文●Believe Japan 写真●Believe Japan、BRODA
アメリカの「Medtrade(メッドトレード)」は、ドイツのREHACARE(リハケア)、日本の国際福祉機器展と並ぶ世界3大福祉機器展で、春と秋の年2回開催される。REHACAREや国際福祉機器展と比べ、プロフェッショナル向けの性格が強く、多様な医療機器や介護機器が展示されたブースでは、世界中からバイヤーが訪れ、商談が熱心に行われていた。今回訪れたのは3月にラスヴェガスで開催された「春」の開催であるが、ここでは、目についたモビリティ関連の機器を紹介していこう。
まずは、ミズーリ州のセントルイス近郊にある医療介護用のチェアメーカーである「BRODA(ブローダ)」のポジショニングチェア。BRODAは35年以上にわたり、車いすユーザーの多くが悩みを抱える「疲れ」や「痛み」の緩和にフォーカスし、あらゆる姿勢に対応する機能性の高い車いすの開発を行なっている。
独自に開発した「チルト・イン・スペース・ポジショニング・チェア」は、とりわけ長期間にわたる介護を必要とする方に向けて、高いレベルの快適さを提供している。
床ずれの予防
特徴的なのは、着座部分の「熱」と「水分」を適切にコントロールし、ユーザーの皮膚表面の負担、ダメージを軽減する「コンフォート・テンション・シーティング(Comfort TensionSeating®)」。これは1981年から製品化されているBRODAの特許技術で、ストラップ構造を採用することにより、空気の循環を可能にし、熱と湿気が蓄積しないように設計されている。さらに、ユーザーごとの身体にフィットし、シートにかかる圧力(体重)が広く分散するようにデザインされている。また、ストラップはユーザー個人ごとの大きさや重さに合わせて調整することができ、それぞれの人にフィットし、重大な感染症などを引き起こす「床ずれ」の防止に有効な車いすとして評価されている。
ストラップは、その他多くのクッション素材と異なり抗菌素材で、傷んだ場合も、その部分を切り取って交換するだけなのでメンテナンスが非常に手軽だという。
また、もうひとつの特徴は、「チルト・イン・スペース・ポジショニング・システム」を多くのモデルに取り入れていることだ。レバーを引くことで手軽にリクライニングできるこの機能は、座面を後方に傾斜させることで、座る方の姿勢を安定させるというもの。より広い面積でチェアに接触するため、圧力が集中することもなく、血流も良好になるという。それが、やはり快適性の向上や床ずれの防止につながるのである。
状況に合わせて、シート部分全体を38度までチルトすることができる。
シートバックは90度リクライニング可能で、シートを完全に寝かせることもできる。休憩や車両での移動時にも便利だ。
水平な2本のバーだけで手軽にチルト、リクライニングできる。
BRODAの車いすは、個人ユーザーのほか、北米の病院や長期療養施設、老人ホームでも広く使用されているという。「ニューヨークにある病院では、数年前にBRODAのチェアを導入して以来、床ずれによる皮膚のトラブルがなくなったという報告もあります」と語るマーケティングマネージャーのニック・ホフマイヤーさん。
BRODAでは、適切なチルト機能を使って正しい着座姿勢を保つことで、呼吸器系や消化器系の生理学的なプロセスが改善すると考えている。そしてホフマイヤーさんはまた、「正しい姿勢で座ることで、一日のなかで座っていられる時間が伸びます。すると、もっと遠くに出かけられたり、より多くの人たちと交流できるようになります。日常の生活がよりアクティブに変わり、介護レベルも軽減できます」と、そのメリットを説く。
製造はカナダ東南部のキッチナーで行われているBRODAのチェア。リクライニング機能を持つタイプは、北米地域では65万円ほどで販売されている。
コンフォート・テンション・シーティング・システムはシャワーチェアにも活用されている。ストラップが滑ることなく身体を支えてくれる。
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