文と写真●Believe Japan
ヨーロッパでは、車いすを後部座席に載せて自ら運転するタイプの福祉車両が多い。この車いす格納システム「Petri+Lehr Ladeboy S2(レイドボウイ S2)」もそのひとつ。運転席後ろのドアがスライドして開き、車内からアームが伸びて車いすを積み込む。ただ眺めているとなんの変哲もない仕組みで、思わずブースの前を素通りしてしまいそうになるのだが、よく見ると2つの非凡なことに気がつく。ひとつは、「車いすを搭載するスピードの速さ」、そしてもうひとつは「車いすを折り畳まないで搭載できる」ということである。
レイドボウイ S2は、車いすを折り畳むことなく車内に格納することができる珍しいタイプだ。その時間はわずか10秒。下ろす場合も同じ速さで、畳まれた車いすを展開するという手間もなく、そのまま座れるので非常にスムーズだ。実際の動きを見ると、10秒よりももっと短い時間に感じるほどスピーディ。日々の乗り降りにかかるストレスが大幅に軽減されるはずだ。
格納可能な車いすの重量は50kgまでで、折り畳み機能がない車いす、電動車いすにも対応する。また、人間工学に基づいたレイアウト、簡単なリモコン操作で、車いすユーザーが不安なく、そして素早くクルマの乗り降りを行えるように考えられている。
折り畳み機能がない車いすでも、専用のアタッチメントによって、自動的にアームに固定される。
車いすを宙に素早く持ち上げるアーム。剛性感のあるしっかりとした動きからクオリティの高さが伝わる。
車いすの角度を変えて、後ろに倒した状態にする。
後ろに90度倒された状態で、車いすはスライドしながら車内に引き込まれていく。
車いすがスッポリと車内に収まると同時にスライドドアが閉じる。
スムーズな格納を支えるレール部分。精度が高く、静かにスライドする。
折り畳まずに車いすを格納するのだが、コンパクトなメカのため、右横に一人乗車することができる。4ドアタイプのほぼすべての車両に取り付けることが可能だという。
1902年、フランクフルト近郊のディーツェンバッハに設立された「Petri+Lehr(ペトリ・レール)」は、「EDAG(エダック)」や「Rausch Technik(ラウシュ・テクニック)」といった福祉機器大手の提携企業として、車いす格納システムだけでなくさまざまな運転補助機器・システムを開発している。
Petri+Lehr(ペトリ・レール)は最大140kgの車いすを持ち上げ、格納することができる「Carolift(カロリフト)」も展示していた。
提携企業のRausch Technik(ラウシュ・テクニック)のブースでは、開口部があまり大きくないドアなどに対応する「折り畳み式車いす」専用のレイドボウイ S2が展示されていた。
搭載時の車いすの場所や角度などが工夫され、スペース効率に優れたレイドボウイ S2は、比較的大きなサイズの車いすも難なく格納できる。また、通常の格納はワンタッチの電動で行われるが、万が一電気系のトラブルが起きても、手動でも作動するので安心だ。シンプルに「速さと簡単さ」を追い求めたレイドボウイ S2の実用性は高い。価格はおよそ2500ユーロとリーズナブルだ。
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