文と写真●Believe Japan
ドイツのデュッセルドルフで開催された世界有数の規模を誇るリハビリと福祉・介護機器展「REHACARE(リハケア) 2019」から、イノベーティブな福祉機器を紹介する。
ヨーロッパでは、できることは自分でやりたいという自立心が強く、そのため車いすユーザーが自分で運転するための福祉機器が充実している。また、専門の福祉車両よりも、既存の普通車を福祉車両へと改造するコンバージョンタイプが多いのも特徴。一方で、これまでの機器はシンプルな手動式が多く、安価で頑丈というメリットはあったものの、体力の衰えたユーザーや小柄な体格のひとにとっては、大きな力が必要というデメリットもあった。しかし、そんなヨーロッパの状況も近年変わりつつあるようだ。
長年、油圧シリンダーによる車いすリフトを手がけてきた「WEERSINK(ウィーシンク)」(https://www.weersink.nl)が提案するのは、車いすの出し入れと車両への乗り込みを劇的に快適にしてくれる「ミニリフト&回転リフト」システム。
これは、運転席に移乗するリフトと車椅子を収納するリフトで構成されるもので、後席スライドドアを持つ車両に取り付け可能。ヨーロッパの15カ国以上とアメリカで特許を取得しているという。従来では乗車するのに非常に時間のかかったミニバンのようなクルマであっても、非常に短い時間で、なおかつ力を必要とせずに乗降できるのが特徴だ。同社のYouTubeアカウント(https://www.youtube.com/channel/UCrPhJuLe7HAWytLNTmvEKXQ)では、わずか30秒以内で乗降する模様が公開されている。
実際に、同社の代表を務めるRené Weersink氏自らが実演してくれた。
まずは車いすからミニリフトへ移乗し、車いすを回転リフトにセット。そしてリモコンのスイッチを押すと、車いすは自動的に車内に入り固定された。続いてミニリフトをリモコン操作で持ち上げる。すると運転席と同じ高さになるので、力をほとんど使わずに、座る位置を少しずらすだけで運転席への移乗が完了した。これまで腰掛けていたミニリフトは折り畳まれ、シート下部のヒンジで固定され、邪魔になることもない。ここまでの動きがスピーディでじつに滑らかなことに驚いた。
「ミニリフトによって、運転手はまるで座席に吸い込まれるように、運転席のよい位置に収まります。ミニリフトは不安定に見えるかもしれませんが、座席の前端にはかなり大きな曲線があり、ドアとBピラーをしっかりと握っていれば、実際には快適に座ることができる状況です。2〜3回練習する必要がありますが、すぐに慣れるはずです」。
車いすユーザーからは、車いすの収納は身体への負担が大きく、また心理的にもあまりその姿を長く見られたくないという声をよく聞くが、このシステムにはそのどちらも解決してくれる革新性がある。費用は工賃込みで約100万円とのこと。日本での展開はまだ未定とのことだが、ミニバン王国の日本にこそ、「ミニリフト&回転リフト」システムは受け入れられるニーズがあるに違いない。
車いすを収納する回転リフトのユニットは、およそシート1座席分のスペースを使う。
操作はリモコンで完結。車いすを車内に収納する負担と時間が節約できる。
ミニリフトによって、ドライバーズシートの高さまでスムーズにアプローチ。
スロープを使わずに車いすを収納する「ロールポール」は「WEERSINK」の看板商品。
油圧シリンダーによる車いす収納システムなどこれまで数多くのイノベーションを実現してきた「WEERSINK」代表のRené Weersink氏。
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