないように設置される。最大荷重は300kgで重量のある電動車いすにも対応している。
リヤからアクセスするタイプのリフト。手すりが安心感を高めてくれる。
AUTOLIFTではプール用のリフト「I-SWIM」も製作する。座席部分が本体よりも下がり、ユーザーは安全快適にプールにアクセスできるようになっている。リフトが上がり、ユーザーがプールから上がると、介助の方が車いすのように押して移動することができる。ユーザーの制限体重は136kgだ。
ちなみに、ヨーロッパでは「リヤ」のリフトが、「サイド」よりも若干多く販売されているという。
5秒で畳める電動スクーター「Di Blasi(ディブラッシ)」
自転車や車いす、さらには電動車いすまで、折り畳みタイプの製品は多い。しかし、Di Blasi(ディブラッシ)の電動スクーターほど素早く畳めるものは多くないだろう。その時間は約5秒。また折り畳み時のサイズは、長さ:61.5 cm、幅:38.5 cm、高さ:49.5 cm。最小回転半径も58cmと、狭い場所での取りまわし性も抜群だ。
シンプルな3輪スクーターは舗装されていない道や急な坂道(最大勾配11%)でも走行でき、満充電で20km以上移動走れる。最高速度は6km/hだ。
重量はバッテリーを入れて26.5kg。オプションのキャスターを装着すると、電車やバスなどの公共交通への持ち運びもできる。
イタリア空軍を退役したパイロットのディブラッシ氏、1952年に折り畳みタイプのスクーターを開発しはじめたのが、Di Blasiのはじまり。イタリアのシチリアに本社をおき、今日、折り畳み自転車、モペッド、電動スクーターをヨーロッパ全土で販売する大手メーカーとなっている。
日本では、自動車メーカーの多くが「完成車」としての福祉車両のラインアップを充実させているのに対し、ヨーロッパではアフターパーツが豊富に販売され、今乗るクルマを「福祉車両にカスタムする」という考えが主流になっている。世界39カ国から780社を数える出展があった今回のREHACAREは、移動に関しても非常に個性的な展示が多く、多種多様なモビリティが提案されていた。
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