文●Believe Japan 写真●Believe Japan、ホンダ
今回のREHACARE(リハケア)2018では日本の「ホンダ」が初出展した。そのブースを訪れてみると、同社が開発する歩行訓練機器「Honda 歩行アシスト」が展示され、来場者による体験歩行が行なわれていた。すでに国内の福祉機器展ではおなじみの光景だが、この会場でも大きな注目を集めていた。
ホンダの歩行アシストは、歩行者の「股関節の動き」を左右のモーターに内蔵された角度センサーで検知し、制御コンピューターがモーターを駆動するもの。二足歩行理論である「倒立振子モデル」に基づいて、股関節を曲げる下肢の「振り出し」と伸ばす「蹴り出し」の誘導を行う。素早く装着でき、手軽に自然な歩行をアシストしながら、反復仕様でリハビリ効果が認められるという画期的なアイテムだ。歩行アシストを実際に体験した来場者は皆やや興奮気味に、「自然に足を誘導してくれ、とてもラクに歩ける」、「バランスのとれた歩行で安心感がある」などと好感を語っていた。
すでに日本国内およそ250の施設に導入され、歩行訓練や歩行能力の計測などに利用されている歩行アシストだが、先ごろ欧州の「医療機器指令(MDD:Medical Device Directive)」の認証を取得したことによって、EU域内での事業展開も可能となっている。
リチウムイオン電池(22.2V-1Ah)の駆動により、一充電で約60分間稼働する。アシストは自然で、あくまで「自分で歩いている」感覚を持ちながら、歩行できる。
作動の滑らかさ、静粛性からクオリティの高さが感じられる。
独自開発の薄型モーターと制御システムによって小型軽量化を実現。バッテリーを含めて3kgを切る歩行アシストは、装着した感じも違和感がなく快適だ。
本田技研工業のパワープロダクツ事業本部で歩行アシストを担当する芝田 誠氏は、「ホンダはヒューマノイドロボット「ASIMO(アシモ)」の開発で培われた歩行理論をベースに、20年近く歩行アシストの研究を続けています」と語り、蓄積されたノウハウに自信を見せる。
医療施設での使用を想定して開発された歩行アシストは、サイズ調節が可能なフレームを採用し、幅広い体格のユーザーにも対応している。また、シンプルなベルト機構を採用することで簡単に装脱着も可能とし、短時間で複数のユーザーが使用できるようになっている。
歩行時の速度や左右対称性、可動範囲などを計測し、 タブレット端末(コントローラー)ですぐに確認でき、さらに使用者ごとに計測履歴の参照や比較をパソコンで集計できる。得られた歩行パターンデータに合わせて、歩行動作を誘導する「追従モード」と左右の屈曲・伸展のタイミングが対称になるように誘導する「対称モード」、さらに連続歩行ではなく、下肢の振り出しや蹴り出し、重心移動の反復練習をサポートする「ステップモード」といった、「リハビリ効果」の期待できる3つの訓練モードを選択できる。
より多くの人に「移動する喜び」を提案するため、ホンダは長年「二足歩行ロボット」の研究を行なってきた。アシモにまでつながる独自の歩行理論をもとに、1999年には研究をスタートさせ、この歩行アシストに漕ぎ着けた。実際に使われている歩行アシストからデータがフィードバックされ、今後さらなる改良が期待される「Honda 歩行アシスト」。ヨーロッパでの展開にも大いに注目したい。
No Comments