文●石井昌道 写真●Believe Japan 2022/1/12(水)配信 翔(KAKERU)はホンダの最新車いすレーサー(陸上競技用車いす)。いかにも競技用といった無駄のない機能美に目を惹かれるが、ここにたどり着くまでには長い歴史があった。 1981年に障がいのある人たちの社会的自立の促進を理念としてホンダ太陽(本田技研工業の特例子会社)が設立され、そこに所属する障がい者スポーツのトップアスリートによって1999年にホンダアスリートクラブが発足。翌年には本田技術研究所が車いすレーサーの開発に取り組み始めた。2002年からは毎年新しいモデルを投入して競技を続け、2013年には八千代工業が参加することで量産体制が整う。2014年の極(KIWAMI)、翌年の挑(IDOMI)などを経て、20年の集大成となったのが翔(KAKERU)なのだ。 ウイング形状のメインフレームやホイールなどフルカーボン製で、直進性を保つステアリングのダンパーをフレーム内に収めたビルトイン・ダンパーステアリングが特徴。ルックスも美しくなり、グッドデザイン賞を受賞している。価格は383万円(塗装あり/税別)とプレミアムコンパクトカー並みだ。 今回試乗させてもらったのは前モデルの挑(IDOMI)で、ビルトイン・ダンパーステアリングではないものの、バリバリの競技用で貴重な体験だった。まず、注意深く乗り込む必要がある。胸が太ももにぴったりとくっつくぐらいの前のめりの姿勢でバランスするようにできているため、普通に起き上がった姿勢で腰掛けると簡単に後ろにひっくり返るからだ。 ただ走らせるだけなら、それほど難しいことはない。一般的な車いすと同じようにホイールのハンドリムに手をかけて回せばいい。ただし、発進時にはハンドリムはかなり重く感じる。速く走るために、少ない操作でもホイールがたくさん回るようハンドリムが小径だからだ。発進してある程度まで速度がのってくると快適。さすがは競技用で走行抵抗が少なく、惰性で気持ちよく転がっていく。自分なりに感じたコツとしては、ハンドリムを操作するときは、短いストロークのなかで一気にトルクをかけること。こうするとグンッとスピードアップが図れる。ステアリングはダンパーによって直進状態が保たれるようになっていて、惰性走行のときに進路修正を図りながら進んでいく。 腕が疲れるのはもちろん、進路を見るために頭を上げるから首も疲れる。前のめりの姿勢を維持するのも意外や大変で、これでマラソン競技をするアスリートをリスペクトする気持ちが生まれた。それでも、信じられないほど軽量・高剛性で走行抵抗の少ない本物の競技用車いすレーサーを走らせることは、この上なく気持ちいい体験だった。プロの道具の凄さを知って贅沢な気分になれたのだ。 自動車ジャーナリスト 石井昌道 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転にも参加する自動車ジャーナリスト。幅広い視野と知見で的確な評論を行う。 ...
On 2022年1月12日 / By wpmasterトヨタは2018年7月23日、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会を通じて、3000台以上の車両を大会公式車両として提供し、「すべての人に移動の自由を提供する」目標を達成するためのプランを発表した。 オリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーであるトヨタは、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と連携し、競技会場や選手村、国際メディアセンターの間などでスムーズな移動を行えるモビリティソリューションを提案する考えで、大会のビジョンである「史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会」の実現に貢献していく意向だ。 すべての人へモビリティを 具体的には、モビリティサービス専用の次世代電気自動車「e-Palette」とその運行システムを提供し、選手村での選手や大会関係者の移動を支援することをはじめ、障がいを持つ方々のための福祉車両であるウェルキャブや今後公表される予定の「パーソナルモビリティ」などのバリアフリーな移動手段を提供していく。さらに、警備などの大会スタッフには立ち乗り型モビリティや「TOYOTA i-ROAD」などの小型モビリティを提供する。 e-Palette TOYOTA i-ROAD また、東京の臨海副都心地区、羽田地区の特定エリアにおいて、自動運転(SAEレベル4相当)の実証実験やデモンストレーションを行い、「だれもが自由に移動できる未来」を掲げるとしている。さらに、人工知能が人の感情認識を行い会話も行うエージェント機能を搭載した「TOYOTA Concept-愛i」のデモンストレーション走行も行われる予定で、新しい移動体験のカタチが示される。 TOYOTA Concept-愛i トヨタの豊田章男社長は、「だれかが何かに挑戦したいと思っている時、もし、移動が障害になっているのであれば、トヨタは、その課題に正面から向き合いたい。移動が挑戦するための障害ではなく、夢をかなえるための可能性になってほしい。だからこそ、私たちトヨタは“Mobility... ...
On 2018年7月24日 / By wpmasterトヨタは、2018年7月17日~7月21日にかけて開催される「2018年 スペシャルオリンピクス ユニファイドフットボールカップ・シカゴ」をサポートすると発表した。スペシャルオリンピックスは、知的障がいのある方たちに様々なスポーツトレーニングとその成果を発表する場としての競技会を提供している国際的なスポーツ組織。国際的なサッカー大会を開催するのは今回が初めてで、知的障がいのある方(アスリート)と知的障がいのない方(パートナー)が、同じチームで競技を行うユニファイドスポーツのスタイルで行われる。男性が11人制、女性が7人制のユニファイドサッカーで、5日間にわたって熱戦が繰り広げられる。 1968年にシカゴで開催された「第1回 スペシャルオリンピックス国際大会」の50周年記念となる今大会は、イリノイ州シカゴにあるサッカースタジアム「トヨタ・パーク」で開催される。2017年11月、スペシャルオリンピックス国際本部のグローバルパートナーに就任したトヨタは、スペシャルオリンピックスと共に「障がいの有無に関わらず人の差別をなくし、すべての人が参加できる社会(インクルージョン)を実現する」というビジョンの実現を目指している。 トヨタ自動車の豊田章男社長は、「私自身、学生時代にグランドホッケーに熱中し、ONE TEAMで闘うことの素晴らしさを学びました。知的障がいのある人にとっては、スポーツをしている時だけでなく、日常生活も闘いであり、その方々を支える人たちもまた、一緒に闘っておられるのではないでしょうか。私たちトヨタは、障がいのある人とない人が、お互いに相手の個性を理解し、支え合いながら、一緒にプレーをする『ユニファイドスポーツ』の精神に共感しております。スペシャルオリンピックスと共に、『世の中に存在する様々な違いを、個性として受け入れ、お互いに尊重しあうことができる社会』の実現に向けて、少しでも貢献できるよう努力したいと思っております。」と、大会の成功に向けた抱負を語っている。 スペシャルオリンピックスのメアリー・デイビスCEOは、「スペシャルオリンピックスは、トヨタと共に、スポーツを通じてグローバルに共生社会の魅力を人々に伝えられることをとても楽しみにしています。本大会を通じ、世界中のアスリートがひとつになることで、障がいの有無に関わらず、人々が一緒にプレーをして競い合うことができれば、垣根のないすべての人に開かれた世界が実現することを示してくれるでしょう」と、大会がもたらすポジティブな影響に大きな期待を寄せる。 1968年、故ケネディ大統領の妹であるユニス・シュライバーさんが、当時スポーツを楽しむ機会が少なかった知的障がいのある方たちが、スポーツを通じ社会参加できるよう応援する団体としてスペシャルオリンピックスを設立した。障がいのあるアスリートと健常者が同じチームを組んで参加する「スペシャルオリンピックスユニファイドスポーツ」は、チームメイト同士が互いの違いを個性として理解し、尊重することを促す活動となっている。 ...
On 2018年7月13日 / By wpmasterトヨタは、3月9日に開幕する「平昌2018冬季パラリンピック」に参加する、世界12カ国25人のアスリートを「チームトヨタアスリート」としてサポートすることを明らかにした。 「チームトヨタアスリート」は、バイアスロン、クロスカントリースキーのアンドレア・エスカウ選手(ドイツ)やトヨタ従業員アスリートでアルペンスキーの森井大輝選手(日本) など25名で、同社の「理念や価値観」を共有するアスリートたちを世界各国から選出している。チームトヨタのアスリートたちは、練習や大会などの活動費や車両提供、用具開発などの支援を受けることができ、従業員アスリートと同様にトヨタでの雇用支援も行われる。 トヨタは「スポーツを通じた平和で差別のない社会づくり」、「モビリティを通じた持続可能な社会への貢献」を目指しており、国際パラリンピック委員会(IPC)とワールドワイド・パラリンピック・パートナーのスポンサー契約を結んでいる。自動車業界が100年に一度の変革期を迎えているなか、理念を共有できるアスリートの活躍を通じて、従業員をはじめ、関係者や株主すべてが刺激を受けると考えている。また、そのことが、すべてのひとに「移動の自由」を提供できるモビリティ社会の実現に寄与するとしている。 平昌2018冬季パラリンピックにあたり豊田章男社長は、「ひとはだれもが何かと闘っていると思います。そして、諦めないということがとても難しいことだと知っています。だからこそ、闘い続けるアスリートの姿に心を揺さぶられるのではないでしょうか。すべてのアスリートが持てる力を出し切り、その闘いが悔いのないものになること、平昌から世界に向けて、笑顔の輪が広がることを切に願います」と語った。 トヨタは、国際パラリンピック委員会のワールドワイドパートナーとしてはじめて、世界177カ国のパラリンピック委員会(NPC)ともそれぞれ契約を結んび、現地の事業体を通じてパラスポーツの認知向上、振興を目指し、パラアスリートの支援活動に協力している。また、トヨタは国際パラリンピック委員会傘下にある非営利団体「アギトス財団」が、各パラリンピック委員会の組織運営力を高めるために行うプロジェクトにも参画しており、トヨタのビジネスノウハウを提供する支援活動も行なっている。 ちなみに、2月25日に閉幕した平昌2018冬季オリンピックに出場したチームトヨタアスリートは35人。その内、11人が、金メダル8個、銀メダル5個、銅メダル5個を獲得するなど大きな活躍を見せた。 森井大輝選手 アンドレア・エスカウ選手(ドイツ) ...
On 2018年3月8日 / By wpmaster文 ●Believe Japan 写真●川崎泰輝、日本財団パラリンピックサポートセンター 3月12日、快晴のもと「パラ駅伝 in TOKYO 2017」が1万1200名の来場者を記録し、盛大に開催された。 競技は、世界にも類を見ない、健常者と障害者が同じチームのメンバーとして、一本のタスキをつないでいく駅伝スタイルで行われた。それぞれが自身の持てる力を精一杯に発揮して、共に高みを目指していくランナーたちの姿は、スタンドだけでなく、コース沿道に詰めかけた多くの人をも勇気づけ、競技全体が熱烈な応援に包まれた。 パラ駅伝は、さまざまな障がいのあるランナーと健常者のランナー9人(伴走者含む)がひとつのチームをつくり、ゴールを目指して1本のタスキをつないでいく駅伝競技で、駒沢オリンピック公園(東京)の1周約2.5kmのコースを8区間で8周、合計約20.5kmを走るもの。今回は、東日本エリアから14都県17チーム、10代から60代までのパラリンピアンから市民ランナーといった、幅広い選手153名が参加した。 日本体育大学ブラスバンド&チアリーダー&応援団によるパフォーマンスの後、アテネパラリンピックのNHKテーマソングを作曲した盲目のアーティスト木下航志(きしたこうし)さんと、わたなべちひろさんのオープニングライブが行われた。早くも盛り上がる会場に選手団が入場すると、スタンドからは大きな歓声と拍手が送られる。 大会を主催した日本財団パラリンピックサポートセンター会長の山脇康氏は、サポートセンターが掲げるスローガン「i enjoy ! ~ 楽しむ人は強い!」を紹介し、スポーツを通じて、一人一人がいきいきと輝け、活躍できる社会の実現につなげていきたい、との抱負を述べ、開会を宣言した。 来賓の小池百合子東京都知事は、「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功はない」と語り、目下、懸命に準備を進めていることを明らかにし、また大会をきっかけに都内のあらゆる場所で「段差」を無くして「だれにとっても優しいまちづくり」を進めていく考えも示した。さらにパラリンピックのサポーター登録が、現在すでに48万人に上っていることを明らかにした小池都知事は、「みなさんの力が東京大会を成功させる」として、さらなるサポートを要請した。 続いて、松野博一文部科学大臣、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣による挨拶が行われ、木下航志さんが国歌を斉唱した。スーパーパフォーマンスグループ「AAA(トリプルエー)」と人気タレント15名により特別編成された「チームよしもと」、そして全国のご当地キャラクター16体も応援に駆けつけ、会場の熱気がさらに高まる中、小池都知事がスターターを務めて、いよいよ競技がスタートした。... ...
On 2017年3月22日 / By wpmaster想像を超えたパラスポーツの魅力に触れてほしい Believerとは? 福祉分野を中心に活動する「明日を信じて今日を前向きに生きる」ひとたち「Believer」を紹介するコーナー。 文●久保加緒里 写真●Believe Japan 2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックが大いに盛り上がり、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて日本でも注目度が高まっている「パラスポーツ」。その魅力は、活き活きとチャレンジを続けるアスリートたちの姿にある。 2011年に日本障がい者スポーツ協会の理事に就任して以来、パラスポーツに深く関わってきた山脇 康さんに、その魅力についてお話をうかがった。 人間の持つ可能性の大きさを パラアスリートが教えてくれた パラリンピックをはじめとするパラスポーツの大会に自ら足を運び、さまざまな競技を観てきた山脇さんは言う。「パラスポーツは知れば知るほどおもしろいんです。福祉や障がいという視点ではなく、純粋にスポーツとして楽しめるんです。ひとりでも多くの人に、是非とも競技を観て、知って、アスリートたちを応援していただきたいと思っています」。 現在ではパラスポーツ界を牽引し、広める立場の山脇さんだが、6年前までパラスポーツとはまったく無縁だったという。仕事上でもプライベートでも懇意にしている東京ガスの会長(当時)の鳥原光憲さんが日本障がい者スポーツ協会の会長に就任した際、「ちょっと手伝ってくれないか」と声をかけられ、ビジネスで培ってきたことをパラスポーツ界の運営に活かせるかもしれないと思って理事の仕事を引き受けたのだ。 「まずは競技のことを知らなければいけない」と考えた山脇さんは、2012年3月に長野県の白馬村で開催されたアルペンスキーとクロスカントリーのジャパンパラ大会を観戦した。はじめて競技を観た瞬間の衝撃はいまも鮮明に覚えている。理屈抜きで「すごい!」と感じたという。 「人間の持つ可能性の大きさ、潜在能力のすごさを見せつけられた気がしました。オリンピックの選手ももちろんすばらしいのですけれど、彼らはまるで別の惑星から来たかのような“超人的”なところがありますよね。パラスポーツの選手は先天的か後天的かのちがいはあっても、みんな何らかの障がいがあるなかで、残された機能を磨きあげ、多くの人が持っている能力を最大限に高めたら、こんなことまでできるようになる、ということを体現しているわけです。本当に驚いたし、大いに刺激を受けました」。 ビジネスの世界で数多くの修羅場を経験してきた彼だが、そんな自負も軽く吹き飛んでしまった。 「パラスポーツでトップアスリートになる人たちは、みなさん例外なくポジティブです。残された機能の何%を活用しているかという観点で見ても、私など到底及ばないと思います。学ぶべきことは非常に多いです」と山脇さんは言う。人間はだれしも、望むと望まざるとに関わらず人生の岐路に立たされることがある。パラアスリートは、自分の障がいや起こってしまったことも受け容れて、前向きにできることをやっていく。頭でわかっていてもなかなか実践できないことをやり遂げているからこそ、だれもがパラアスリートたちの活躍に励まされたり、背中を押されたりするのだろう。 パラスポーツによる意識変革が 「共生社会」の入口に... ...
On 2017年2月13日 / By wpmasterいよいよ車いすに乗ったまま乗車できるタクシーの運行が、東京で本格的にスタートしそうだ。このほど日産の新型ミニバン「セレナ」の「ユニバーサルデザインタクシー」仕様が、タクシーとして導入が開始された。 東京都では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、足腰の弱い高齢者や身体の不自由な方、車いす使用者、ベビーカー利用の親子連れ、妊娠中の方など、だれもが利用しやすく、さらに環境性能の高い「ユニバーサルデザインタクシー」の導入、普及を積極的に推し進めている。そのために、今年度から助成金交付制度がスタートしていたが、今回セレナが初めて適合した。 東京都はタクシー事業者に対して、1台あたり最大60万円の補助金を支給し、今年度からの5年間で、ユニバーサルデザインタクシーが1万台普及することを目指している。 このセレナは、後方のスロープから車いすに乗ったまま乗降が可能なタイプで、乗降時に使用するスロープには後退防止ベルトが採用されていて、利用者の安心感も高そうだ。日産では、2020年に向けて、今後ワゴンタイプのタクシーのニーズがますます高まると考え、ユニバーサルデザインタクシーの普及に積極的に協力していくとを明言している。 なお、ユニバーサルデザインタクシーは、超高齢社会に対応する公共交通として、国土交通省が規格を定めたタクシーで、認定レベルが1と2に分かれる。車両は予約だけでなく「流し」営業にも活用されることを想定して、以下のマークを車体に表示することとなる。なお、認定レベル1は、車いすの乗降口が幅700mm以上、高さ1300mm以上であること、乗降のためのスロープの勾配が14度以下であることが条件となる。一方、レベル2は、乗降口が幅800mm以上、高さ1350mm以上であること、乗降のためのスロープの勾配が10度以下であることなどが条件となる。 下のマークを付けたタクシーが道端で簡単に見つけられる日が早く来ることを期待したい。 参照元:日産自動車ニュースルーム ...
On 2016年12月21日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.