文●Believe Japan 写真●Believe Japan、マツダ E&T 2022/6/21(火)配信 先日お伝えした「マツダ E&T」の「スロープ式車いす移動車累計生産台数6万台記念式典」に華を添えた「キャロルi」。「世の中にないものは作る」という熱い思いから、当時のスタッフが試行錯誤して生み出したこの福祉車両は、一般ユーザーにも手が届く価格と取りまわしに優れた軽自動車の利点をあわせた画期的な1台だった。それゆえ、この記念式典には「マツダ E&T」の創造力が身を結んだ象徴として、なんとしても実車を展示したい!という思いだったという。今回は、いかにして「キャロルi」が復活したのかという過程を、製造技術部の川本健司さんと吉川陽三さん、業務革新部の登根孝志さんに伺った。 そもそも車両がない! 初代「キャロルi」の生産台数は200台強。実用で使われるクルマの性格上、程度のいい中古車を見つけるのは難しいと予想していたというが、それは想像を超えていた。そう、中古車市場には物件が1台もなかったのである。某オークションで過去に1台だけ出品されていた履歴こそ見つけたが、それ以降、物件情報は皆無。「痺れをきらして社会福祉協議会や関係団体への問い合わせ、はたまた社員の目撃情報をもとに、施設や役所に片っ端から電話し、場合によっては福祉車両のセールスと勘違いされたこともありました(登根さん)」。そうこうして、ようやくネット上で1台を発見。間髪入れずに掲載店に連絡をいれ、車両を確保したのだが……。 さてどのように仕上げるか やっとの思いで探し当てた1台。ネット上の写真ではほどほどの状態に見えたが、納車された車両の程度は想像以上にヤレていた。「当初は予算の関係もあり、外観と車いすスペースを修復し構内を走行できる状態を目指していましたが、作業を進めていくうちに徹底的に仕上げたい!という思いがレストアメンバーに湧き上がりました。そこで、追加予算の申請、承認を得て、「キャロルi」は徹底的に仕上げられることになったのです(川本さん)」。 ここからがプロの仕事 「マツダ E&T」は「初代ロードスター(NA)」のレストアサービスや、モーターショーの展示車両なども手がけるスペシャリスト。「キャロルi」も、まずはついている部品をすべて取り外すことから始まり、レストア作業は以下の項目を軸に行われていった。 ・ボディーパネルの凹み部分の修正、板金、塗装・足まわり、下まわりの塗装、修理・エンジン部分の磨き、塗装、修理・シート、フロアマットの洗浄 文字にすると簡単に見えるが、やはり27年間の劣化はかなりのものだったという。「まずはゴム、ホース類の固着、プラスチック部分の硬化。このあたりの部品は組み直す際に新品を使うのですが、古いクルマの場合は多くの部品が生産中止になっています。そのため汎用性があり購入できない部品は代替品の加工や新規に製作が必要でした。また、続いて手を焼いたのが板金。元の状態はフロントフェンダーが一部変形しており、エクボも複数。テールゲートのダメージも大きく、凹んだ箇所はデントリペアやプーリングキットによって引き出し、当て盤などを使用しハンマーリングで修繕しています。さらに、プラスチック部分の一部は3次元測定器で計測のうえ製作。車いす固定装置の金属部分も板金加工して製作しました(吉川さん)」。我々が思わず感動したのが当時のサプライヤーの協力。「キャロルi」オリジナルのエンブレムは山陽マーク株式会社が、専用の車いすは株式会社松永製作所が、車いすスペースのマットは株式会社すぎはらが「キャロルi」のレストアにかける思いに賛同し、復刻してくれたのだという。 まさに関係者が一丸となって実現した「キャロルi」のフルレストア。今後、福祉イベントなどでの展示も検討されているというから楽しみにしたい。 キャロルi について 1995年に誕生した「キャロルi」は、当時のキャロルをベースに開発されたが、車いすを収納するためにさまざまな架装が行われている。外観上のポイントは、スロープを組み込んだテールゲートとルーフ後部のハイルーフ化を実施。また、無理なく車いすを載せるために、燃料タンクの移設に加え、サスペンションの取り付け位置なども変更されている。いまでこそ、軽自動車の車いす移動車はさらにユーティリティに優れたトールタイプやワンボックスタイプとなるが、車いすに乗った状態で「キャロルi」に乗り込んでみると、非常に快適な空間が確保されているのに驚いた。ハイルーフのおかげで圧迫感がないどころか、身長180㎝以上の筆者が収まっても、明るい視界が広がっているのだ。また、床面地上高170㎜という超低床フロアもこのクルマの利便性の高さを後押ししている。いわゆるスロープ角が小さくなるので、車いすを載せる際の負担が少ないのだ。専用の車いすが必要だが、ワンタッチで固定できる装置もかなり画期的だといえる。... ...
On 2022年6月21日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●Believe Japan、ホンダ 2022/5/26(木)配信 ホンダが6代目にあたる新型のステップワゴンを5月27日に発売する。新型には、ビリーヴカー(福祉車両)として、「スパーダ」をベースにした「車いす仕様車」と「サイドリフトアップシート車」を設定。価格は339万6000円~383万円(非課税)。 新型ステップワゴンは、「素敵な暮らし」をグランドコンセプトに、乗る人すべての安心と自由への思いに応えるクルマとして作られた。乗り物酔いしにくいように水平基調のベルトラインを室内に通したり、シートの形状を工夫することで2列目、3列目からの視界を広くするなどさまざまなアイデアが込められている。同時開発となった福祉車両でもそのコンセプトは受け継がれているという。 ステップワゴン「車いす仕様車」では、車いすを2列目、3列目、そして2列目および3列目に乗車するようにできるが、どのポジションに乗車しても見晴らしがいいのが自慢。その理由は3列目シートの収納方法にある。ライバル車は3列目シートを窓側に跳ね上げる構造のため、車いすで乗車すると側面の視界が遮られてしまうが、ステップワゴンでは3列目シートを床下に収納するため、車いすで3列目に乗車しても窓がそのまま使えるのだ。また、3列目に車いすで乗車したときにもとなりの席が使えるようにするなど、介助者の利便性も考えられている。 新型では、福祉車両の開発にあたって実際のユーザーから利用実態を調査し、それを反映したという。そのひとつが、リクライニング車いすへの対応。2列目の床に専用の固定点を増設することでこれを実現した(2列目乗車タイプ)。スロープの角度や操作のために必要な力の具合なども利用者の意見を参考している。メモリー機能付きパワーテールゲートを全車標準装備としたのも、利用者に女性が多く、重たいバックドアの開け閉めが不便だという声に答えたからだ。 こうしたユーザー目線の徹底は、機能面だけに止まらない。通常、ミニバンの福祉車両は施設など事業者が購入するケースが多く、そのためコストパフォーマンスのよさが厳しくチェックされるが、ステップワゴンの場合、ユーザーの多くが個人所有のため、求められるニーズが異なってくるのだという。つまり、福祉車両であっても、クルマとしての魅力が同時に求められるのだ。 そこで新型ではベースとなるグレードを上質さをテーマにした「スパーダ」に設定。走行中の死角を補う「ブラインドスポット インフォメーション」や、3列目まで空調を独自に操作できる「トリプルゾーンコントロールフルオートエアコンディショナー」といった充実した装備に加えて、デザイン面でも気を配る。フラットな床はフローリング仕上げで、落ち着いたダーク調の木目柄がシックな雰囲気を演出。バックドアなどのデザインもできるかぎりスタイリッシュなものになるように、ベースモデルの設計段階から参画。プラチナ調クロームメッキでこだわりの外観デザインを引き締めた。その出来栄えに開発スタッフは「乗っている人が誇りに思えるようなカッコいいデザインに仕上がった」と胸を張る。 福祉車両としての機能、利便性に加えて、クルマ本来の魅力を大いに高めた新型ステップワゴンは、福祉車両のある暮らしを明るく、楽しくしてくれる力作だ。 ●価格帯(消費税非課税)車いす仕様車:355万5000円〜383万円サイドリフトアップシート車:339万6000円〜363万6000円 ...
On 2022年5月26日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●Believe Japan 、マツダ E&T 2022/5/25(水)配信 4月29日、広島に本社のある「マツダE&T」にて、「スロープ式車いす移動車累計生産台数6万台記念式典」が開催された。「マツダE&T」は、マツダグループでエンジニアリング事業(量産車開発、派生車開発)やカスタマイズ事業(福祉車両、教習車等の特装車両)などを手がける総合エンジニアリング会社で、先般ビリーヴ・チャンネルでもご紹介した「MX-30 SeDV(セルフエンパワーメント・ドライビング・ビークル)」の開発も担当している。 式典は、代表取締役社長の野間幸治さんの挨拶から始まり、製造技術部の岸本勇次さん、ボデー・シャシー設計部 主幹の大塚孝江さん、PT性能・制御システム開発部の大上真弘さん、取締役常務執行役員の萩原國昭さんと続き、同時に全スタッフへ配信されるという形態だったが、記念すべきスロープ式車いす移動車の第1号車である「キャロルi」も展示され、会場に華を添えていた。 この日のためにフルレストアされたという「キャロルi」。その誕生は、なんと1995年というから驚くばかり。いまから27年も前に、いかにしてこのクルマが誕生したのか。また、6万台ものスロープ式車いす移動車を生産し続けている背景とはいかに? 今回特別に、特装車開発リーダーの経験をお持ちの「マツダ E&T」企画管理本部の方々に話を伺った。 マツダE&Tが福祉車両を手がけることになった背景を教えてください。 村田さん 「キャロルi」が登場した1995年というのは、いわゆるバブル崩壊後。そのころ多くの会社がそうであったように、我々もより会社を強くするための新規事業を模索していました。そこで、社内公募を行い、当時の役員が満場一致でOKを出したのが、この「キャロルi」でした。 米田さん この提案は介護ヘルパーをする母親を持つ社員からでした。ご存知のように、車いすでの移動はさまざまな制約があります。「少しでも母の負担を軽くできれば」との思いがこの提案に結びつきました。 軽自動車である「キャロルi」が選ばれた理由とは? 小泉さん 当時車いすを載せることができるのは、大きな病院や企業が所有するバンやバス的なものが主だったものでした。それらを個人が所有するのはハードルが高い。それに家庭内で介護される方に女性が多かったこともあり、日本の道路事情から取りまわし性に優れ、価格も安く抑えられる軽自動車に着目したというわけです。 「キャロルi」制作にあたり、苦労されたところはありますか? 米田さん 前例がないチャレンジだったので、苦労といえばすべて苦労でした(笑)。まずは車いす乗員スペースの創出。乗車位置を決め込んでから、フロア、ルーフの改造、燃料タンクの新設・移設、リヤサスの改造など多岐にわたります。とくにルーフ部分はFRPで仕上がっているのですが、当時この大きさのものを型取りして仕上げることが難しく、本当に苦労しました。 レストアされた車両をじっくりチェックさせてもらったが、その完成度の高さにちょっと驚いてしまった。車いすは専用のものが使用されているが、まずリヤゲート展開時の角度が浅いため、車いすを載せる際の介助側の負担が少ない。そして、車いすはストレスなく車両にワンタッチで固定できるではないか! さらに、車いすに乗ったまま乗車してみると、乗車後の頭上スペースや視界、そして手すりの位置など、居心地のいい空間が実現されているのだ。これを企画立案から販売まで。わずか1年で実現したというのだから凄い。 「キャロルi」以降に手がけた福祉車両、また開発時に注力している点を教えてください。 村田さん 車いす移動車は、「キャロル」、「フレアワゴン」、「デミオ」、「プレマシー」等。回転シート車は、「デミオ」、「プレマシー」等。リフトアップシート車は、「MPV」、「ビアンテ」、「CX-5」等。運転補助装置搭載車は、「ロードスター」、「アクセラ」、「MX-30」をそれぞれ手掛けてまいりました。... ...
On 2022年5月25日 / By wpmaster2022/4/27(水)配信 4月21日、国内にある車いす、車いす移動車、バスを開発製造するメーカー12社が協力して「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」を設立し、ISO(国際標準化機構)に規格化を提案する「車椅子簡易固定システム」の早期市場浸透、ならびに普及を目指していくことを明らかにした。 幹事社としてスズキ株式会社(車いす移動車メーカー)、トヨタ自動車株式会社(車いす移動車メーカー)、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社(車いす移動車メーカー)、日進医療器株式会社(車椅子メーカー)、本田技研工業株式会社(車いす移動車メーカー)、株式会社松永製作所(車椅子メーカー)の6社(50音順)が参画し、ダイハツ工業株式会社(車いす移動車メーカー)が事務局を担う。そのほか、いすゞ自動車株式会社(バスメーカー)と株式会社カワムラサイクル(車椅子メーカー)、ジェイバス株式会社(バスメーカー)、日野自動車株式会社(バスメーカー)、株式会社ミキ(車椅子メーカー)が協力し、計12社によるコンソーシアムを形成。経済産業省が推進する事業「車椅子の自動車等へのワンタッチ固定機器に関する国際標準化」と連携していく。 車いすの車両における簡易固定標準化(ISO規格化)は、もっと安心して、スムーズに車いすのまま車両に乗れることが期待される。 160を超える世界各国の標準化団体で構成される国際標準化機構によるISO規格の発行は、新規提案後、通例、最短でも2~3年かかると言われるが、日本国内の高齢者の増加は待ったなしの状況にある。とくに団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年以降、車いす利用者の急激な増加が想定される。 この「車椅子簡易固定標準化コンソーシアム」は、22年度内のISO規格提案(予定)に連動し、車いすメーカー、車いす移動車メーカー、バスメーカーが、「規格案」に沿って極力早期の対応商品の開発、市場投入ができるよう、また利用者に新しい規格とそのメリットを知ってもらえるよう、連携活動していくためのプラットフォームとなる。 グローバル化が当たり前となっている今日。ある国で設計、製造された工業製品がほかの国でも販売、流通できるようにするため、主に技術的な障壁などを取り除く方法として重要な役割を担うのが国際規格である。本来、通商上の障壁を取り除くためのものではあるが、今日においては、消費者が安心して購入、使用できるよう安全性を担保するものとしての役割もこれまで以上に重視されている。 今回、国内メーカーが団結してコンソーシアムが組織されたことにより、福祉機器メーカーだけでなく、利用者や消費者団体、中央行政や有識者にも強いメッセージが送られ、より安全で使い勝手の優れた車いす生活の実現が近づくことを期待したい。 ...
On 2022年4月27日 / By wpmaster2022/4/8(金)配信 Hondaの中古車サブスクリプションサービス展開エリアが全国へ拡大 Honda は、中古車サブスクリプションサービス「Honda Monthly Owner(ホンダ マンスリー オーナー)」の展開エリアを、2022年4月7日(木)より全国47都道府県、378拠点に拡大すると発表した。 Honda Monthly Ownerは、所有する喜びと利用の気軽さを両立した、国内自動車メーカー唯一の、1カ月単位でHonda車の利用ができるサブスクリプションサービス。2020年1月のサービス開始以降、「これからHonda車に乗ってみたい」というひとに加え、複数所有のお試しや、若年層を中心とした「クルマを保有する生活を体感してみたい」という声などのニーズに対し、「最短1カ月から利用できる」手軽さや、「諸費用込み」という料金体系のわかりやすさについて評価を受け、現在約3900名に会員登録者がいるという。 【Honda Monthly Ownerサービス概要】 税金やメンテナンス費用、自動車保険料などがワンパックで、最短1カ月から最長11カ月まで、定額でHondaの中古車を利用できるサブスクリプションサービス。Hondaの安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」をはじめとした、先進装備を搭載した車両に加え、「車いす仕様車」など充実のラインアップから選ぶことができる。 Honda Monthly OwnerのHPはこちら... ...
On 2022年4月8日 / By wpmaster文●石井昌道 写真●Believe Japan 2022/3/11(金)配信 ホンダは手動運転補助装置付き自動車のテックマチックシステムを1976年、足動運転補助装置付き自動車のフランツシステムを1982年に発売を開始している。手動運転補助装置付き自動車は他メーカーのモデルも含めて複数回の試乗経験があり、いまではスムーズに運転できるようになっているが、昨秋に初めて試乗したフランツシステムは少し戸惑った。右足によるアクセルとブレーキのペダル操作は何の問題もないものの、ウインカーなどのスイッチ操作も兼任しなくてはならない。また、左足によるハンドル操作は、普段はあまり使わない動きだったこともあって慣れるのに時間がかかった。 今回は2回目の試乗。操作方法はわかっているうえ、左足の動かし方もイメージできていたので、落ち着いて走りだすことができた。 まず、乗り込むには右足のつま先をドアノブに引っかけてドアを開けながら、身体を入れ込めるようにある程度は手前に引いていかなければならないのだが、これがまた難しい。片足立ちで不安定になってしまう。ただし、フランツシステムを相棒にしようと本気で挑む人のほとんどは、こういった操作には慣れていて難なくこなしてしまうそうだ。 試乗車はオプションのパッシブシートベルトが装備されているので、シートに座れば自動的にシートベルトが装着できる。 無事にシートに収まった後に走り出すには、まずシステム始動およびシフトレバーを操作するために、ブレーキペダルを踏み続けた状態にする必要がある。そのために、ブレーキペダル上方にロック用ボタンがあり、これを押しながらペダルを踏み込めばロック状態に。そして右足でPOWERボタンを押し込んでシステムが始動。そのまま、足用シフトペダルでDレンジを選択し、ブレーキ・ロックを解除すれば走り出せる。 現行フィットは電子制御パーキングブレーキが採用されているので、ブレーキ・ロックを解除しても停止したままだが、アクセル・ペダルを操作することで自動解除され、クリープで動きだす。アクセルとブレーキの操作は、ノーマル車両と同様なので何も問題ない。 ハンドル操作は左足で、自転車のペダルのように縦回転させて行う。下に押し込むときは力が入りやすいが、上に引き上げるときはちょっとだけやりづらさがある。普段はあまり使わない筋肉を動かしているからだが、これは慣れの問題であり、2回目の試乗で勝手はわかっていたので、今回は戸惑いがほとんどなかった。 前回は、普段は手でハンドル操作している自分にとって、足による操作は大雑把になってしまうのではないかという心配があって慎重になりすぎ、それが操作遅れを誘発していた。また、四つ角を曲がるときやUターンのときなど、ハンドル操作量が多いときにも慎重だったので操作が遅かったが、今回は緩いカーブでは繊細に、操作量が多いときは大胆にとメリハリをつけるようにしていったら、上手に動かせるようになり、クルマとの一体感がでてきた。操るのが楽しいと感じられるようになったのだ。 運転しながら足用コンビネーションスイッチを操作することもマスターしなくてはならない。頻繁に使うウインカーは、慣れてくれば左はつま先でブレーキペダルを踏みながらかかとでポンッと押し込めるので楽に操作できる。MTでスポーツ走行するときのヒール&トーと同じ要領だ。ところが右は距離が離れているのでブレーキペダルを踏みながらの操作は無理。道路交通法では右左折や転回する地点の30メートル手前でウインカーを点滅させることになっているので、右折時にはアクセルペダルもブレーキペダルも操作しない空走状態で右足でウインカースイッチを押し込む必要が出てくる。余裕があれば可能だが、そうではないシチュエーションも出てくる。そんなときは交差点で一時停止してブレーキ・ロックを使い、ウインカーを操作、ブレーキ・ロック解除して走りだすことになる。自車を安全に走らせるには仕方ない緊急回避だろう。手順はちょっと煩わしく、最初のうちは頭で考えながらゆっくりと操作していたが、慣れてくるとほぼ無意識で素早く操作できるようになった。 足用コンビネーションスイッチは、個々のドライバーの好みや操作のしやすさに合わせて9パターンが用意されており、購入時に選択できるようになっている。 2回目の試乗にして、早くも慣れてきてフランツシステムが頼もしい相棒になってきた。ノーマルの市販車をベースにモディファイしたシステムなので、すべてが完璧というわけではないが、自らの意志で移動の自由を獲得したい、運転の喜びを味わいたいという思いが強ければ、問題なく使いこなせるだろう。安全運転を支援するHonda SENSINGも性能が向上してきているので心強い(過信は禁物だが)。運転操作を覚えるのに多少のハードルはあるが、マスターしたときの喜び、得られる価値は大きいはずだ。 自動車ジャーナリスト 石井昌道 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転にも参加する自動車ジャーナリスト。幅広い視野と知見で的確な評論を行う。 ※撮影車両には、一部オプション装備が含まれています。 ホンダ... ...
On 2022年3月11日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/11/13(土)配信 11月10日~12日にお台場で開催された国際福祉機器展で、おもしろい1台を発見したのでご紹介したい。それは、ホンダN-VANをベースにした「車いす移動車」のコンセプトモデル。制作したのは、身体障がい者用の自動車運転装置(フジコン)を長年開発し続けているフジオート。これまでも運転でハンディになる部分を補う各種装置(手動装置/左アクセル/ステアリンググリップ/左ウインカー/右ワイパー/シフトレバー/アシストグリップ/延長ペダル/足動装置など)を市場に送り出している、福祉車両装置開発の老舗だ。 今回のN-VANコンセプトのポイントは以下の3つ。 【車いすのひとが一人で運転できる自操式車両であること】 車いすに乗ったまま運転席の近くまで移動。車内で運転席に移乗して、自身で運転できる仕様となっている。バックドアに備わる電動リフトから、リモコンを使って乗り込むという設計だ。そして、助手席の位置まで車いすで移動し、運転席に移乗。展示車両は移乗のしやすさを重視して。コラムタイプの手動運転装置が取り付けられていた。 【軽自動車のリフト付き車いす移動車であること】 プラットフォーム長1000mmの専用小型リフト(耐荷重150kg)を開発。定員は4名(運転席、助手席、右セカンドシート、車いす)、実際に車いすのひとが運転する場合は3名となることを想定。 【避難時仕様であること】 昨今の非常時に備え、車いすのひとが一時的に避難したいときに少しの間生活できるような装備を設置。テントや簡易トイレ、机、ドリンクホルダー、小型シンクなどが備わっている。 「キャンピングカーブームや優れたユーティリティを誇るN-VANからヒントを得ました。今回この福祉機器展でみなさんにさまざまな意見や感想を伺い、将来的に販売を実現していきたいです」と話を伺った。 まだコンセプトモデルのため具体的な車両価格は出ていないが、リフトの搭載費用として改造費80万円~となるとのこと。いづれにしても、見ているだけで、話を聞いているだけでワクワクさせてくれる1台だった。 フジコン公式サイトhttps://www.fujicon.co.jp ...
On 2021年11月13日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/7/8(木)配信 家族の介護など、ある日突然必要になることが多い福祉車両。しかし、車いすが必要になった家庭では、家のバリアフリー化に加え福祉車両をすぐに購入するのは、やはりハードルが高いだろう。そんなとき、思いのほか便利なのが「必要なときに借りることができる」レンタカーの存在だ。実際、筆者の知り合いも週に一度レンタカーを借り、親御さんを病院に送迎しているひとがいるが、レンタカーの魅力を「介護タクシーでは親も気疲れするし、家族だけの空間で移動することは気分転換にもなり、とても楽しい一時になる」と語っている。 そんなわけで、我々も実際に借りて試すことにした。今回は車種が豊富なことからトヨタレンタカーに注目。トヨタでは「ウェルキャブ」という名称を使用しているが、「車いす仕様車」だけでも、シエンタ、エスクァイア、ノア、ヴォクシー、ヴェルファイア、ハイエースが選べ、車いすを使わないまでも足腰に不安がある方向けの「サイドリフトアップシート車」、「助手席リフトアップシート車」、「助手席回転スライドシート車」、「サイドアクセス車」を選ぶことができるのだ(店舗によるため、それぞれ確認が必要)。 チョイスしたのは「ウェルキャブ」レンタカーのなかでも人気だというシエンタ。コンパクトサイズなので取りまわし性に優れ、料金もリーズナブル。こちらを事前に予約しておき、当日店舗に向かった。手続きは、拍子抜けするほど簡単だった。そう、福祉車両のレンタカーといっても、借用方法は普通のレンタカーとまったく同じ。唯一必要なのは、車種ごとに異なる使い方を教えてもらうぐらいなのだ。今回、我々は使用する車いすを持ち込んで説明を受けたが、車だけ受け取って自宅で初めて車いすを載せようという人は、ここでしっかり説明を聞いておくことをオススメしたい。 そして借り出したあとは、楽しいドライブへ!と言いたいところだが、ここで福祉車両の運転方法をあらためてお伝えしたい。それは、「急がつく操作はとにかく避けるべし」ということ。車いすの固定は専用金具等でしっかり行われているが、車両に備わっている通常のシートとは根本的に取り付け剛性が異なるため、たとえばドライバーがいつものペースでコーナーを曲がっていても、車いすに乗っているひとには大きな負担になることが多い。それではせっかくのドライブも楽しめなくなってしまう。得てして、乗せてもらう人は「快適ですよ、大丈夫ですよ」とドライバーを気遣うことが多いから忘れがちになるが、ここは気持ちを切り替えて、どのような状況でも丁寧な運転を心がけよう。これさえしっかり守れれば、楽しい時間を過ごせるはず! 今回は主に体験するのが目的のため短時間の利用だったが、これだけ気軽に借りることができるなら、利用価値は十分にあることが実感できた。冒頭に知り合いのコメントを記したが、介護タクシーとの使い分けでもいいし、購入前に車両の使い勝手を確かめるという点でも、大いに試してみる価値があると思う。 借用手続きは通常のレンタカーとまったく同じ。そして、意外と知られていないのが「ウェルキャブ」利用時は基本料金が非課税になることだ(一部車種・仕様を除く)。また、標準車の基本料金を割引してくれる「福祉割引」という制度もある(身体障がい者手帳、療育手帳の提示が必要)。 借用したシエンタは、ナビ・ETCが搭載され、使用にはまったく不都合なし。6時間の一般料金で合計8650円(基本料金=7000円、免責補償料=1100円、添付品料金=550円)の支払いだった。 車両の取り扱い方法を説明をしてくれた権正拓也さん。「操作がわかりやすいのがトヨタウェルキャブシリーズの特徴ですが、車種ごとに異なる箇所やポイントがあるので、それらをしっかり説明させていただきます」と、慣れた感じでシエンタの操作方法を教えてもらった。 トヨタレンタカー羽田空港店 今回車両を借りたのは、羽田空港からほど近い環状八号線沿いで京急空港線大鳥居駅から徒歩1分にある「羽田空港店」。リニューアルして間もないという店舗はビル内にあるため、天候を気にせず取り扱いの説明を受けることができる。 問い合わせ:トヨタレンタカー https://rent.toyota.co.jp ...
On 2021年7月8日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 2021/4/15(木)配信 福祉用具の活用で、障がい者の自立支援や安全・安心な介護の実現を目指すアビリティーズ。今回彼らが独自輸入したビリーヴカー(福祉車両)を試乗することができたので、ご報告したい。 車両は「フォクルクスワーゲン キャディ マキシ」。このクルマは欧州ではかなりポピュラーな存在で、商用利用を目的としているだけに、ガッチリと作られているのが特徴。実際、現地では宅配サービスや花屋さん、警察や工事現場など、あらゆるところで活躍している。ちなみに、5人乗りのスタンダードボディと7人乗りのロングホイールベース版があり、後者は「マキシ」と呼ばれている。そして、この車両をイタリアのフォカッチャグループがビリーヴカーとして架装した「ジニアスランプ(5名+車いす1台)」が、今回試乗したモデルである。 導入の背景を、販売責任者である中村さんに伺った。 「日本には優れた福祉車両がたくさんありますが、単体重量で200kgにもなる電動車いすを載せることができる車両となると、主に施設が使用するリフト型に限られてしまいます。そこで、もっとファミリーユースに適したモデルはないかと検討し続け、最終的にこのモデルを輸入することに行き着きました」。 この車両は右ハンドル仕様で、スリーサイズは全長4850mm×全幅1793mm×全高1868mm。経済的な直列4気筒2Lディーゼルターボで、トランスミッションにはツインクラッチの6速DSGが搭載されている。「耐荷重300kg、車いすを載せないときのスロープの床面収納、そして、故障リスクの少ない手動式にこだわりました」と中村さん。事実、日本ではスロープに電動式が採用されることがほとんどだが、欧州では、手動式が選ばれることが多い。 早速、高速道、一般道をじっくり走らせてもらったが、素直に運転しやすい!というのが第一印象。運転席からのボディの見切りがいいことに加え、1800mm以下の全幅だから、コンビニやちょっとしたところでの駐車でストレスがない。また、2Lディーゼルターボと6速DSGとの組み合わせも絶妙で、アクセルを踏み込めば1810kgの車重をグイグイと加速させる。このDSGは、ある程度車速がのったときにコースティング機能が働くため(アクセルをオフにするとニュートラルに入る)、さらなる燃費性能も期待できそうだ。 そして、次に関心したのが優れたボディ剛性感。とくに高速走行中にはステアリング、シート、ボディがひとつの塊としてしっかり体に伝わってくるので、疲労感が少ない。これは、制限速度無制限区間のあるアウトバーンがある、ドイツ車ならではの美点だろう。あらためてクルマというのは基本的なところがいかに重要か感じ入った。 最後は気になる後席についても触れておきたい。担当したスタッフは「広さと開放感がある」ところが美点。あえてデメリットをあげてもらうと「運転席との会話は十分できるが、遮音性がさらにアップすると魅力が増す」という感想だった。 車両価格は600万円(消費税免除)。納車後の点検整備は、日産自動車販売株式会社が行うという。既存の大型国産ミニバンに電動車いすを載せる加工をすると、800万~1000万円近くすることもあるというだけに、コストパフォーマンスに優れた1台だと思うが、いかがだろうか。 アビリティーズの問い合わせ先:https://www.abilities.jp/blog/event/caddy_maxi_Presentation20210416 ...
On 2021年4月15日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●ホンダ 2021/3/9(火)配信 今日、「家族に高齢者がいる」、「乗り降りがしんどい」など、アクセスが便利なクルマを必要としている潜在的なユーザーは少なくない。それに応えるビリーヴカー(福祉車両)は、設定車種が大幅に拡大され、趣味やライフスタイルに合った車種選びも可能になってきている。しかし、買い替えコストや「自身で歩くことができる」などの状況によって、ビリーヴカーを購入するまでに至らないケースもあるだろう。多くの場合は、できれば後付けのパーツで、手軽にクルマを便利で安心なものにしたいと考えているのではないだろうか。 アクセサリーといえば、エアロやアルミホイール、LEDランプなどドレスアップ方向のパーツをイメージしがちだが、じつは高齢者にやさしいパーツがたくさんあるのをご存知だろうか? これらのパーツは、高齢の家族と暮らしていればもちろん、そうではなくても、広く一般的に使えるアクセサリーであったりする。手軽なカスタムを可能にするアクセサリーには数々の製品がラインアップされている。今回はその中から、ホンダ車に注目。実際にどのようなアクセサリーがあるのか見てみたいと思う。 幅広い年代のファミリー層から高い人気を集める「N-BOX」や「フリード」、「ステップワゴン」、そして「オデッセイ」には高齢者ユーザーのクルマ移動を快適にしてくれるアクセサリーが豊富に用意されている。 つかめる安心感 足もとに不安があると、どこかにつかまる必要がある。ビリーヴカーでは、一般車にはない場所にさまざまなグリップが取り付けられている。あらゆるタイプがあるが、ここでは代表的なものを一部紹介する。 [シートバックグリップ(N-BOX、フリード、ステップワゴン )] 横に広くつかみやすいタイプの乗降用「シートバックグリップ」は、乗り降り時と車内での移動に便利だ。アクセスを簡単で安全にしてくれる。価格は1万780円(税込み)。 [フロアグリップ(フリード、ステップワゴン)] 助手席の座面横に取り付けられた「フロアグリップ」は、しっかりとつかむことができ、クルマの乗降時に加え、走行中の姿勢安定にも効果を発揮する。多くの人にとって便利な優れものである。本体とグリップパッドの合計価格は2万6950円(税込み)。 [吊革グリップ(N-BOX、フリード、ステップワゴン、オデッセイ )] 山道を走行する時など、後席に座る人は上半身を前に乗り出し、サイドウインドウの上に取り付けられたグリップをつかんでいることが多い。ところが、体格や年齢などによっては、腕を上げている姿勢はかなりの負担になることもある。そこで、通常のグリップを「吊革(つりかわ)」タイプにしてしまうアクセサリーが「吊革グリップ」だ。腕を高く上げる必要がなく、ラクな姿勢でしっかりと握ることができる。使用しないときは巻き上げ可能で、視界の邪魔にならない。価格は5280円(税込み)。 [ドリンクホルダーグリップ(フリード、ステップワゴン)] ダッシュボードのドア側に設置されたドリンクホルダーは、丁度よい取手としてつかみながら車内に乗り込む場合もあるが、これをつかみやすい「グリップ」にしてしまうアクセサリーがある。腕を上げなくても手がかけられる高さにある「ドリンクホルダーグリップ」は、価格は9350円(税込み)。 みんなに優しい装備 高齢者や歩行困難な方だけでなく、多くの人にとっても「あれば便利」なアクセサリーもある。 [テールゲートストラップ(N-BOX、フリード、ステップワゴン、オデッセイ )] 車高が高めのクルマの場合、リヤゲートを開けるのは問題ないが、閉めるときにドアが届かないという場合がある。つかみやすく、ラクに閉められる「テールゲートストラップ」は背が届かない、腕を上げにくいといったユーザーにとって優しいアクセサリーだ。価格は1100円(税込み)。... ...
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