文●石井昌道 写真●Believe Japan 2022/3/11(金)配信 ホンダは手動運転補助装置付き自動車のテックマチックシステムを1976年、足動運転補助装置付き自動車のフランツシステムを1982年に発売を開始している。手動運転補助装置付き自動車は他メーカーのモデルも含めて複数回の試乗経験があり、いまではスムーズに運転できるようになっているが、昨秋に初めて試乗したフランツシステムは少し戸惑った。右足によるアクセルとブレーキのペダル操作は何の問題もないものの、ウインカーなどのスイッチ操作も兼任しなくてはならない。また、左足によるハンドル操作は、普段はあまり使わない動きだったこともあって慣れるのに時間がかかった。 今回は2回目の試乗。操作方法はわかっているうえ、左足の動かし方もイメージできていたので、落ち着いて走りだすことができた。 まず、乗り込むには右足のつま先をドアノブに引っかけてドアを開けながら、身体を入れ込めるようにある程度は手前に引いていかなければならないのだが、これがまた難しい。片足立ちで不安定になってしまう。ただし、フランツシステムを相棒にしようと本気で挑む人のほとんどは、こういった操作には慣れていて難なくこなしてしまうそうだ。 試乗車はオプションのパッシブシートベルトが装備されているので、シートに座れば自動的にシートベルトが装着できる。 無事にシートに収まった後に走り出すには、まずシステム始動およびシフトレバーを操作するために、ブレーキペダルを踏み続けた状態にする必要がある。そのために、ブレーキペダル上方にロック用ボタンがあり、これを押しながらペダルを踏み込めばロック状態に。そして右足でPOWERボタンを押し込んでシステムが始動。そのまま、足用シフトペダルでDレンジを選択し、ブレーキ・ロックを解除すれば走り出せる。 現行フィットは電子制御パーキングブレーキが採用されているので、ブレーキ・ロックを解除しても停止したままだが、アクセル・ペダルを操作することで自動解除され、クリープで動きだす。アクセルとブレーキの操作は、ノーマル車両と同様なので何も問題ない。 ハンドル操作は左足で、自転車のペダルのように縦回転させて行う。下に押し込むときは力が入りやすいが、上に引き上げるときはちょっとだけやりづらさがある。普段はあまり使わない筋肉を動かしているからだが、これは慣れの問題であり、2回目の試乗で勝手はわかっていたので、今回は戸惑いがほとんどなかった。 前回は、普段は手でハンドル操作している自分にとって、足による操作は大雑把になってしまうのではないかという心配があって慎重になりすぎ、それが操作遅れを誘発していた。また、四つ角を曲がるときやUターンのときなど、ハンドル操作量が多いときにも慎重だったので操作が遅かったが、今回は緩いカーブでは繊細に、操作量が多いときは大胆にとメリハリをつけるようにしていったら、上手に動かせるようになり、クルマとの一体感がでてきた。操るのが楽しいと感じられるようになったのだ。 運転しながら足用コンビネーションスイッチを操作することもマスターしなくてはならない。頻繁に使うウインカーは、慣れてくれば左はつま先でブレーキペダルを踏みながらかかとでポンッと押し込めるので楽に操作できる。MTでスポーツ走行するときのヒール&トーと同じ要領だ。ところが右は距離が離れているのでブレーキペダルを踏みながらの操作は無理。道路交通法では右左折や転回する地点の30メートル手前でウインカーを点滅させることになっているので、右折時にはアクセルペダルもブレーキペダルも操作しない空走状態で右足でウインカースイッチを押し込む必要が出てくる。余裕があれば可能だが、そうではないシチュエーションも出てくる。そんなときは交差点で一時停止してブレーキ・ロックを使い、ウインカーを操作、ブレーキ・ロック解除して走りだすことになる。自車を安全に走らせるには仕方ない緊急回避だろう。手順はちょっと煩わしく、最初のうちは頭で考えながらゆっくりと操作していたが、慣れてくるとほぼ無意識で素早く操作できるようになった。 足用コンビネーションスイッチは、個々のドライバーの好みや操作のしやすさに合わせて9パターンが用意されており、購入時に選択できるようになっている。 2回目の試乗にして、早くも慣れてきてフランツシステムが頼もしい相棒になってきた。ノーマルの市販車をベースにモディファイしたシステムなので、すべてが完璧というわけではないが、自らの意志で移動の自由を獲得したい、運転の喜びを味わいたいという思いが強ければ、問題なく使いこなせるだろう。安全運転を支援するHonda SENSINGも性能が向上してきているので心強い(過信は禁物だが)。運転操作を覚えるのに多少のハードルはあるが、マスターしたときの喜び、得られる価値は大きいはずだ。 自動車ジャーナリスト 石井昌道 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転にも参加する自動車ジャーナリスト。幅広い視野と知見で的確な評論を行う。 ※撮影車両には、一部オプション装備が含まれています。 ホンダ... ...
On 2022年3月11日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/11/13(土)配信 11月10日~12日にお台場で開催された国際福祉機器展で、おもしろい1台を発見したのでご紹介したい。それは、ホンダN-VANをベースにした「車いす移動車」のコンセプトモデル。制作したのは、身体障がい者用の自動車運転装置(フジコン)を長年開発し続けているフジオート。これまでも運転でハンディになる部分を補う各種装置(手動装置/左アクセル/ステアリンググリップ/左ウインカー/右ワイパー/シフトレバー/アシストグリップ/延長ペダル/足動装置など)を市場に送り出している、福祉車両装置開発の老舗だ。 今回のN-VANコンセプトのポイントは以下の3つ。 【車いすのひとが一人で運転できる自操式車両であること】 車いすに乗ったまま運転席の近くまで移動。車内で運転席に移乗して、自身で運転できる仕様となっている。バックドアに備わる電動リフトから、リモコンを使って乗り込むという設計だ。そして、助手席の位置まで車いすで移動し、運転席に移乗。展示車両は移乗のしやすさを重視して。コラムタイプの手動運転装置が取り付けられていた。 【軽自動車のリフト付き車いす移動車であること】 プラットフォーム長1000mmの専用小型リフト(耐荷重150kg)を開発。定員は4名(運転席、助手席、右セカンドシート、車いす)、実際に車いすのひとが運転する場合は3名となることを想定。 【避難時仕様であること】 昨今の非常時に備え、車いすのひとが一時的に避難したいときに少しの間生活できるような装備を設置。テントや簡易トイレ、机、ドリンクホルダー、小型シンクなどが備わっている。 「キャンピングカーブームや優れたユーティリティを誇るN-VANからヒントを得ました。今回この福祉機器展でみなさんにさまざまな意見や感想を伺い、将来的に販売を実現していきたいです」と話を伺った。 まだコンセプトモデルのため具体的な車両価格は出ていないが、リフトの搭載費用として改造費80万円~となるとのこと。いづれにしても、見ているだけで、話を聞いているだけでワクワクさせてくれる1台だった。 フジコン公式サイトhttps://www.fujicon.co.jp ...
On 2021年11月13日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/7/8(木)配信 家族の介護など、ある日突然必要になることが多い福祉車両。しかし、車いすが必要になった家庭では、家のバリアフリー化に加え福祉車両をすぐに購入するのは、やはりハードルが高いだろう。そんなとき、思いのほか便利なのが「必要なときに借りることができる」レンタカーの存在だ。実際、筆者の知り合いも週に一度レンタカーを借り、親御さんを病院に送迎しているひとがいるが、レンタカーの魅力を「介護タクシーでは親も気疲れするし、家族だけの空間で移動することは気分転換にもなり、とても楽しい一時になる」と語っている。 そんなわけで、我々も実際に借りて試すことにした。今回は車種が豊富なことからトヨタレンタカーに注目。トヨタでは「ウェルキャブ」という名称を使用しているが、「車いす仕様車」だけでも、シエンタ、エスクァイア、ノア、ヴォクシー、ヴェルファイア、ハイエースが選べ、車いすを使わないまでも足腰に不安がある方向けの「サイドリフトアップシート車」、「助手席リフトアップシート車」、「助手席回転スライドシート車」、「サイドアクセス車」を選ぶことができるのだ(店舗によるため、それぞれ確認が必要)。 チョイスしたのは「ウェルキャブ」レンタカーのなかでも人気だというシエンタ。コンパクトサイズなので取りまわし性に優れ、料金もリーズナブル。こちらを事前に予約しておき、当日店舗に向かった。手続きは、拍子抜けするほど簡単だった。そう、福祉車両のレンタカーといっても、借用方法は普通のレンタカーとまったく同じ。唯一必要なのは、車種ごとに異なる使い方を教えてもらうぐらいなのだ。今回、我々は使用する車いすを持ち込んで説明を受けたが、車だけ受け取って自宅で初めて車いすを載せようという人は、ここでしっかり説明を聞いておくことをオススメしたい。 そして借り出したあとは、楽しいドライブへ!と言いたいところだが、ここで福祉車両の運転方法をあらためてお伝えしたい。それは、「急がつく操作はとにかく避けるべし」ということ。車いすの固定は専用金具等でしっかり行われているが、車両に備わっている通常のシートとは根本的に取り付け剛性が異なるため、たとえばドライバーがいつものペースでコーナーを曲がっていても、車いすに乗っているひとには大きな負担になることが多い。それではせっかくのドライブも楽しめなくなってしまう。得てして、乗せてもらう人は「快適ですよ、大丈夫ですよ」とドライバーを気遣うことが多いから忘れがちになるが、ここは気持ちを切り替えて、どのような状況でも丁寧な運転を心がけよう。これさえしっかり守れれば、楽しい時間を過ごせるはず! 今回は主に体験するのが目的のため短時間の利用だったが、これだけ気軽に借りることができるなら、利用価値は十分にあることが実感できた。冒頭に知り合いのコメントを記したが、介護タクシーとの使い分けでもいいし、購入前に車両の使い勝手を確かめるという点でも、大いに試してみる価値があると思う。 借用手続きは通常のレンタカーとまったく同じ。そして、意外と知られていないのが「ウェルキャブ」利用時は基本料金が非課税になることだ(一部車種・仕様を除く)。また、標準車の基本料金を割引してくれる「福祉割引」という制度もある(身体障がい者手帳、療育手帳の提示が必要)。 借用したシエンタは、ナビ・ETCが搭載され、使用にはまったく不都合なし。6時間の一般料金で合計8650円(基本料金=7000円、免責補償料=1100円、添付品料金=550円)の支払いだった。 車両の取り扱い方法を説明をしてくれた権正拓也さん。「操作がわかりやすいのがトヨタウェルキャブシリーズの特徴ですが、車種ごとに異なる箇所やポイントがあるので、それらをしっかり説明させていただきます」と、慣れた感じでシエンタの操作方法を教えてもらった。 トヨタレンタカー羽田空港店 今回車両を借りたのは、羽田空港からほど近い環状八号線沿いで京急空港線大鳥居駅から徒歩1分にある「羽田空港店」。リニューアルして間もないという店舗はビル内にあるため、天候を気にせず取り扱いの説明を受けることができる。 問い合わせ:トヨタレンタカー https://rent.toyota.co.jp ...
On 2021年7月8日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/4/15(木)配信 福祉用具の活用で、障がい者の自立支援や安全・安心な介護の実現を目指すアビリティーズ。今回彼らが独自輸入したビリーヴカー(福祉車両)を試乗することができたので、ご報告したい。 車両は「フォクルクスワーゲン キャディ マキシ」。このクルマは欧州ではかなりポピュラーな存在で、商用利用を目的としているだけに、ガッチリと作られているのが特徴。実際、現地では宅配サービスや花屋さん、警察や工事現場など、あらゆるところで活躍している。ちなみに、5人乗りのスタンダードボディと7人乗りのロングホイールベース版があり、後者は「マキシ」と呼ばれている。そして、この車両をイタリアのフォカッチャグループがビリーヴカーとして架装した「ジニアスランプ(5名+車いす1台)」が、今回試乗したモデルである。 導入の背景を、販売責任者である中村さんに伺った。 「日本には優れた福祉車両がたくさんありますが、単体重量で200kgにもなる電動車いすを載せることができる車両となると、主に施設が使用するリフト型に限られてしまいます。そこで、もっとファミリーユースに適したモデルはないかと検討し続け、最終的にこのモデルを輸入することに行き着きました」。 この車両は右ハンドル仕様で、スリーサイズは全長4850mm×全幅1793mm×全高1868mm。経済的な直列4気筒2Lディーゼルターボで、トランスミッションにはツインクラッチの6速DSGが搭載されている。「耐荷重300kg、車いすを載せないときのスロープの床面収納、そして、故障リスクの少ない手動式にこだわりました」と中村さん。事実、日本ではスロープに電動式が採用されることがほとんどだが、欧州では、手動式が選ばれることが多い。 早速、高速道、一般道をじっくり走らせてもらったが、素直に運転しやすい!というのが第一印象。運転席からのボディの見切りがいいことに加え、1800mm以下の全幅だから、コンビニやちょっとしたところでの駐車でストレスがない。また、2Lディーゼルターボと6速DSGとの組み合わせも絶妙で、アクセルを踏み込めば1810kgの車重をグイグイと加速させる。このDSGは、ある程度車速がのったときにコースティング機能が働くため(アクセルをオフにするとニュートラルに入る)、さらなる燃費性能も期待できそうだ。 そして、次に関心したのが優れたボディ剛性感。とくに高速走行中にはステアリング、シート、ボディがひとつの塊としてしっかり体に伝わってくるので、疲労感が少ない。これは、制限速度無制限区間のあるアウトバーンがある、ドイツ車ならではの美点だろう。あらためてクルマというのは基本的なところがいかに重要か感じ入った。 最後は気になる後席についても触れておきたい。担当したスタッフは「広さと開放感がある」ところが美点。あえてデメリットをあげてもらうと「運転席との会話は十分できるが、遮音性がさらにアップすると魅力が増す」という感想だった。 車両価格は600万円(消費税免除)。納車後の点検整備は、日産自動車販売株式会社が行うという。既存の大型国産ミニバンに電動車いすを載せる加工をすると、800万~1000万円近くすることもあるというだけに、コストパフォーマンスに優れた1台だと思うが、いかがだろうか。 アビリティーズの問い合わせ先:https://www.abilities.jp/blog/event/caddy_maxi_Presentation20210416 ...
On 2021年4月15日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●ホンダ 2021/3/9(火)配信 今日、「家族に高齢者がいる」、「乗り降りがしんどい」など、アクセスが便利なクルマを必要としている潜在的なユーザーは少なくない。それに応えるビリーヴカー(福祉車両)は、設定車種が大幅に拡大され、趣味やライフスタイルに合った車種選びも可能になってきている。しかし、買い替えコストや「自身で歩くことができる」などの状況によって、ビリーヴカーを購入するまでに至らないケースもあるだろう。多くの場合は、できれば後付けのパーツで、手軽にクルマを便利で安心なものにしたいと考えているのではないだろうか。 アクセサリーといえば、エアロやアルミホイール、LEDランプなどドレスアップ方向のパーツをイメージしがちだが、じつは高齢者にやさしいパーツがたくさんあるのをご存知だろうか? これらのパーツは、高齢の家族と暮らしていればもちろん、そうではなくても、広く一般的に使えるアクセサリーであったりする。手軽なカスタムを可能にするアクセサリーには数々の製品がラインアップされている。今回はその中から、ホンダ車に注目。実際にどのようなアクセサリーがあるのか見てみたいと思う。 幅広い年代のファミリー層から高い人気を集める「N-BOX」や「フリード」、「ステップワゴン」、そして「オデッセイ」には高齢者ユーザーのクルマ移動を快適にしてくれるアクセサリーが豊富に用意されている。 つかめる安心感 足もとに不安があると、どこかにつかまる必要がある。ビリーヴカーでは、一般車にはない場所にさまざまなグリップが取り付けられている。あらゆるタイプがあるが、ここでは代表的なものを一部紹介する。 [シートバックグリップ(N-BOX、フリード、ステップワゴン )] 横に広くつかみやすいタイプの乗降用「シートバックグリップ」は、乗り降り時と車内での移動に便利だ。アクセスを簡単で安全にしてくれる。価格は1万780円(税込み)。 [フロアグリップ(フリード、ステップワゴン)] 助手席の座面横に取り付けられた「フロアグリップ」は、しっかりとつかむことができ、クルマの乗降時に加え、走行中の姿勢安定にも効果を発揮する。多くの人にとって便利な優れものである。本体とグリップパッドの合計価格は2万6950円(税込み)。 [吊革グリップ(N-BOX、フリード、ステップワゴン、オデッセイ )] 山道を走行する時など、後席に座る人は上半身を前に乗り出し、サイドウインドウの上に取り付けられたグリップをつかんでいることが多い。ところが、体格や年齢などによっては、腕を上げている姿勢はかなりの負担になることもある。そこで、通常のグリップを「吊革(つりかわ)」タイプにしてしまうアクセサリーが「吊革グリップ」だ。腕を高く上げる必要がなく、ラクな姿勢でしっかりと握ることができる。使用しないときは巻き上げ可能で、視界の邪魔にならない。価格は5280円(税込み)。 [ドリンクホルダーグリップ(フリード、ステップワゴン)] ダッシュボードのドア側に設置されたドリンクホルダーは、丁度よい取手としてつかみながら車内に乗り込む場合もあるが、これをつかみやすい「グリップ」にしてしまうアクセサリーがある。腕を上げなくても手がかけられる高さにある「ドリンクホルダーグリップ」は、価格は9350円(税込み)。 みんなに優しい装備 高齢者や歩行困難な方だけでなく、多くの人にとっても「あれば便利」なアクセサリーもある。 [テールゲートストラップ(N-BOX、フリード、ステップワゴン、オデッセイ )] 車高が高めのクルマの場合、リヤゲートを開けるのは問題ないが、閉めるときにドアが届かないという場合がある。つかみやすく、ラクに閉められる「テールゲートストラップ」は背が届かない、腕を上げにくいといったユーザーにとって優しいアクセサリーだ。価格は1100円(税込み)。... ...
On 2021年3月9日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/2/12(金)配信 ホンダの上級ミニバン「オデッセイ」が、昨年末に大幅マイナーチェンジを実施。それにともない、車いす利用の方や足腰の弱い高齢の方に便利な「サイドリフトアップシート車」と「助手席リフトアップシート車」も新しくなった。 新型オデッセイが目指したのは、『さらなる上質さと心地よさの向上』。厚みのあるフロントマスクの採用で外観はグッと迫力を増したが、むしろ注目すべきは、既存ユーザーから徹底的にヒアリングを行い見直したという、その中身だろう。 たとえば、インテリアではインパネまわりが全面的に変更され、ナビゲーションパネルの大型化(10インチ)やコンビメーターの形状変更、手の触れやすい位置へのソフトパッドの配置、収納式ドリンクホルダーの追加、インパネアッパーボックスをリッド付きにするなど、ユーザー目線で変更されている。 また、静粛性を高めるべくフロントドアガラス/スライドドアガラスの遮音化、テールゲートガラスの板厚アップに加え、ノイズリデューシングホイールも採用するという徹底ぶり。安全運転支援システム「ホンダセンシング」では、後方誤発進抑制機能が新たに加わった。 オデッセイの回転シート車には、「サイドリフトアップシート車」と「助手席リフトアップシート車」があるが、これは車いす利用の方(もしくは足腰の弱い高齢の方)がどちらに座って移動したいかで決まることが多いという。つまり、家族内で相談しましょうというわけだ。ユーザー目線で言えば、選べるところがありがたい。 今回試乗したのは、新たにアブソルートに設定され、2.4Lガソリンエンジンを搭載した「サイドリフトアップシート車」。市街地、高速道に加え、ちょっとした山道でも試したが、全行程でドライバー、2列目シートとも落ち着いて乗れる1台に仕上がっていた。この「落ち着いて乗れる」ことは、通常のクルマに加えてビリーヴカー(福祉車両)にとっても非常に重要なチェック項目。リラックスできる環境であれば、おのずと笑顔も増えるもの。 現在、この車格で選べるビリーヴカーはさすがに少ない。快適性の話はベースとなるクルマそのものに起因する話ではあるが、今回改めて、車いす利用の方や足腰の弱い高齢の方に、オデッセイはやさしいクルマだと感じた。 ホンダ オデッセイ アブソルート サイドリフトアップシート車 FF/7人乗り(CVT) ■全長×全幅×全高:4855×1820×1695mm■ホイールベース:2900mm■トレッド前/後:1560/1560mm■車両重量:1830kg■エンジン:直4DOHC■排気量:2356cc■最高出力:175ps/6200rpm■最大トルク:23.0kgm/4000rpm■サスペンション前/後:マクファーソン式/車軸式■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク■タイヤ前/後:215/60R17 ■車両価格:363万4000円(消費税非課税) 関連リンク:ホンダ福祉車両(https://www.honda.co.jp/welfare/) ...
On 2021年2月12日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/2/9(火)配信 先日デビューした「マツダMX-30 EV MODEL」は、マツダの新しい歴史を刻む1台。フリースタイルドア(観音開きドア)を採用した独創的なスタイリングとEVならではのスムーズな走りのコンビネーションは、「クルマってまだまだ楽しいな」と素直に思わせてくれる。そして、驚いたことにこのクルマには、新しい福祉車両がスタンバイしている。 正式なデビューはこの秋ということで、触れることができたのは試作段階の車両だが、その印象をお伝えできればと思う。 じつはマツダの福祉車両の歴史は古く、59年前に市販された「R360クーペ」の手動運転装置付車が最初の1台となる。以降、スロープ式車いす移動車などを手がけ、現行モデルでは手動運転装置付車「ロードスター/ロードスターRF」、助手席回転シート車「マツダ2」、リフトアップシート車「CX-5」、車いす移動車「フレアワゴン」がラインアップされている。 今回の「マツダMX-30 EV MODEL」の福祉車両は、福祉車両という枠組みではないモデルとして成長させたいとの思いから、「Self-empowerment Driving Vehicle」との名称が与えられた。大きな特徴と言えるのは、アクセルにリング式を採用していること。日本では、これまで自操式車両というとAPレバー式(左手でアクセル/ブレーキ、右手でステアリング)が定番だったが、リング式(左手でブレーキ、両手でアクセル)だと両手でハンドルを握ることができ、自然な姿勢で運転できることはもちろん、運転中にドリンクを飲むこともできる。 欧米ではわりとスタンダードなリング式。これまで日本でもパーツを海外から取り寄せ、専門的なショップで自車に取り付けるといったことは行われていたが、自動車メーカーのラインアップとして登場するのは初めてのこと。ちなみに、このモデルはすべてマツダ内製とのことだから、いかに力を入れて開発しているのかがわかる。 また、見逃せないのが世界初という運転切替機能。たとえば家族とのドライブで、行きは身体の不自由な方、帰りは健常者の家族といったように、簡単に切り替えることができるのだ。 敷地内を少しだけ走らせてもらうと、アクセル/ブレーキ操作に関しては、すぐに慣れてしまうほど運転しやすいことがわかった。この馴染みやすさは、あきらかに両手でステアリングを握ることができるから。ブレーキが必要なタイミングでは、スッと左手をレバーに添えればいい。車庫入れのシーンなどで車両をバックさせる際は、レバーでブレーキを固定させ、シフトチェンジしてからブレーキを解除するという手順のため、少しだけ慣れが必要かもしれないが、難易度は高くない。 マツダでは、今回EVモデルにこの「Self-empowerment Driving Vehicle」を設定した理由を、「スムーズな走り」と「自宅で充電できる手軽さ」を強調する。たしかに、セルフがメインとなったガソリンスタンドで、車いすでの給油作業はかなり面倒だ。気になる価格も企業努力の真っ最中とのことだから、楽しみに秋の正式発表を待ちたい。 ... ...
On 2021年2月9日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2020/9/11(金)配信 介助する側、介助される側、双方の立場になってビリーヴカー(福祉車両)をインプレッション! レポートするのは、介護経験があり自身も福祉車輌取扱士スペシャリスト資格を持つタレント・モータージャーナリスト 竹岡 圭。今回は、手動運転補助装置「Honda・テックマチックシステム」搭載の新型フィットをご紹介します。 ホンダ福祉車両:https://www.honda.co.jp/welfare/ ...
On 2020年9月11日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2020/9/10(木)配信 「~移動の喜びを一人ひとりに~」。ホンダはこの人間尊重の基本理念のもと、長年クルマを製造・販売しているが、福祉車両(ビリーヴカー)に関しても、その歴史はじつに長い。 現在、福祉車両には大きく分けて「介護車両(介護する側が運転する)」と「自操車両(補助装置を使って自身で運転する)」の2種類が存在するが、ホンダは後者の「自操車両」を、なんと1976年に誕生させていたのだ! 初代シビックに搭載されたのは、両下肢に障がいを持った方へ対応する手動運転補助装置で、「Honda・テックマチックシステム」と呼ばれるもの。その後、ホンダは両上肢に障がいを持った方へ対応する足動運転補助装置「Honda・フランツシステム」も1982年に完成させている。とくに足動運転補助装置は技術的にもハードルが高く、当時の営業スタッフが障がいを持つ一人の女性との出会いがきっかけとなり開発されたというが、その完成までの道のりは長く、まさしくチャレンジの連続だったという。 今回は、手動運転補助装置の「Honda・テックマチックシステム」をクローズアップ。新型フィット用に開発された「Honda・テックマチックシステム」は、e:HEV(イーエイチエーブイ)とガソリン車双方に装着でき、両足が不自由な方向けの「手動運転補助装置〔Dタイプ〕」、右足が不自由な方向けの「左足用アクセルペダル〔Bタイプ〕」、片手が不自由な方向けの「ハンドル旋回ノブ〔Aタイプ〕」、「左手用ウインカーレバー〔Lタイプ〕」がラインアップされている。 ちなみにこの手動運転補助装置。日本ではあまり見かけない印象があるが、欧州ではもっともポピュラーなビリーヴカーといえ、現地の福祉関連イベントの駐車場ではかなりの台数を見かける。地理的な問題はもちろんだが、できるだけひとの手を借りず、自立した毎日を過ごしたいという彼らの生活に根ざした必需品というわけだ。 話は戻って、撮影車は「手動運転補助装置〔Dタイプ〕」に「ハンドル旋回ノブ〔Aタイプ〕」が装着された仕様。運転補助装置と聞くと、なにやら複雑な機構がインテリアの雰囲気をガラリと変えそうなイメージあるが、写真を見てわかるように、じつにすっきりとキレイにまとまっている。とくに足元スペースは広く開放感にあふれていて、コントロールグリップの質感や剛性感も、後付け感がない。この違和感のなさに、長年積み重ねられたノウハウが感じられる。 早速試乗してみると、発進、停止、そしてステアリングのしっとりとしたフィーリングなど、新型フィットの魅力がまったく損なわれていないことを確認。動画レポートを担当した竹岡圭氏も、「思っていた以上に走りが楽しい!」を連呼していた (こちらはインプレッション動画をご覧ください)。 開発メンバーに話を伺うと、「基本的な機能や操作のロジック、耐久性などは自動車メーカーの名に恥じぬものに。また、実際には使用される方の状態にあわせた、いろいろな対応を行っています」とのこと。いまホンダには、実際に福祉車両を見て、試すことができるバリアフリーのお店「オレンジディーラー」があるのをご存知だろうか? ここでは介助士資格取得スタッフが常駐し、いろいろな相談ができるという(介護車両の展示はあり。今回のような自操車両は要相談)。そして、そのような心強いお店が全国に406拠店! もあるというから驚きだ。 車いす生活での移動の重要性は、あらためて語るまでもないだろう。モータースポーツでの活躍や航空業界への進出など、さまざまな分野で実績を積み続けるホンダだが、福祉車両(ビリーヴカー)も諦めないところに、そのチャレンジングスピリットを感じる取材となった。 新型FIT「Honda・テックマチックシステム」Dタイプ。外観は通常モデルとまったく同じだ。 開放感ある運転席まわり。フィットは2本スポークステアリングで、視覚的にもゆとりが感じられる。 このコントロールグリップで、アクセルとブレーキの操作を行う。とても剛性感が高くしっかりしたつくりで、ほかにもハザードスイッチ、ウインカースイッチ、ライトスイッチ(HI/LO)、ホーンスイッチが集約されている。また、〔Dタイプ〕は障がいのない方も運転できるように、コントロールグリップ固定する(機能を停止する)ねじ穴も装着されている。 ハンドル旋回ノブは、「ホーンなし」と「ホーン付き」が選べる。 撮影車には未装着だが、サポートアイテムとして、運転中にアクセルペダルやブレーキペダルを誤って踏むのを防止する「ペダル誤操作防止プレート(Dタイプ用)や、左足のみでアクセルとブレーキの操作が行える「左足用アクセルペダル〔Bタイプ〕」も用意されている。 シートは標準モデルとまったく同じだ。... ...
On 2020年9月10日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2020/5/22(金)配信 これまで海外では欧州、北米を取材してきた編集部だが、世界の福祉車両を見渡すと、いかに日本の福祉車両が充実しているかがわかる。このサイトの福祉車両検索でも新車ラインアップが探せるが、車種だけでも50種類以上。車種毎の異なる仕様も数えると、その数は約90種類にもおよぶ。もっとも、だからといって海外では福祉車両が消極的というわけではない。欧州も北米も所有しているクルマをカスタムメイドするという市場背景があるからだ。 しかし、これほど充実している日本の福祉車両ではあるが、重量のある電動車いすに対応する車種となると、残念ながらその数は非常にかぎられてしまうのが現状だ。 今回クローズアップするのは、そんな重量級の車いすもスマートに載せられる、新型ロンドンタクシー TX。 ロンドンタクシーといえば、1908年~という長い歴史を持つシックなブラックキャブで、来訪者に成熟した大人の英国を視覚で伝えてくる英国名物。 現在は、ボルボなども傘下に収めるGeelyホールディングスのLEVC(ロンドン EV カンパニー)となっており、そのLEVC社が新たに製造したのが、この「ロンドンタクシー TX」となる。このモデルの最大の特徴は、レンジエクステンダー付きEVであること。発電用の1.5Lのボルボ製3気筒エンジンがリチウムイオン電池に充電(急速充電にも対応)し後輪を駆動する。 導入のきっかけには、どういう背景があったのだろうか。自身も車いす生活の経験があるという、LEVCジャパン 経営企画室長の渋谷剛史さんに伺った。 「車いす生活のなかで痛感したのは、とにかくちょっとした移動が大変なこと。いまでこそ各地でバリアフリー化の声が高まり、事実進んではいますが、それでもまったく足りていないのが現状でしょう。となると、やはりクルマでの移動は必須。ところが、日本では最低限の移動はできても、心が満たされるようなクルマは見当たらない。私自身30年以上自動車販売に携わってきたのですが、この新型ロンドンタクシーTXなら、車いすでも気持ちよく移動ができ、利用するひとたちにも多くのメリットがあると確信しました」 ロンドンタクシーは、先代モデルでもユニバーサルデザインが採用されていて、新型のTXではそれらが進化している。彼らが考えるユニバーサルデザインのポイントは以下のとおりだ。 ●大きな開口部のドアと、ユニークな収納ステップ(操作が簡単) ●フロア下に格納された機能的な車いすスロープ(耐荷重250kg) ●移動しやすいフラットな床面(車内で車いすの回転可) ●聴覚障がい・視覚障がいの方にも配慮した室内空間(色や手すり等)... ...
On 2020年5月22日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.