文と写真●Believe Japan 日本の福祉機器は世界的に見ても非常に機能的だが、それでもまだ世界には学ぶべきことはたくさんある。とくに中小企業やスタートアップ企業が生み出すイノベーティブな機器は、これまでにない発想と斬新なアイデアで障がい者の暮らしを豊かにしてくれる可能性を秘めている。 世界有数の規模を誇るリハビリと福祉・介護機器展「REHACARE(リハケア)2019」で発見した、イノベーティブな機器を紹介していく。 ドイツのデュッセルドルフで毎年秋に開催される「REHACARE」は、国際リハビリテーション・福祉・介護機器展で、世界有数の規模を誇るイベント。2019年は小規模開催年だったが、それでも43カ国から751もの出展者が集い、会場を訪れたビジターの国籍は世界80カ国に及んだというから元気だ。近年では中国や韓国といったアジア諸国からの出展者も増加傾向にあるという。「REHACARE」は、機器の作り手やその買い手といったビジネストレード的な側面に加えて、行政や利用者とその家族たち、支援グループも積極的に参加。ブースでは活発な意見交換が行われていた。 こちらは、車いすユーザーのためのキャンピングカー「HRZ Reha Camper(HRZリハキャンパー)」シリーズで、メルセデス・ベンツのスプリンター VS30(日本未導入)がベースの「HRZ Reha Camper 2+」というモデル。車いすユーザーがだれの手を借りることなく、車いすのまま乗車し、運転や車中泊を楽しむことができるのが特徴で、車内のスペースもすべて車いすを基準に設計されている。取材に対応してくれたのはHRZ REISEMOBILE GmbH(https://www.hrz-reisemobile.de)のマネージングディレクター ビジネスエコノミストであるElia Akkawi氏。 「このモデルは当社の車いす用キャンピングカーのなかでもコンパクトなモデルですが、それでも十分なスペースを確保しているのが特徴です。車内はフラットで車いすが転回できる余裕を持たせています。運転席は回転式で、その後方に設けられた車いす固定スペースから楽に移乗できるようにしました。もちろん、運転にまつわるすべての操作は手だけで行えるよう改造されています」。 車体後方には折り畳み式のベッド(一人用)とシンク、ストーブ、クールボックス、キッチンと引き出し、ランドリー、シャワーそしてトイレを設置。もちろん、そのすべてが車いすユーザーが使えるように設計されている。 「さらに見ていただきたいのが天井のスペースです。ここにはルーフベッドが設けられており、同伴者も快適に眠ることができます。また、日中はルーフベッドを押し上げることで、車内をより広く使えるようになっています」。 連れて行ってもらうのではなく、一人で出かけられ、大切なひとともいっしょに過ごせる。福祉キャンピングカー「HRZ... ...
On 2019年11月26日 / By wpmaster日産自動車とオーテックジャパンは、福岡県北九州市の西日本総合展示場で開催される「第21回 西日本国際福祉機器展」(11月14日から11月16日の3日間)に、福祉車両であるライフケアビークルを4台出展すると発表した。 展示される車両は、8月にマイナーチェンジした新型「セレナ チェアキャブ スロープタイプ」や、100%モータードライブの電動パワートレイン「e-POWER」を搭載した「ノート e-POWER 助手席回転シート」、法人ユースに適した全自動リフター付きの「NV350キャラバン チェアキャブ 車いす1+1名仕様」、大きな車いすも乗せられる軽自動車「 NV100クリッパーリオ チェアキャブ」の計4台。 日産は、「ニッサン インテリジェント モビリティ」の取り組みのもと、クルマの「電動化」、「知能化」に向けた技術開発を進めており、ライフケアビークルにおいても、「ニッサン インテリジェント モビリティ」を具現化する先進技術の搭載を推進している。 展示車両は次のとおり。 ・セレナ チェアキャブ スロープタイプ... ...
On 2019年11月5日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 福祉機器の展示会として、いまやアジア最大規模にまで成長した国際福祉機器展は、最新の商品やサービスをいち早く体験できるのはもちろん、各分野の制度改革などを話し合う国際シンポジウムの開催やセミナーなど、福祉の分野を多角的な視点で網羅する催し。本記事では、そんなイベントに展示されていた移動の自由を高めてくれる福祉車両の最新モデルをレポート。年々充実している福祉車両のいまをお届けする。 福祉車両は、車いすでの乗車や乗り降りのサポートからスタートし、さまざまな症状や使い方に対応する多様性へと進化してきた。いまや日本の福祉車両は軽自動車から大型車に至るまで幅広く、世界でも類を見ない豊富なラインアップを誇る。近年では、福祉車両としての使い勝手はもちろんのこと、よりクルマとしての魅力を充実させたものや、ライフスタイルを豊かにしてくれるパートナーとしてつくられたモデルが登場している。その背景にあるのが、クルマそのものを企画・開発する段階から、福祉車両化を見据えた設計を行う自動車メーカーが増えていること。また、医療機関や大学といった研究機関との連携によって、より利用者の視点に立ったアイデアを持つ福祉車両が増えてきているのも近年の傾向といえる。 トヨタブース それでは、会場で注目を集めていた福祉車両を紹介していこう。グループ企業として、合同でブースを展開していたトヨタとダイハツでは、それぞれの強みを活かした幅広いラインアップをディスプレイ。自動車の世界では、電気自動車がひとつのトレンドとなっているが、トヨタではEV技術の活用として「歩行領域EV 車いす連結タイプ」の体験走行を実施していた。これは車いすに取り付けることで、簡易的な電動車いすにするというアイデアで、まだコンセプトモデルの段階ながら、下り坂での速度制御など、EVならではの可能性を感じられた。また、数多くのラインアップにベースモデルの特性を生かした福祉車両を設定したり、車いすそのものを開発するなど多角的なアプローチが光る。 ダイハツブース 小型車を得意とするダイハツでは、主力モデルのタントが人気。タントは、従来どおりの福祉車両に加えて、要介護レベルの低いひとのための新しいジャンルにも挑戦。それがこの「タント ウェルカムターンシート」で、乗降時の負担軽減を最小限のアイテムと費用で実現している。開発には理学療法士などの専門家に加え、実際の高齢者の方々も参加。とくに助手席だけでなく後席への乗り降りをも楽にする「ミラクルオートステップ」、車体各所につける「ラクスマグリップ」は、まさに現場からの声が反映された技アリのアイテムだ。ダイハツらしい「良品廉価」の取り組みといえる。 日産ブース 日産ブースで一際目を引いたのがコンセプトモデル「Adventure Log Cabin 」。これは、「出かける喜びを、一人でも多くの方へ」という思いによって作られており、これまでにも各展示会でお披露目されてきた。最新バージョンでは、クルマへの乗り降りをサポートする助手席スライドアップシートに加えて、車中泊やロングドライブ時の休憩にも使えるベッドキットを装備。障がいを持つひとでもキャンプを楽しめるようになっている。ベッドキットの市販化は未定とのことだが、クルマの持つ楽しさを表現した福祉車両というアイデアに共感するひとが多いのではないだろうか。また、マイナーチェンジしたばかりの新型セレナの福祉車両もお披露目。モーターだけで走行する電動化で、自動運転技術を活用したプロパイロットも搭載している。 ホンダブース 開発段階から福祉車両を見据えた構造とすることで、福祉車両としての使い勝手を高めた好例といえるのが、ホンダの「N-BOX スロープ仕様」だ。すでに多くのユーザーからも選ばれているとおり、軽自動車であることを感じさせない優れた使い勝手を実現している。ヘッドレストをつけたままで格納できるリヤシートは、介助する方にとっても嬉しいポイント。ホンダはこうした福祉車両に加えて、事故や加齢によって運転能力が衰えてしまったドライバーが安全に運転感覚をトレーニングできる簡易型四輪ドライビングシミュレーター「Honda セーフティナビ」も手がけている。また、競技用車いすの展示など、多角的な視点で移動の喜びをサポートしている。 スズキブース シンプルなつくりで価格を抑え、多くのひとに福祉車両を届けているのがスズキ。「車いす移動車」シリーズの中心価格は100万円台後半。助手席への乗り降りをサポートする「昇降シート車」では150万円が中心価格。このように価格を抑えながらも使い勝手や快適性についてもしっかり配慮しており、たとえば最新モデルの「スペーシア... ...
On 2019年10月22日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●Believe Japan、ホンダ 今回のREHACARE(リハケア)2018では日本の「ホンダ」が初出展した。そのブースを訪れてみると、同社が開発する歩行訓練機器「Honda 歩行アシスト」が展示され、来場者による体験歩行が行なわれていた。すでに国内の福祉機器展ではおなじみの光景だが、この会場でも大きな注目を集めていた。 ホンダの歩行アシストは、歩行者の「股関節の動き」を左右のモーターに内蔵された角度センサーで検知し、制御コンピューターがモーターを駆動するもの。二足歩行理論である「倒立振子モデル」に基づいて、股関節を曲げる下肢の「振り出し」と伸ばす「蹴り出し」の誘導を行う。素早く装着でき、手軽に自然な歩行をアシストしながら、反復仕様でリハビリ効果が認められるという画期的なアイテムだ。歩行アシストを実際に体験した来場者は皆やや興奮気味に、「自然に足を誘導してくれ、とてもラクに歩ける」、「バランスのとれた歩行で安心感がある」などと好感を語っていた。 すでに日本国内およそ250の施設に導入され、歩行訓練や歩行能力の計測などに利用されている歩行アシストだが、先ごろ欧州の「医療機器指令(MDD:Medical Device Directive)」の認証を取得したことによって、EU域内での事業展開も可能となっている。 リチウムイオン電池(22.2V-1Ah)の駆動により、一充電で約60分間稼働する。アシストは自然で、あくまで「自分で歩いている」感覚を持ちながら、歩行できる。 作動の滑らかさ、静粛性からクオリティの高さが感じられる。 独自開発の薄型モーターと制御システムによって小型軽量化を実現。バッテリーを含めて3kgを切る歩行アシストは、装着した感じも違和感がなく快適だ。 本田技研工業のパワープロダクツ事業本部で歩行アシストを担当する芝田 誠氏は、「ホンダはヒューマノイドロボット「ASIMO(アシモ)」の開発で培われた歩行理論をベースに、20年近く歩行アシストの研究を続けています」と語り、蓄積されたノウハウに自信を見せる。 医療施設での使用を想定して開発された歩行アシストは、サイズ調節が可能なフレームを採用し、幅広い体格のユーザーにも対応している。また、シンプルなベルト機構を採用することで簡単に装脱着も可能とし、短時間で複数のユーザーが使用できるようになっている。 歩行時の速度や左右対称性、可動範囲などを計測し、 タブレット端末(コントローラー)ですぐに確認でき、さらに使用者ごとに計測履歴の参照や比較をパソコンで集計できる。得られた歩行パターンデータに合わせて、歩行動作を誘導する「追従モード」と左右の屈曲・伸展のタイミングが対称になるように誘導する「対称モード」、さらに連続歩行ではなく、下肢の振り出しや蹴り出し、重心移動の反復練習をサポートする「ステップモード」といった、「リハビリ効果」の期待できる3つの訓練モードを選択できる。 より多くの人に「移動する喜び」を提案するため、ホンダは長年「二足歩行ロボット」の研究を行なってきた。アシモにまでつながる独自の歩行理論をもとに、1999年には研究をスタートさせ、この歩行アシストに漕ぎ着けた。実際に使われている歩行アシストからデータがフィードバックされ、今後さらなる改良が期待される「Honda 歩行アシスト」。ヨーロッパでの展開にも大いに注目したい。... ...
On 2019年1月9日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 軽量化による操作性の向上や電動化による車いすの進歩は目覚ましく、ユーザーの活動範囲は、今日急速に拡大している。介助者が手押しするタイプの車いすでも、斬新なアイデアによる製品が登場して使い勝手が大幅に改善されている。ここでは、その中から車いすを自在に脱着できる電動アシスト自転車「Van Raam(ヴァン・ラーム)のOPair Wheelchair bike(オーペア ホイールチェアバイク)」を紹介する。 自身で車いすを動かすことが難しい方は、介助者が押すタイプの車いすを使うことが多い。その場合、建物内や近くでの移動は問題ないが、距離が長くなると介助者の負担は増大する。そのため、外出を躊躇してしまうこともあるだろう。しかし、このホイールチェアバイクならば、自転車のフロント部分に車いすユーザーが乗車し、目的地に着いたら、それをそのまま取り外して車いすとして使用できる。自転車は電動アシストなので、自転車を漕ぐ介助者の負担も軽く、遠出も苦にならない。 脱着の手順はレバーを引くだけのシンプルなもので、操作には力も必要なく気軽に扱うことができる。また、自転車のハンドルは、取り外された車いすのハンドルも兼ねるなど、無駄なく設計されている点にも注目したい。介助者は走行中、フロント部分(車いす)に座る方の様子を常に確認できると同時に、着座位置が高く保たれるため、前方視界も良好だ。車両重量は58kgで、車いすユーザー、介助者の許容体重はそれぞれ120kgとなっている。 車いすユーザー、介助者双方の気持ちを前向きにしてくれる個性的なモビリティだ。 車いすを脱着できる電動アシスト自転車は、コンパクトで取りまわしが簡単なうえ、3輪で安定感がある。フロントの車いす部分は後方に若干傾斜してジョイントされる。車いすの小さな前輪が路面から離れ、自転車走行を妨げないようになっている。 レバーで簡単にフロント部分を取り外すことができる。 脱着時にはリヤ部分が倒れないように、備え付けのスタンドを立てておく。 自転車のハンドルは、右側のスイッチ部分を取り替えるだけで、車いすのハンドルとして使われる。 フロントの車いす部分は、シートとサイドレストが細かく調節でき、フットレストも折り畳み式なので、子供から大人まで快適に使用することができる。 ジョイント部分にはセーフティロックも付いているので安全性が高い。 リチウムイオンのバッテリーは36V、12Ahタイプ。 電気によるアシストレベルは3段階でギヤは8段。道の状況や自分に合った走りが可能だ。バックギヤも備え、狭い場所での方向転換も容易にこなす。 オランダのファルセフェルトに本拠を置く「Van Raam」では、このホイールチェアバイクを直販せず、代理店ネットワークでの販売とサービスの対応を行なっている。価格は3500ユーロから4000ユーロだが、同社では製品のポテンシャルに大きな自信を持ち、「ひとりでも多くの人に試乗してもらいたい」としている。... ...
On 2018年12月31日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan ヨーロッパでは、車いすを後部座席に載せて自ら運転するタイプの福祉車両が多い。この車いす格納システム「Petri+Lehr Ladeboy S2(レイドボウイ S2)」もそのひとつ。運転席後ろのドアがスライドして開き、車内からアームが伸びて車いすを積み込む。ただ眺めているとなんの変哲もない仕組みで、思わずブースの前を素通りしてしまいそうになるのだが、よく見ると2つの非凡なことに気がつく。ひとつは、「車いすを搭載するスピードの速さ」、そしてもうひとつは「車いすを折り畳まないで搭載できる」ということである。 レイドボウイ S2は、車いすを折り畳むことなく車内に格納することができる珍しいタイプだ。その時間はわずか10秒。下ろす場合も同じ速さで、畳まれた車いすを展開するという手間もなく、そのまま座れるので非常にスムーズだ。実際の動きを見ると、10秒よりももっと短い時間に感じるほどスピーディ。日々の乗り降りにかかるストレスが大幅に軽減されるはずだ。 格納可能な車いすの重量は50kgまでで、折り畳み機能がない車いす、電動車いすにも対応する。また、人間工学に基づいたレイアウト、簡単なリモコン操作で、車いすユーザーが不安なく、そして素早くクルマの乗り降りを行えるように考えられている。 折り畳み機能がない車いすでも、専用のアタッチメントによって、自動的にアームに固定される。 車いすを宙に素早く持ち上げるアーム。剛性感のあるしっかりとした動きからクオリティの高さが伝わる。 車いすの角度を変えて、後ろに倒した状態にする。 後ろに90度倒された状態で、車いすはスライドしながら車内に引き込まれていく。 車いすがスッポリと車内に収まると同時にスライドドアが閉じる。 スムーズな格納を支えるレール部分。精度が高く、静かにスライドする。 折り畳まずに車いすを格納するのだが、コンパクトなメカのため、右横に一人乗車することができる。4ドアタイプのほぼすべての車両に取り付けることが可能だという。 1902年、フランクフルト近郊のディーツェンバッハに設立された「Petri+Lehr(ペトリ・レール)」は、「EDAG(エダック)」や「Rausch Technik(ラウシュ・テクニック)」といった福祉機器大手の提携企業として、車いす格納システムだけでなくさまざまな運転補助機器・システムを開発している。 Petri+Lehr(ペトリ・レール)は最大140kgの車いすを持ち上げ、格納することができる「Carolift(カロリフト)」も展示していた。 提携企業のRausch... ...
On 2018年12月25日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan まばゆいばかりのスポットライトを浴びて、ステージ上で躍動するパフォーマー。その一挙手一投足に熱い眼差しを向けて観客たちからは歓声が上がる。今回15回目となる日本最大級の手話ライブ「D’LIVE(ドライブ)」。その会場となる川崎のCLUB CITTA’(クラブチッタ)は、外の寒さを忘れてしまうほどに盛り上がり、研ぎ澄まされたパフォーマンスを披露する出演者と観客、スタッフが強い一体感を生み出すホットなイベントとなった。 自動車教習所のコヤマドライビングスクールが、「カッコイイ、スタイリッシュな、健聴者もろう者とともに楽しめるイベント」を目指して2004年に立ち上げた手話ライブは、毎年チケットが発売されて早々に完売する人気イベントだ。音楽に合わせて、行われるダイナミックな手話歌や躍動感あふれるダンスパフォーマンスは、多くの人が抱く「手話」の概念を大きく変えてきた。 今回もデフ(聴覚障害者)メンバーがいる18組によるハイレベルなステージパフォーマンスが展開され、1曲目から会場は熱気に包まれた。ソロ、デユオ、グループとさまざまなパフォーマーが、ヒップホップにダンス、ロック、バラードといった多彩なジャンルの楽曲で、圧倒的な完成度とエンターテイメント性の高さを見せつけた。D’LIVE常連組や多くのファンを持つパフォーマーも出演し、大きな声援、手話による応援を集めた。 聴覚障がいの方は、曲を覚えるのに健聴者よりもはるかに長い時間がかかり、それを手話に置き換えるのにも苦労するという。彼らのステージは、間違いなく日々のたゆまない練習による努力と情熱の賜物だろう。 D’LIVEは、耳が不自由な人、これから手話を覚えようとしている人に大きな勇気を与えるイベントであるが、それだけでなく、極めて洗練されたエンターテイメントであることにも驚きと感動を覚える。 じつに120名を超えるインストラクターが手話対応で教習を行うというコヤマドライビングスクールは、「純粋にパフォーマンスの質の高さ、素晴らしさを多くのひとに知ってもらいたい、手話に興味を持ってもらいたい」と願ってこのイベントを開催してきたという。その意志に賛同する人の輪はだんだんと大きくなり、今日では自治体や企業ばかりでなく、数多くの大学や高等学校の手話サークルなども協賛、協力するようになっている。今回のライブでも、パフォーマーはもちろん、運営スタッフたちの熱心な姿勢も印象に残った。華やかな照明やエモーショナルな音響、そしてスムーズな進行など、全般にわたってクオリティの高さが強く感じられたイベントは、彼らのおかげで、会場にいただれもがステージにすっかり魅了されていた。そして、あっという間に公演が終わってしまったという感想を、皆が抱いたはずだ。手話サークルの学生ボランティアは、駅から会場に向かう道案内をはじめ会場内での誘導、パフォーマーたちのサポートを日頃学ぶ手話を用いて笑顔で行なっていた。 会場には耳の不自由な方を上まわる数多くの健聴者が来場し、質の高い情熱的なパフォーマンスを楽しんだ。耳の不自由な方と健聴者とが互いの垣根を越えて手を取り合い、「つながった」というある種の高揚感が会場には満ちていた。 今年も奇跡のような時間を与えてくれたパフォーマーたちと主催者、運営スタッフのすべての方に拍手を贈りたい。早くも来年、第16回の開催を楽しみにしてしまうが、同時にこのようなイベントがひとつでも多く誕生することを願わずにはいられない。 コヤマドライビングスクール公式 ...
On 2018年12月20日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 近年めざましい進化を遂げている福祉車両。そのなかで大きなトレンドといえるのが、車いすユーザーが「自分で運転する」タイプの車両だ。とくに欧米では、自由なモビリティの追求が社会の大きなテーマとなっており、今回のREHACAREでもさまざまな運転補助装置付車が展示されていた。その多くは日本でもおなじみの車いすを自分で収納して運転するタイプなのだが、ここでは「車いすのまま乗り込んで運転できる」ものをご紹介する。 ミニバンやワゴン、大きめのサルーンが多く展示された会場で、ひときわ異彩を放つクルマがあった。ジープブランドのコンパクトSUV「レネゲード」だった。近づいてリヤハッチを開けると、傾斜の緩やかなスロープの先にはダッシュボードまでフラットなフロアが広がる。ブースを訪れた車いすユーザーは実際に乗り込み、ステアリングの前まで移動し、「自分が座っている車いすが運転席に早変わりする」という感覚をたしかめていた。彼らは一様に笑顔でスタッフに話しかけ、5万ユーロ(およそ650万円)という価格にも納得している様子だ。介助者の手を借りずに自分で乗車、運転できるクルマは、車いすユーザーのモビリティを劇的に改善してくれるアイテムとして、ヨーロッパでは以前から大きな関心を集めている。しかし、ミニバンをベースにした車両は存在するものの、このレネゲードのようにボディサイズの小さなモデルは皆無で、今後大きな需要が見込まれている。 世界的なワイン産地フランス西部ボルドーにあるA.C.A France(A.C.Aフランス)は、歩行が困難な方などのために年間約450台の福祉車両を手がけている。数年前からシュコダ(フォルクスワーゲンのチェコ子会社)のコンパクトモデルをベースに「車いすのまま乗り込み、運転できるクルマ」を開発していたが、このモデルが販売停止となったため断念。2年前からは、新たにジープ レネゲードで開発をスタートさせることになった。レネゲードを選んだ理由は、コンパクトなボディサイズながら、室内にある程度の高さがあり、車体が「四角」に近いことだったという。 これが福祉車両? と思ってしまうレネゲードのスポーティな外観。 リヤゲートを開けてスロープを展開。スロープの長さは短いが、低い位置から伸びるため角度が緩やかで、手動式の車いすでも登れるように設計されている。開発にあたっては標準のレネゲードから、フロア全体を下げるという大掛かりな改造が行われている。 一切シートがない車内。助手席と後席は折り畳み式になっているが、1台1台、ユーザーに合わせて「使いやすいクルマ」に仕上げられるという。リヤ開口部付近のルーフは、乗り込むときに頭をぶつけないよう工夫が施されている。 後席も広々としたスペースで、4名乗車、荷物の搭載も標準車と変わらなくできるのが便利だ。 助手席は畳まない状態でも、車いすの乗り降りに干渉しない。 「車いすで乗り込んでそのまま運転できる車両は、現在一般的に7~8万ユーロと高価です。ユーザーの方が、サイズや価格面でもっと手軽に購入できる車両を提供することが、目下の課題です」と語るのは、販売責任者のニコラ コンドットさん。A.C.Aフランスは、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンをはじめ、プジョー、フィアット、フォード、ジープといったメーカーのモデルをベースに、車いすを収納してから運転するタイプの車両を提供している。今後はそれに加え、各ブランドのコンパクトカーを中心に「車いすのまま運転できる」車両の開発を加速させていく考えだ。 A.C.Aフランスは、食事や入浴などの日常生活の動作を通じて心身のリハビリテーションを行う作業療法士のチームを社内に設置し、ユーザーにとって本当に質の高いサービスを追求している。また社内には、打ち合わせやフィッティング、購入してからの整備などで訪れたクライアントのために、高度にバリアフリー化された宿泊施設も完備している。 ...
On 2018年12月17日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 電動車いすの制限速度は日本では時速6kmとなっているが、国が異なるとそれも変わる(時速10kmのアメリカやオーストラリア、時速20kmのスウェーデンなど)。今回のリハケアでは「高速クルージング」を可能にする電動車いすが注目を集めていたが、ここではそのなかから、毎日使っている車いすをわずか数秒でスポーティな電動車いすに変えてしまう、脱着可能なアイテム「e-pilot(eパイロット)」を紹介する。 eパイロットは車いすにドッキングするだけで、力強いモーター走行を可能にするもので、時速20kmで走らせることができる。たとえば屋外は電動で、目的地に到着したら手動式にと、簡単に切り替えられるのだ。 軽量、強固なアルミ製フレームは、高い水圧で膨張させて成形するハイドロフォーミング技術で作られている。一充電で最大50km走行できるeパイロットは、大容量のリチウムイオンバッテリーがコンパクトに収められていて見た目もスタイリッシュだ。また、取り付けられる車いすがスポーティなタイプであれば、オフロード走行も可能という。 eパイロットは、簡単なアタッチメントを取り付けることで幅広い車いすに対応している。ブースでは、自社の車いす「twion(トゥイオン)」に取り付けて展示されていた。スポーティなデザインのトゥイオンは、小型モーターで駆動し、走行をアシストする車いすだ。目的地までeパイロットのモーター走行で向かい、着いた後はトゥイオンの電動アシストで移動するというライフスタイルを提案していた。 eパイロットはシンプルな操作で車いすとの脱着が可能。 車いすにジョイントする。 eパイロットの角度を起こすとロックされ、車いすの前輪が浮き上がる。トラクションをeパイロットにかけるためだが、高速走行に適さない径の小さな前輪を地面に接触させないためでもある。 初めてでもスムーズに移動できる自然な感覚のeパイロット。安定感があって、同時に小まわりもきく。ここでは、以前紹介したサスペンション機構を内蔵した車いすホイールSOFTWHEEL(ソフトホイール)に取り付けられている。 手で車輪を回してきっかけを作ると、そのまま軽快に走るトゥイオンは、大きな力を必要とせずに時速10km程度での走行を可能にしてくれる。 時速20kmという高速移動に対応するため、車いすには転倒防止の補助輪が装着される。 マネージャーのMarco Schmidt(マルコ シュミット)さんは、「eパイロットの魅力はスピードだけではありません。車輪は大きく作られていて、小さな段差や縁石を乗り越えることができます。舗装されていない道や水たまりも問題ありません」と語る。 スロットルグリップは、速度感覚がつかみやすいフィーリングになっている。後退への切り替えもボタン操作で行える。 左側のレバーにはクラクションとライトのボタンがある。 eパイロットは、本体重量が18.4 kg、許容最大重量は100kgとなっている。販売価格はおよそ70万円。eパイロットを製造・販売するAlberは、ドイツ北部のハルテンホルムで、「使い易さ」にこだわった電動モビリティ製品を手がけている。... ...
On 2018年12月13日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●autochair、Believe Japan 車いすに座っている方がクルマへ移乗する際、クルマのシートに車いすを近づけて身体を横にスライドさせることになる。だが、自身の身体を十分に支えることができない方は、介護者に抱えられて乗車することになる場合がある。その際、介護する方の負担は大きく、車いすのまま乗車するスロープ車などが一般的なソリューションとなっている。 ところが、「Smart Transfer Person Lift(スマート トランスファー パーソン リフト)」なら車いすユーザーの身体をリフトアップして、スムーズに乗車させてくれる。このリフトは、福祉車両ではない普通のクルマにも簡単に取り付けと取り外しができて、シートを改造する必要もない。さまざまなボディタイプに対応し、最大150kgまで持ち上げることができる。 スマート トランスファー パーソン リフトは、助手席だけでなく運転席にも取り付けが可能で、シートを改造しにくいスポーツカーなどに取り付けて楽しんでいるひともいるという。「普通のクルマのシート」に座りながらドライブを楽しめるのは大きな魅力だ。 軽量ながら剛性感の高いリフトは、動きが滑らかで安心感がある。 スマート トランスファー... ...
On 2018年12月10日 / By wpmaster© 2016-2020 Believe Japan, Inc. All rights reserved.