文と写真●Believe Japan 障がいがあっても、自然に触れ合いたい。海や山を楽しみたい。そんなひとたちの声に応える形で開発されたのが、「Mountain Trike(マウンテントライク)」社(https://www.mountaintrike.com)のアウトドア用の車いす「Mountain Trike(マウンテントライク)」シリーズだ。まるでマウンテンバイクのような、オフロード用のタイヤが特徴的なこの車いすには、じつにさまざまなアイデアが詰まっている。 最大の特徴は、トライクという名前のとおり3輪であること。これにより不整地でも後方に倒れる心配がない。そして3輪にはそれぞれ独立したサスペンションが組み込まれているため、でこぼこの道でも安定した快適な乗り心地を提供。しっかりとした油圧ブレーキも組み込まれている。 さらに、ホイールから伸びるレバーには、ステアリングとブレーキ機能に加えて、漕ぐことによって車いすを前に進ませる機構も組み込まれている。通常の車いすではホイールのリムを手でつかんでまわすため、アウトドアを走ると手が汚れてしまうが、これならその心配もない。「Mountain Trike」は、これまで自然に触れあう機会をあきらめていたひとたちにとって、待ってました!のアイデアが詰まった車いすなのだ。 さらに、最新作の「eTrike(イートライク)」は、後輪に250W、36Vのハブモーターを内蔵することで、時速約12kmでの電動走行が可能となった。バッテリーは12.8Ah、36Vのリチウムイオン。同社サイトで公開されている動画では、枯葉の積もる林のなかをスムーズに走る「eTrike」の姿を見ることができる。 取材に対応してくれたセールスマネージャーのRoger Crawford氏によれば、「Mountain Trike」シリーズは各モデルが同じ規格で作られているため、非電動モデルから電動モデルへのアップグレード、またはその逆も可能なのだとか。たとえば、アクシデントによって歩行が困難になったばかりの時期は電動モデルを使い、リハビリが進んで体力がついてきたら非電動モデルに変更したり、レバーを片側だけにするなどといったカスタマイズも受け付けている。障がいの状況やライフスタイルに合わせられるフレキシビリティが嬉しい。 英国の発明家であるTim Morgan氏が5年の歳月をかけて開発した「Mountain Trike」は、6歳から96歳まで幅広いユーザーが愛用しているという。イノベーションが世界を変える。そのことを強く実感させてくれる素敵な車いすだ。 電動モデル「eTrike」は後輪に250W、36Vのハブモーターを内蔵することで、時速約12kmでの電動走行が可能。 セールスマネージャーのRoger Crawford氏によれば、「Mountain Trike」は人生の可能性を広げてくれるパワーをもった車いすだという。... ...
On 2020年1月2日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 電動車いすの普及が進んでいるヨーロッパ。老若男女問わず、スムーズなスティック操作で軽やかに移動している姿は非常に印象的だ。 ドイツのデュッセルドルフで開催された世界有数の規模を誇るリハビリと福祉・介護機器展「REHACARE(リハケア) 2019」でも、たくさんの電動車いすの利用者や電動車いす向け商品が展示されていた。一方で、電動車いすを利用するときに問題になりがちなのが、その重さに関する問題。単体で200kg以上の重さになることも多い電動車いすは、一般的な福祉車両のスロープの耐荷重を超えてしまうのだ。 そこでスウェーデンの「BILANPASSNING(ビランパスニング)」(https://bilanpassning.com)社が開発したのが、電動車いすのままスロープが利用でき、さらに運転席スペースまでノンステップでアプローチできる「Active FlexiRamp(アクティブ フレクシィランプ)」。会場には、この商品を組み込んだフォルクスワーゲン キャディ(日本未発売)が展示され、実際に乗り込むこともできるようになっていた。 同社のオーナーでありCEOのBjorn Kayser氏によれば、「Active FlexiRamp」のフロアは複合材料によって軽量かつ強固に作られていて、重い電動車いすを使ったテストもパスしているとのこと。また、運転席と助手席は単純な金具によって取り外し可能な構造になっており、取り除くことも、装着することも簡単。 運転にまつわる操作系はユーザーの身体に合わせて改造を行える体制が整えられているとのことだが、今回のキャディでは、アクセルとブレーキの操作はハンドルに集約し、トランスミッションの操作系がボタン式に改められていた。ミニバンとしての機能性も考えられており、リヤシートを活用すれば大人4名とたくさんの荷物を積んで出かけられる。このリヤシートはコンパクトに畳むこともできるため、乗り降りの際には車内のスペースを最大化してくれる。 電動車いすのユーザーが気軽に出かけられるのはもちろん、運転席にシートを装着すれば、送迎車としても非常に便利。「Active FlexiRamp」は、まさに電動車いす先進国ヨーロッパならではの福祉車両だ。 フロアはフラットで出っぱりも最小限。後席シートはこのように折り畳める。 電動車いすの重量に耐えられるように設計されたスロープ。段差もほとんどない。 運転席、助手席は取り外し可能。つまり、電動車いすユーザー以外でも運転できるフレキシビリティのある設計だ。 ...
On 2019年12月30日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan まるで歩くように、身体を行きたい方向に向けることで移動する「OMEO(オメオ)」は、これまでの電動車いすにはない、新しい体験を与えてくれた。 ドイツのデュッセルドルフで開催された世界有数の規模を誇るリハビリと福祉・介護機器展「REHACARE(リハケア) 2019」には、イノベーティブな福祉機器が数多く展示されていたが、「2KERR(ツーケアー)」(https://www.2kerr.com)の「OMEO」は、そのなかでも非常に目を引く存在だった。 「OMEO」は、セグウェイ社からライセンスを受け、供給されたプラットフォームを使って開発された電動車いす。そのポイントは、ジョイスティックを使わずに、上半身を希望の方向に向けることで操縦するという独特のシステムにある(ジョイスティックによる操作も可能)。 これにより、利用者はハンズフリーで、より自然な感覚で移動できる。そのフィーリングは非常にスポーティで、身体感覚に沿ったもの。 さらに走破性の高さも特筆すべきもので、取材に応じてくれた創始者でディレクター&デザイナーのKevin Halsall氏は、会場に用意された玉砂利の道をいとも簡単に走破するデモンストレーションを披露してくれた。氏によれば、「OMEO」は実用的であるだけでなく、楽しくてスポーティでユニークであることを大事にしたのだとか。 実際に会場を走らせてもらったが、軽快でスピーディに走りたいと思えば、そのとおりに動いてくれる。設定により最高速度を落とすことも可能で、慣れるまではゆっくりとした動きにもできるから安心だ。 会場には「OMEO」のほかにも、身体の状態や使用環境に合わせたバリエーションモデルが展示されていた。また、将来的には、独自プラットフォームに進化させるべく、現在も開発を続けているという。 重心移動によりスピードや進行方向をコントロールする「OMEO」は、電動車いすの世界にファン トゥ ドライブという体験を与えてくれる乗りものだった。 「OMEO」をデモンストレーションする「2KERR」社の創始者でディレクター&デザイナーのKevin Halsall氏 砂浜のような不整地であってもスタックせずに走れ、なおかつコントロールしやすい... ...
On 2019年12月27日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan ドイツのデュッセルドルフで開催された世界有数の規模を誇るリハビリと福祉・介護機器展「REHACARE(リハケア) 2019」から、イノベーティブな福祉機器を紹介する。 ヨーロッパでは、できることは自分でやりたいという自立心が強く、そのため車いすユーザーが自分で運転するための福祉機器が充実している。また、専門の福祉車両よりも、既存の普通車を福祉車両へと改造するコンバージョンタイプが多いのも特徴。一方で、これまでの機器はシンプルな手動式が多く、安価で頑丈というメリットはあったものの、体力の衰えたユーザーや小柄な体格のひとにとっては、大きな力が必要というデメリットもあった。しかし、そんなヨーロッパの状況も近年変わりつつあるようだ。 長年、油圧シリンダーによる車いすリフトを手がけてきた「WEERSINK(ウィーシンク)」(https://www.weersink.nl)が提案するのは、車いすの出し入れと車両への乗り込みを劇的に快適にしてくれる「ミニリフト&回転リフト」システム。 これは、運転席に移乗するリフトと車椅子を収納するリフトで構成されるもので、後席スライドドアを持つ車両に取り付け可能。ヨーロッパの15カ国以上とアメリカで特許を取得しているという。従来では乗車するのに非常に時間のかかったミニバンのようなクルマであっても、非常に短い時間で、なおかつ力を必要とせずに乗降できるのが特徴だ。同社のYouTubeアカウント(https://www.youtube.com/channel/UCrPhJuLe7HAWytLNTmvEKXQ)では、わずか30秒以内で乗降する模様が公開されている。 実際に、同社の代表を務めるRené Weersink氏自らが実演してくれた。 まずは車いすからミニリフトへ移乗し、車いすを回転リフトにセット。そしてリモコンのスイッチを押すと、車いすは自動的に車内に入り固定された。続いてミニリフトをリモコン操作で持ち上げる。すると運転席と同じ高さになるので、力をほとんど使わずに、座る位置を少しずらすだけで運転席への移乗が完了した。これまで腰掛けていたミニリフトは折り畳まれ、シート下部のヒンジで固定され、邪魔になることもない。ここまでの動きがスピーディでじつに滑らかなことに驚いた。 「ミニリフトによって、運転手はまるで座席に吸い込まれるように、運転席のよい位置に収まります。ミニリフトは不安定に見えるかもしれませんが、座席の前端にはかなり大きな曲線があり、ドアとBピラーをしっかりと握っていれば、実際には快適に座ることができる状況です。2〜3回練習する必要がありますが、すぐに慣れるはずです」。 車いすユーザーからは、車いすの収納は身体への負担が大きく、また心理的にもあまりその姿を長く見られたくないという声をよく聞くが、このシステムにはそのどちらも解決してくれる革新性がある。費用は工賃込みで約100万円とのこと。日本での展開はまだ未定とのことだが、ミニバン王国の日本にこそ、「ミニリフト&回転リフト」システムは受け入れられるニーズがあるに違いない。 車いすを収納する回転リフトのユニットは、およそシート1座席分のスペースを使う。 操作はリモコンで完結。車いすを車内に収納する負担と時間が節約できる。 ミニリフトによって、ドライバーズシートの高さまでスムーズにアプローチ。 スロープを使わずに車いすを収納する「ロールポール」は「WEERSINK」の看板商品。 油圧シリンダーによる車いす収納システムなどこれまで数多くのイノベーションを実現してきた「WEERSINK」代表のRené Weersink氏。 ...
On 2019年11月29日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 日本の福祉機器は世界的に見ても非常に機能的だが、それでもまだ世界には学ぶべきことはたくさんある。とくに中小企業やスタートアップ企業が生み出すイノベーティブな機器は、これまでにない発想と斬新なアイデアで障がい者の暮らしを豊かにしてくれる可能性を秘めている。 世界有数の規模を誇るリハビリと福祉・介護機器展「REHACARE(リハケア)2019」で発見した、イノベーティブな機器を紹介していく。 ドイツのデュッセルドルフで毎年秋に開催される「REHACARE」は、国際リハビリテーション・福祉・介護機器展で、世界有数の規模を誇るイベント。2019年は小規模開催年だったが、それでも43カ国から751もの出展者が集い、会場を訪れたビジターの国籍は世界80カ国に及んだというから元気だ。近年では中国や韓国といったアジア諸国からの出展者も増加傾向にあるという。「REHACARE」は、機器の作り手やその買い手といったビジネストレード的な側面に加えて、行政や利用者とその家族たち、支援グループも積極的に参加。ブースでは活発な意見交換が行われていた。 こちらは、車いすユーザーのためのキャンピングカー「HRZ Reha Camper(HRZリハキャンパー)」シリーズで、メルセデス・ベンツのスプリンター VS30(日本未導入)がベースの「HRZ Reha Camper 2+」というモデル。車いすユーザーがだれの手を借りることなく、車いすのまま乗車し、運転や車中泊を楽しむことができるのが特徴で、車内のスペースもすべて車いすを基準に設計されている。取材に対応してくれたのはHRZ REISEMOBILE GmbH(https://www.hrz-reisemobile.de)のマネージングディレクター ビジネスエコノミストであるElia Akkawi氏。 「このモデルは当社の車いす用キャンピングカーのなかでもコンパクトなモデルですが、それでも十分なスペースを確保しているのが特徴です。車内はフラットで車いすが転回できる余裕を持たせています。運転席は回転式で、その後方に設けられた車いす固定スペースから楽に移乗できるようにしました。もちろん、運転にまつわるすべての操作は手だけで行えるよう改造されています」。 車体後方には折り畳み式のベッド(一人用)とシンク、ストーブ、クールボックス、キッチンと引き出し、ランドリー、シャワーそしてトイレを設置。もちろん、そのすべてが車いすユーザーが使えるように設計されている。 「さらに見ていただきたいのが天井のスペースです。ここにはルーフベッドが設けられており、同伴者も快適に眠ることができます。また、日中はルーフベッドを押し上げることで、車内をより広く使えるようになっています」。 連れて行ってもらうのではなく、一人で出かけられ、大切なひとともいっしょに過ごせる。福祉キャンピングカー「HRZ... ...
On 2019年11月26日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●内藤敬仁 ご存知のように、日本は世界一の高齢化国で、現時点での65歳以上の人口割合は28%に及んでいる。この状況は2050年になると約40%になると予想され、すでに年金問題も含め日本に立ちはだかる大きな課題となっている。つまり、約30年後には6人の現役側が4人の高齢者を支えるというイメージだ。そんな状況のなか、自動車メーカーの開発者として、日々奮闘する人がいる。トヨタ自動車で15年間ウェルキャブ(福祉車両)事業をとりまとめる、中川茂氏だ。 そんな中川氏がいま取り組んでいるのが、「福祉車両ではない福祉車両」。それは、新型ヤリスをベースにした「運転席回転シート車」(プロトタイプ)で、運転席が回転することで、乗り降りを手助けしてくれるというもの。我々も福祉車両の取材を続けてきて、常々疑問に思うことがあった。それは、助手席回転シート仕様が「福祉車両」であり続けていること。いちど試すとわかるのだが、この回転シートは非常に便利で、障がいをもった方だけでなく、単純にクルマの乗り降りがおっくうに感じるようになったひとにも、とても助かる装備なのだ。 新型ヤリスは来年2月の発売予定。今回の運転席回転シートはウェルキャブ(福祉車両)ではなく、通常のカタログオプションとなるという。 「できるかぎりドライバーの自立を支える、これがこのシートのコンセプトです。歳をとると筋力が落ちるので、普通のシートだと片足に全体重をかけて降りなければなりません。そして、この右足が着地できる位置は運転席から遠く、上半身も45度ほど傾ける必要があります。とくに腰の痛い方はこれが辛い。運転席回転シート車の場合、まず両足で立ち上がれるので、足の筋力は半分ほどですみますし、足が着地したところと身体の位置関係が近く、上半身も20度くらい傾ければ大丈夫。乗り降りの負担が半減します(中川氏)」。 このシート、我々も試させてもらったが、とても楽に乗り降りができることに、ちょっとした感動を覚えた。また、興味深い話だったのが、筑波大学の市川教授が発表した(日本疫学会誌)データ。高齢者の運転と要介護になるリスクを比較したデータで、運転を継続した高齢者が要介護になる数値を「1」とすると、運転をやめた高齢者が要介護になる数値が「2.2」となるという。自動車で外出することが、健康寿命を延ばすということを証明しているというのだ。いうまでもなく、健康寿命が延びることは介護期間を減らすことにもつながってくる。 「約4割が高齢者の時代になって、それぞれの高齢者がみんな介護を受けるとすると、現役側(支える側)の負担はものすごく大きなものになる。そのときにあまり介護を受けずにいたほうが、ご本人も幸せだし、その親御さんを介護する子供たちも助かるし、国も助かる。自動車がそういうところでお役に立てる可能性を、これからも模索していきたいですね(中川氏)」。 回転シートを装着することを前提に、ドア下部の角を落とす設計がなされ、ドアが半開でも足が当たらず乗り降りできるよう考慮されている。 「4リンク」という新たな機構を使用することで、シート高は標準モデルと同等となっている。 車いすを寝かして搭載する電動収納装置も新たに登場。こちらはウェルキャブとなる。 話を伺ったのは トヨタ自動車株式会社 CV Company、CV 製品企画、ZU 主査、トータルソリューション事業室... ...
On 2019年11月15日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 福祉機器の展示会として、いまやアジア最大規模にまで成長した国際福祉機器展は、最新の商品やサービスをいち早く体験できるのはもちろん、各分野の制度改革などを話し合う国際シンポジウムの開催やセミナーなど、福祉の分野を多角的な視点で網羅する催し。本記事では、そんなイベントに展示されていた移動の自由を高めてくれる福祉車両の最新モデルをレポート。年々充実している福祉車両のいまをお届けする。 福祉車両は、車いすでの乗車や乗り降りのサポートからスタートし、さまざまな症状や使い方に対応する多様性へと進化してきた。いまや日本の福祉車両は軽自動車から大型車に至るまで幅広く、世界でも類を見ない豊富なラインアップを誇る。近年では、福祉車両としての使い勝手はもちろんのこと、よりクルマとしての魅力を充実させたものや、ライフスタイルを豊かにしてくれるパートナーとしてつくられたモデルが登場している。その背景にあるのが、クルマそのものを企画・開発する段階から、福祉車両化を見据えた設計を行う自動車メーカーが増えていること。また、医療機関や大学といった研究機関との連携によって、より利用者の視点に立ったアイデアを持つ福祉車両が増えてきているのも近年の傾向といえる。 トヨタブース それでは、会場で注目を集めていた福祉車両を紹介していこう。グループ企業として、合同でブースを展開していたトヨタとダイハツでは、それぞれの強みを活かした幅広いラインアップをディスプレイ。自動車の世界では、電気自動車がひとつのトレンドとなっているが、トヨタではEV技術の活用として「歩行領域EV 車いす連結タイプ」の体験走行を実施していた。これは車いすに取り付けることで、簡易的な電動車いすにするというアイデアで、まだコンセプトモデルの段階ながら、下り坂での速度制御など、EVならではの可能性を感じられた。また、数多くのラインアップにベースモデルの特性を生かした福祉車両を設定したり、車いすそのものを開発するなど多角的なアプローチが光る。 ダイハツブース 小型車を得意とするダイハツでは、主力モデルのタントが人気。タントは、従来どおりの福祉車両に加えて、要介護レベルの低いひとのための新しいジャンルにも挑戦。それがこの「タント ウェルカムターンシート」で、乗降時の負担軽減を最小限のアイテムと費用で実現している。開発には理学療法士などの専門家に加え、実際の高齢者の方々も参加。とくに助手席だけでなく後席への乗り降りをも楽にする「ミラクルオートステップ」、車体各所につける「ラクスマグリップ」は、まさに現場からの声が反映された技アリのアイテムだ。ダイハツらしい「良品廉価」の取り組みといえる。 日産ブース 日産ブースで一際目を引いたのがコンセプトモデル「Adventure Log Cabin 」。これは、「出かける喜びを、一人でも多くの方へ」という思いによって作られており、これまでにも各展示会でお披露目されてきた。最新バージョンでは、クルマへの乗り降りをサポートする助手席スライドアップシートに加えて、車中泊やロングドライブ時の休憩にも使えるベッドキットを装備。障がいを持つひとでもキャンプを楽しめるようになっている。ベッドキットの市販化は未定とのことだが、クルマの持つ楽しさを表現した福祉車両というアイデアに共感するひとが多いのではないだろうか。また、マイナーチェンジしたばかりの新型セレナの福祉車両もお披露目。モーターだけで走行する電動化で、自動運転技術を活用したプロパイロットも搭載している。 ホンダブース 開発段階から福祉車両を見据えた構造とすることで、福祉車両としての使い勝手を高めた好例といえるのが、ホンダの「N-BOX スロープ仕様」だ。すでに多くのユーザーからも選ばれているとおり、軽自動車であることを感じさせない優れた使い勝手を実現している。ヘッドレストをつけたままで格納できるリヤシートは、介助する方にとっても嬉しいポイント。ホンダはこうした福祉車両に加えて、事故や加齢によって運転能力が衰えてしまったドライバーが安全に運転感覚をトレーニングできる簡易型四輪ドライビングシミュレーター「Honda セーフティナビ」も手がけている。また、競技用車いすの展示など、多角的な視点で移動の喜びをサポートしている。 スズキブース シンプルなつくりで価格を抑え、多くのひとに福祉車両を届けているのがスズキ。「車いす移動車」シリーズの中心価格は100万円台後半。助手席への乗り降りをサポートする「昇降シート車」では150万円が中心価格。このように価格を抑えながらも使い勝手や快適性についてもしっかり配慮しており、たとえば最新モデルの「スペーシア... ...
On 2019年10月22日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 1995年から軽福祉車両をラインアップし、1999年にはインライン生産化。現在では軽福祉車両を6車種(車いす移動車、昇降シート車)展開するダイハツ。今回DNGA第一弾としてフルモデルチェンジしたタントは、標準モデルの魅力を大幅にアップしていることはもちろん、新たな試みとして、標準モデルと福祉車両の間にある「福祉車両は必要ないけれど、高齢者の乗り降りなどで、もう少し便利なクルマがあれば」という需要に注目。すでに超高齢化している日本の現状への回答となる仕様を送り出してきた。 おもしろいのは、この「標準車と福祉車両の垣根をなくす」というコンセプトを実現するにあたり、徹底した「介護予防」を観点にしているところ。従来の福祉車両が比較的介護レベルの高い要介護のユーザーが中心だったことに対し、新たに、フレイル高齢者(加齢とともに運動機能や認知機能が低下してきた状態。要介護にいたる前の状態)、要支援者、軽介護度のユーザーに便利に使ってもらえるような仕様を目指している。これを実現するにあたり、2017年から産学共同研究を実施。理学療法士や大学教授に加え、実際に多くの高齢者の方の協力を得て、下に紹介する仕様のモデルが誕生した。 【ミラクルオートステップ】 助手席と後席両方の乗降性を向上する「ミラクルオートステップ」は、ステップ耐荷重100kgのロングタイプ。ステップ非装着車に比べ股関節の屈曲角度が小さくすみ、高齢の方はもちろん、小さな子供にも便利。ミラクルオープンドアとの組み合わせは、乗降時の負担の少なさでは最高レベルと言える。 【ラクスマグリップ(助手席・運転席/助手席シートバック)】 たかがグリップと侮るなかれ。一度この装備に慣れてしまうと、手放せなくなりそうなのが「ラクスマグリップ」。位置と形状にとことんこだわったというこのグリップは、手を伸ばしたところに自然にある感じで非常に使い勝手がいい。握りやすく滑りにくいといったグリップ形状にもしっかり気が使われている。こちらは乗降時に加え、シートの移動(後席の左シートから右シートへ)にも便利だ。 【ウェルカムターンシート】 助手席ターンシートは、一人での乗り降りをサポート。シートを30度に回転させると、ラクスマグリップ(助手席)を正面でつかむことができ、足腰に不安がある方でも安心して乗り降りができる。 【パワークレーン】 ワンモーションで車いすをラゲッジスペースに収納できるパワークレーン。こちらはクレーン本体が天井部分に装着されるため、ラゲッジの床面部分は標準車と同じように使え、後方視界も妨げない優れもの。当然、クレーン装着部分はボディの剛性も高くなければならず、車両設計の段階からメニューに組み込まれたものだ。また、このクレーンはタント専用のものとなる。 【スローパー】 車いすをそのまま載せられるスローパーも、今回大きく進化している。まずは新開発となるリトラクタブルスロープ。新たにワンタッチでスロープの前傾が可能となり、車いす乗車がない場合はフラットなラゲッジスペースとして活用できることになった。また、車いす乗車スペース幅も20mm拡大し、車いす固定ベルトも操作が少なくてすむように改良が施されている。さらにリヤバンパー部分にはプロテクターモールを装着。こちらはスロープを展開するときにつく傷を防止するもので、万が一傷がついてしまっても、安く交換できる部品となっている。 ... ...
On 2019年9月16日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 世界的に見ても、日本の自動車メーカーがラインアップする福祉車両(ビリーブカー)は非常に数が多い。しかし、実際に福祉車両が必要になったとき、これまで輸入車に慣れ親しんできたひとなら、「福祉車両でも輸入車を選びたい」と思うことは想像に難しくない。今回取材したヤナセオートシステムズの福祉車両は、そんなユーザーの夢を実現してくれる。 ご存知のように、ヤナセは日本における輸入車市場拡大のきっかけとなった老舗中の老舗で、その歴史は、なんと100年以上におよぶ。その間、数多いブランドの輸入車を取り扱い、現在に至っている。ヤナセで新車、中古車を購入した、あるいは整備をお願いしたなど、お世話になったことのあるひとは思いのほか多いはずだ。 福祉車両への本格参入を発表したのは、2017年9月。それまでは個別にユーザーと相談しながら車両を架装するスタイルをとっていたが、すでに始まっている超高齢化の現状や問い合わせにも対応しやすいように、「バリアフリーな輸入車で、車のある人生をもっと長く」というコンセプトのもと、全国の販売店でサービスを展開している。 今回は、すでに全国の福祉機器展で展示実績のあるデモカー2台を借り出し、実際の使い勝手をチェック、Vクラスは試乗も行った。 1台目はメルセデス・ベンツ Vクラスに車いす用の昇降リフト(イタリアのフィオレラリフト社製)を装着した車両。このクルマのポイントは、耐荷重が360kgあるリフト。国産メーカーの福祉車両では対応しきれないことの多い、重量級の電動車いすをストレスなく載せることができる。 操作方法はいたって簡単。テールゲートを開け、ユニット本体のボタンを押すだけ(詳細は動画にて確認してほしい。また、この仕様は一部手動での作業が必要だが、完全電動のタイプもある)。こちらは付属のリモコンを使って操作することも可能。車いすが入ったら、固定金具で車いすをしっかり固定するだけ。このリフトのいいところは、横に回転させることができ、車いすを載せないときなど、荷物の出し入れが手軽に行えるところが便利。 リフトの使い勝手のよさに加え、このクルマの美点はやはりドイツ車らしい走りだろう。速度無制限区間のあるアウトバーンを連続走行するためには、そもそもクルマがタフでなければ話にならない。筆者も同じVクラスで現地を数千km走りまわった経験があるが、フロア剛性の高さくるしっかり感は、安心感に直結する。それは車いすに乗っていても同じことで、リラックスして乗り続けられることができた。車いすに乗車したスタッフの184cmという身長でも、頭上スペースは問題なし。カップホルダーに加え、エアコン吹き出し口が側にあるのも嬉しいポイントだろう。 続く2台目はメルセデス・ベンツ Cクラス ステーションワゴンに、車いす自動収納装置(イスラエルのTMN社製 R11ロボット)を装着した車両。この装置は運転席からトランクへ、車いすをワンタッチで運んでくれるというもの(こちらも詳細は動画で確認してほしい)。まさに現代のロボット技術がなせる装置で、その華麗な動きに思わず見入ってしまうが、車両の改造範囲が少ない点、後席をそのまま使える点などメリットも大きく、欧州ではすでに2000機の販売実績をもつという。 操作は運転席に移乗し、車いすをアームにセットしたら(少々慣れが必要)、手元のスイッチを押すだけ。この装置は汎用性が高く、車いすを収納できるスペースがあれば装着可能だが、取り付けには詳細な現車確認が必要となる。 こちらは自操式装置(イタリアのKivi srl社)。リング&レバータイプの手動運転装置で、リングでアクセルをコントロール、右のレバーを下げるとブレーキがかかるというもの(実施の商品は黒色)。 今回紹介した2台の仕様以外にも、吊り上げ収納用リフトや着脱式スロープ、補助ステップ、回転シートなどが用意されているヤナセの福祉車両。かつては「いいものだけを世界から」。現在は「クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている」というキャッチフレーズのヤナセ。ヤナセの福祉車両は、たしかな商品を厳選し、それを好きなクルマに装着するという、これまで培ってきたグループの強みが発揮されている。新車はもちろん、ヤナセで販売されている中古車でも装着の相談ができるというから嬉しい。また、上記の車両はH.C.R.2019(第46回... ...
On 2019年8月30日 / By wpmaster介護経験があり、自身も福祉車輌取扱士スペシャリスト資格を持つ、タレント・モータージャーナリスト 竹岡 圭のビリーヴカー インプレッションがスタート。介助する側、介助される側、双方の立場になってインプレッションするので、ぜひビリーヴカー(福祉車両)選びの参考にしてください! 関連記事:ホンダ ステップワゴン福祉車両の優れた機能性を実感する ...
On 2019年8月12日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.