文と写真●Believe Japan 超高齢化社会に向かっていく日本では、すでに介護される方も介護する方も共に高齢者という「老老介護」の状況が広まっている。そんななか今回のモーターショーでホンダが発表した電動車いすのコンセプトモデルが、注目を集めていた。 「人と人の触れ合い」をテーマにした電動車いす「ふれモビ Concept」は、1人乗りの電動車いすとほぼ同じサイズで前後2名乗車を可能としている。2人での移動が気軽にできることで、積極的に外出したくなることを目指して開発された。 開発デザイナーがスーパーマーケットで「お年寄りのご婦人が買い物カゴを持ちながら、旦那さんが乗った車いすを押している」光景に出会い、アイデアが生まれたというタンデムスタイルの車いす。年齢を重ねてもパートナー同士が、あらためて一緒にいる安心や幸せを感じられ、「一緒に出かけることが楽しみになる」モビリティとして開発されたという。 2人乗車でも力強く滑らかに走行する。展示車はリモコン操作によって走行し、本体に操作系は見当たらない。方向転換は後輪で行い、将来的には自動運転も視野に入れているという。 後ろへの乗り込みはワンタッチで行える。ステップも低くアクセスがよい。 開発者による初期のスケッチには、明るい表情で一緒の車いすに乗りながら元気に買い物をする老夫婦の姿が描かれている。 デモンストレーションには、コンパクトな電動パーソナルモビリティ「チェアモビ Concept」と、人とコミュニケーションがとれるAIロボット「Ai-Miimo Concept」が登場した。 「チェアモビ Concept」は狭い所の移動もスムーズな小まわり性が特徴で、屋内から屋外まで気兼ねなく使えるチェア型のモビリティ。坂道でも座面を水平に保つ機能、高さ調節機能も備える。さまざまなシーンで歩行者同等のフレキシブルな動きを発揮する。 電動で自走しながら芝刈りをする「Miimo」をベースにAIを搭載した「Ai-Miimo... ...
On 2017年11月7日 / By wpmaster文●Believe Japan 写真●Believe Japan、ダイハツ ダイハツは今回の東京モーターショーで、少子高齢化や働き方の多様化といった、今日の日本社会が直面するさまざまな課題や環境の変化に対応したコンセプトモデルを4台発表した。いずれも車名には「DAIHATSU NEWNESS」の略である「DN」の2文字が付けられているが、ここでとくに注目したいのは、車いすの乗り降りも手軽で幅広い業種や用途に対応できる軽自動車「DNプロカーゴ」。未来の働く人のパートナーとなることを想定した軽自動車規格の商用電気自動車(EV)である。 DNプロカーゴは、電気自動車ならではの低重心やフラットな低床構造によって、拡張性と使い勝手のよさが追求されている。また後部に電動リフトが設置されているので、車いすでの乗り降りがしやすく、重い荷物の昇降もスムーズに行える。床が低いことで車内空間は広く、またフラットなために車いすでも車内での移動、作業が快適に行えるのが特徴だ。 低床のため、車体下部から出てくるリフトですぐに昇降できる。リフトの操作は、車体に付いたボタンで簡単に行える。操作も非常にわかりやすい。 横開きのバックドアは女性やお年寄りでも強い力を入れずに開閉できる。 DNプロカーゴは100%EV(電気自動車)。ダイハツでは「狭い地域を移動するには、自宅や会社などで手軽に充電できるEVのほうが適しており、さらにクルマが電源となることで、さまざまな電子機器を車内で使用することができる」と説明する。実際に軽自動車のサイズを生かして、住宅地の細い路地や農村のあぜ道でも気軽に移動できるだろう。 運転席と助手席の間の床下に電気モーターを置き、バッテリーも床下に平らに敷くことで低床化を実現している。車内の広さに加えて走りの快適さも大幅にアップしているという。 フラットなフロアはウォークスルーも可能で、1600mmの室内高は目的地に着くと部屋やお店として使うことができる。目的に合わせて車内のレイアウトを手軽に交換できる「マルチユニットシステム」が採用され、幅広く「プロ」の要求に応えていくという。DNプロカーゴのコンセプトは「走るお店・オフィス」だ。 車いす2台を搭載して、快適に移動することができる。... ...
On 2017年11月6日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 独創的な造形のコンセプトカーが数多く展示されるモーターショーだが、なかでもでひときわ異彩を放っていたのがトヨタが発表した次世代バスのコンセプトモデル「SORA(そら)」だ。 近未来的なデザインのSORAは、水素を燃料として電気で走行する燃料電池バスで、車いす利用の快適性も大きく高められている先進性が特徴だ。おおよそのサイズは全長10.5m、幅2.5m、高さ3.3m。定員は座席22名、立席56名、運転手1名の計79名となる。 排出されるのが「水」だけという優れた環境性能を誇る。また、コンセプトモデルではあるが、2018年の春先に発売される予定ということで、事実上の完成形ともいえる。 ボディ内外の各部から伝わってくる質感の高さと先進性に、マスメディアだけでなく一般の来場者も興奮の面持ちで車内に乗り込んでは、座席に腰掛けたり熱心に写真を撮影していた。車両中央部は、進行方向左側の一列のみを座席として、車いすやベビーカーでの快適な乗車に対応している。 車いす2台を簡単に固定できる装置が備えられている。手すりや停車ボタンもそれぞれの利用者が使いやすいように配置されている。 大気中から取り込んだ「酸素」とタンクから供給される「水素」を「FCスタック」という発電装置に送り、化学反応によって「電気」と「水」を取り出すのが、燃料電池「トヨタフューエルセルシステム(TFCS)」だ。発生した電気を動力源としてSORAは走行する。水素の充填にかかる時間はガソリンや軽油の給油とほとんど変わらず、EV(電気自動車)の充電と比べてはるかに短い。 SORAは「受け継がれていく街のアイコン」という開発コンセプトによって作られ、「社会の奉仕車」と「人を中心に据えたユニバーサルデザインと機能」という2つのテーマを追求している。開発主査を務めるトヨタ自動車先進技術開発カンパニー BR次世代車両企画室の権藤憲治氏は、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都を中心に100台以上のSORAを導入する予定です」と語る。 まず、SORAは「社会に奉仕」する車両として、燃料電池車として走行時にCO2や環境負荷物質を排出しないという優れた環境性能を実現していること、大容量の外部給電システムを搭載し、災害時に電源としての利用が可能となっている。 そして「ユニバーサルデザインと機能」という観点では、以下に挙げるとおり利便性と安全・安心にこだわり、すべての利用者が「乗ってよかった。また乗りたい」と思えるバスを目指している。 車両の内外に配置された8個の高精細カメラが、周囲の歩行者や自転車などの動体を検知して運転手へ音と画像で知らせる周辺監視機能を搭載し、安全性が向上する。 モーター走行のため変速ショックがなく、急加速を抑制して緩やかな発進を可能にする加速制御機能を採用、車内で立っている乗客の安全性にも配慮している。... ...
On 2017年11月4日 / By wpmaster文と写真●Believe France さまざまな催しが行われるフランスのパリでは、福祉関係のイベントもよく行われている。今回は5月16日から18日まで開催された「パリ・ヘルスケアウィーク(PARIS HEALTHCARE WEEK)」を訪れた。 パリ・ヘルスケアウィークは、多くの分野に広がるヘルスワークに携わる人たちがお互いにコミュニケーションをとって、健康に関する技術を全体的に高めてゆくことを目的としたプロのためのプロによる総合展示会。昨年の初開催に続き、今年で2回目となるまだ新しいイベントだが、複数の大きなエキスポをひとつのイベントにまとめることで、世界中から800以上の企業や団体が出展して大いに賑わった。 会場となったのは、世界5大モーターショーのひとつ「パリモーターショー(モンディアル・ド・ロトモビル)」も開催されるポルト・ド・ヴェルサイユ・エキシビジョンセンター。IT技術を健康管理に利用する分野を取り扱う「HiT(Health-ITExpo)サロン」、フランス病院連合が主催する病院建築や経営に関する技術を紹介する「ホピタルエキスポ/高齢者ハンディキャップエキスポ(HopitalExpo/GerontHandicapExpo)」、医療機器メーカーが出展する「インターメディテック(Intermeditech)」、看護学校による「アンフィルミエサロン(Salon Infirmier)」といった複数のイベントをまとめて開催することで、幅広い分野を超えて健康に関する展示全般を一度に見てまわることができる。プロ向けの内容のため、来場者の多くはビジネスマンや病院関係者となるが、来場者相手だけでなく出展者同士でも活発に情報交換が行われていた。また看護学校主催のブースを訪れる未来の看護師や医師が、最新の医療に触れることのできる貴重な機会ともなっていた。 展示内容としては、とくに近年各国で話題となっている「e-Health(e-Santé)」関連の出展が多く見られた。個人の医療情報を電子データ化する機器の紹介や、データの画像化に関する技術、ネットワークを介してそれらを管理するe-Santéの導入やセキュリティ、ビッグデータの扱いなどに熱い注目が集まっていた。プロを対象としたデモンストレーションや体験イベントがあるのもこの展示会の特色と言えるだろう。 フランス国立統計経済研究所(INSEE)によれば、フランスの全人口に占める60歳以上の高齢者の割合が、20歳以下を上まわったのは2012年。以降、日本と同様に約4人に1人が高齢者となる割合が続いており、高齢化社会を問題視する世論は高まってきている。ただし、日本と異なるのは 総人口の上昇が続いているということ。日本では2010年以降、毎年20万人以上の人口減少が続いているのに対し、フランスでは逆に毎年20万人以上の人口増加がいまだに続いている。20歳以下の割合も、ここ10数年24%近辺を維持し続けている。子供を持つ家族への保障などを手厚くしているフランスは、少子化対策という意味では日本よりも進んでいると言える。 会場の十数カ所に設置された大小さまざまな講演ブースでは、企業や団体などが自社商品やサービスをアピール。3日間で250ほどの講演が行われ、講演者の数も700名に達した。 プロフェッショナル向けということであまり馴染みのないブースも多かったが、軍隊が参加してのデモンストレーションは、軍事医療現場を再現したもので、実際の状況がわかりやすく伝わる工夫がなされていて興味深い。戦場で負傷した兵士に応急処置を施す衛生兵たちだけでなく、現実と同じようにライフルを構えてまわりを警戒する兵士も配置。危険な状況下でいかに手早く処置し移動するか、そこに役立つ道具の使い勝手などを実演して見せた。メーカーやサプライヤーだけでなく、 看護師や軍医を目指す人たちにもインスピレーションを与えていたに違いない。 ... ...
On 2017年5月27日 / By wpmaster文 ●Believe Japan 写真●川崎泰輝、日本財団パラリンピックサポートセンター 3月12日、快晴のもと「パラ駅伝 in TOKYO 2017」が1万1200名の来場者を記録し、盛大に開催された。 競技は、世界にも類を見ない、健常者と障害者が同じチームのメンバーとして、一本のタスキをつないでいく駅伝スタイルで行われた。それぞれが自身の持てる力を精一杯に発揮して、共に高みを目指していくランナーたちの姿は、スタンドだけでなく、コース沿道に詰めかけた多くの人をも勇気づけ、競技全体が熱烈な応援に包まれた。 パラ駅伝は、さまざまな障がいのあるランナーと健常者のランナー9人(伴走者含む)がひとつのチームをつくり、ゴールを目指して1本のタスキをつないでいく駅伝競技で、駒沢オリンピック公園(東京)の1周約2.5kmのコースを8区間で8周、合計約20.5kmを走るもの。今回は、東日本エリアから14都県17チーム、10代から60代までのパラリンピアンから市民ランナーといった、幅広い選手153名が参加した。 日本体育大学ブラスバンド&チアリーダー&応援団によるパフォーマンスの後、アテネパラリンピックのNHKテーマソングを作曲した盲目のアーティスト木下航志(きしたこうし)さんと、わたなべちひろさんのオープニングライブが行われた。早くも盛り上がる会場に選手団が入場すると、スタンドからは大きな歓声と拍手が送られる。 大会を主催した日本財団パラリンピックサポートセンター会長の山脇康氏は、サポートセンターが掲げるスローガン「i enjoy ! ~ 楽しむ人は強い!」を紹介し、スポーツを通じて、一人一人がいきいきと輝け、活躍できる社会の実現につなげていきたい、との抱負を述べ、開会を宣言した。 来賓の小池百合子東京都知事は、「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功はない」と語り、目下、懸命に準備を進めていることを明らかにし、また大会をきっかけに都内のあらゆる場所で「段差」を無くして「だれにとっても優しいまちづくり」を進めていく考えも示した。さらにパラリンピックのサポーター登録が、現在すでに48万人に上っていることを明らかにした小池都知事は、「みなさんの力が東京大会を成功させる」として、さらなるサポートを要請した。 続いて、松野博一文部科学大臣、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣による挨拶が行われ、木下航志さんが国歌を斉唱した。スーパーパフォーマンスグループ「AAA(トリプルエー)」と人気タレント15名により特別編成された「チームよしもと」、そして全国のご当地キャラクター16体も応援に駆けつけ、会場の熱気がさらに高まる中、小池都知事がスターターを務めて、いよいよ競技がスタートした。... ...
On 2017年3月22日 / By wpmaster超高齢化社会へ向かう日本では、今後ますます介護を必要とする人が増え、逆にケアやサービスを行う人が不足することが懸念されている。一説には、2025年、およそ250万人が介護を必要とし、40万人近くの福祉の人材が不足するといわれている。 その危機的な状況を少しでも打破しようとするイベント「Awesome Future Festival ~ゲームと映画で体感する驚くべき未来とフクシとワタシ~」が、2017年3月12日(日)に京都で開催される。「介護はまだ先の話」や「大変そうな仕事」と思われがちな福祉の仕事を、体感型のシミュレーションゲームと全国公開を控える話題の映画を通して、さらに深く理解してもらおうというのが趣旨だ。福祉サービスの現場や仕事がよくわからない、少し興味がある、という人はぜひ参加してみてほしい。 【THE Six SENSE ~医療福祉系シミュレーションゲーム~ 】 すでにいくつかのイベントで大きな反響を得ている、医療福祉系シミュレーションゲーム。プレーヤー自身が働くゲーム会社で、タイムトラベル式のシミュレーションゲームが開発され、それをテストプレイするという設定となっている。「五感を最大限活用して内容の吟味・安全性の確認をしてきてもらいたい」 という上司の言葉からスタートするゲーム。そこには、想像もしなかった未来体験がある!? ルールはいたってシンプル。すごろくのようにルーレットで出た目に合わせてマスを進んでいくだけで、最先端のVR(ヴァーチャルリアリティ)も体験できる。車いすでの参加も可能で、福祉の知識がなくても大丈夫、年齢制限もないということで、広く楽しめるゲームとなっている。 【映画『つむぐもの』上映会&犬童一利監督トークショー 】 突然倒れて、半身が不自由になっても人の手は借りたくないという頑固職人と、韓国からやってきた若い女性との心のふれあいを描いた作品。 ◼︎... ...
On 2017年3月1日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 43回目を迎えた国際福祉機器展を訪れた。毎回大きな盛り上がりを見せる国内最大級の福祉イベントは、今回はとくにモビリティ分野に大きな注目が集まっていた。とりわけ福祉車両への期待と関心は高く、各自動車メーカーのブースには、連日多くの来場者が集まり、熱心に展示車両の機能、使い勝手などを確認していた。ここでは各メーカーのブースをリポートする。 日本は福祉車両先進国といわれるが、近年はリリースされる多くのニューモデルで、発売時から多様な福祉車両が設定されるなど、さらなる充実ぶりを見せている。 標準モデルが、開発段階の初期から福祉仕様を想定しているなど、ハイレベルな使い勝手やスペース効率を誇るモデルが増えている。また、低燃費をはじめとするエコ性能や自動ブレーキに代表されるセーフティ機能といった進化は、福祉車両にも大きな恩恵をもたらしている。「特別なクルマ」ということを過度に意識をさせない、「普通に乗れて、福祉機能があるクルマ」というイメージを抱かせるモデルも増えているように感じた。 トヨタ: トヨタブースでは、車いすでの乗り込みがスムーズなシエンタや座り込みが容易なスペイドが、使い勝手のよさをアピールし、プリウスは車いす収納機能がついたフレンドマチック(運転アシスト)仕様を展示。さらに車いすの大型化や多人数乗車にも対応するハイエースやレジアスエースの車いす仕様車、純正のフレンドリー用品、オリジナル車いす「ウェルチェア」など、充実の展示内容が印象的だった。 ドライバー自身がひとりで車内へ乗り込み、車いすを電動でルーフ上に収納することができる「ウェルキャリー」は大きな注目を集めていた。 後輪エアサスペンションの車高降下機能が、9.5度というなだらかなスロープ角度を実現。サイズを超えた機能性が、実際に来場者から好評を博した。 ホンダ: 発売されたばかりの新型「FREED(フリード)」、「FREED+(フリード プラス)」が主役。車いす仕様とサイドリフトアップシート仕様などを展示して大きな注目を集めていた。また、自ら運転する喜びをについてもこだわるホンダらしく、「Honda・テックマチックシステム (手動運転補助装置)」と「Honda・フランツシステム(足動運転補助装置)」が装着されたフィット ハイブリッドで、作動をたしかめる来場者の姿が多く見られ、軽自動車の福祉車両として人気の高いN-BOX +も注目を集めていた。 「Honda歩行アシスト」の体験展示も行われた。ヒューマノイドロボットASIMOで培われた歩行理論を活用したこの歩行訓練機器は、注目度抜群で、多くの人が体験歩行を行い、驚きと喜びの表情を顔に浮かべていた。 Honda関連会社の八千代工業株式会社に所属し、リオデジャネイロ・パラリンピックに出場。同大会の車いすマラソンで、「1秒差で4位」という激しいレースを戦った土田和歌子選手とモータージャーナリストのまるも亜希子さんによるトークショーも行われた。 日産:... ...
On 2016年12月8日 / By wpmaster文と写真●Believe Japan 成長するイベントのテーマは高齢者の自立 ドイツ西部の文化、経済の一大中心地であるデュッセルドルフ。さまざまなアンケートなどで「住みやすい都市」と評価されるこの街は、訪れてみると実際に落ち着いた佇まいと静寂さが心地よい。日本企業の多くが進出していることでも知られるが、近年は、欧州最大、世界有数という福祉機器展「REHACARE(リハケア)」でも知られている。 毎年開催されるREHACAREだが、障害のある方や介護する方のニーズに対応したリハビリテーションや機器、製品についての充実したプレゼンテーションに加えて、2016年は、「高齢者の自立」をサポートすることが、大きなテーマとなっていた。ヨーロッパでも一部の地域を除いて、高齢化は今日大きな社会問題となっている。そのため福祉に対する意識も年々高まりを見せているという。 身体が不自由な方や介護が必要な方、さらには自分の思うままに人生を送りたいと願う高齢者にとって、「有益となる情報や補助が得られる場」の提供を目指したという今回のREHACAREだが、36カ国から916社が出展し、4日間の日程で来場者数が4万9300人に達するなど、過去39年の歴史のなかでも最高の盛り上がりを見せた。 広い会場では、日常生活に役立つ便利なアドバイスから、最先端のモビリティアイテムや在宅ケアシステムのデモンストレーションまで、多彩なプレゼンテーションが行われ、来場者の多くは足を止めて熱心に聞き入っていた。パンフレットに真剣に目を通す方、実際に機器を試している方など、イベント全体に熱気が漂っていた。そして来場者だけでなく、出展した企業や団体もREHACAREに大きな手ごたえを感じているようだ。出展者に行ったアンケートの結果、90%を超える出店者がイベントに「満足」を示し、83%は実際に商談が良好に行われたと解答、88%はイベント後のフォローアップに期待が持てるとしている。数字からも、年々規模を拡大するメジャーイベントの勢いが感じられる。 日本の福祉機器展と比べ、車いすでの来場者の割合が高いようだが、広い会場は通路にもゆとりがあり、整然と快適に見てまわれる。また、来場者同士、メーカースタッフなどとのコミュニケーションも積極的に交わされている印象だ。 メーカーのブースだけでなく、スポーツのデモンストレーションも行われていた。ドイツでは障害者スポーツの人気は高く、車いすバスケの会場では大きな歓声が上がっていた。 「華麗なるギャッツビー」仕様にカスタマイズされた電動車いす。 福祉車両、日本とヨーロッパの違い 総合的な福祉機器展であるREHACAREだが、なかでも「モビリティ(移動)」に関する出展は多く、会場でも大きな存在感を放っていた。ところで、各ブースをくまなく歩いてみて、福祉車両について、日本とヨーロッパで大きな違いがあることに気づかされた。 それは、日本の福祉車両は、自動車メーカーの多くが「完成車」として、充実したラインアップの福祉車両の販売を行っているのに対して、ヨーロッパでは、アフターパーツが数多く販売され、今乗るクルマを「福祉車両にカスタムする」というのが一般的であるということ。展示会場を歩いても、福祉車両用の機器を扱うメーカーが数多く出展している。自動車メーカー自身が、広々としたスペースに自前の福祉車両(完成車)を数多く並べて展示する日本とは少し異なるスタイルと言えるだろう。 自動車メーカーが開発段階から「福祉車両を念頭に設計」することで、よりハイレベルな機能や使い勝手が期待できるのが日本式のいいところ。ヨーロッパは、自分の乗っているクルマ、好きなクルマに、福祉機能を持つパーツを随時取り付ける、というスタイルが特徴となっているようだ。気になるアタッチメントが自分の車に対応しているかを問い合わせる人の姿も多く目にした。 東京の「国際福祉機器展」や大阪の「バリアフリー展」を訪れて感じるのは、福祉車両、福祉機器が洗練されていてクオリティが高いこと。一方、デュッセルドルフの「REHACARE」会場では、多くの独創的な製品に目が止まった。最後に、その中から気になったブースやアイテムを紹介する。 700カ所以上の販売店を持つカーアダプテーションの大手、ドイツのアウトアダプト(Autoadapt)のブース。メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンなどの国内メーカー、欧州ブランドのモデルに対してのさまざまなニーズに対応するカスタマイズサービスを提案していた。 車両後方のスロープが主流の日本と異なり、ヨーロッパの福祉車両は、車両の真横から乗り込む「サイドスロープ」タイプが多い。写真はメルセデス・ベンツブースに展示されていたVクラスの福祉車両。 前方に伸びるタラップにより、車いすに座ったまま乗り込むことができるチェコのマイクロカー「エルビー(Elbee)」。運転操作は手だけで簡単に行え、最高速度は時速80㎞。都市部でのモビリティを想定している。 セグウェイの技術により、操作性と機動性に優れ、オフロード走行も可能な2輪タイプの電動車いすが、スイスの「ジェニー(Genny)」。 カーボン複合材のバネ装置「ループホイール(Loopwheels)」は、従来のスポークの代わりになるだけでなく、サスペンションのように緩衝機能を持ち、滑らかな乗り心地と高い快適性、そしてファッション性で注目を集めていた。... ...
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